恋愛小説 なぎさ 第1話

ねえ、もういいんじゃない?
そう呟く君は、深い海の底へと消えていった。
海の底は静かで、暗くて、何も見えない。
でも、何か光ってる。
なんだ?あれ。
キャップか?
••ちがう、あれは、

•••いたたた。
ベッドの角に頭をぶつけた。
目が覚めた。もう7時をまわってる。遅刻だ。
今日も課長に嫌味を言われるな、確定だ。
あーあ。

オレの名は凪。
小さい頃は名前のとおり可愛かったので大人にも気に入られたが、大きくなった今では誰にも相手にされない。
社会性は乏しく、いつもゲームとスマホばかりいじっていて、下を向いて歩いてることが多いのでよく人にぶつかる。
行きたくもない会社にもう3年勤めているが、営業成績も上がらず、いつも課長に叱られてばかり。

隣の部署の洋子と付き合いだしたのは1年前だが、最近はあまりうまくいっていない。
その原因が彼女の浮気なのか、オレの気の多さからなのか、よくわからない。
頼りないオレに愛想を尽かしたのも、まあ納得なんだけど。

もう、なんか何もかもどうでもいいよなあ。
こんなオレ、生きてる意味あるのかな••?

毎日同じ時間に起きて、仕事に行って、帰りの電車に揺られ、帰ってきて、ちょっと飲んで気分良くなって、寝て、また起きる。
同じルーティンの繰り返し。
平凡な日々の繰り返し。

そんな毎日だ。

•••なんか、おもしろいことないかなー。
世界がびっくりするようなこと。

あるわけないか。

昨日までは、そう思っていた。
そう、彼女に出会うまでは。

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