見出し画像

Jアラートの日

 人は誰かに生かされているんじゃない。自分の意思で生きようとするからこそ、生きていくんだ。
 だから彼女は死んだのか。意思を失したから、生を拒絶し、生から拒絶されてしまったのか。
 ならば俺がいま諦めようとしているこの人生は、一体いつどのタイミングで生から拒絶されるというのだろうか。
 今朝けたたましく鳴り響いたアラート。あの音を聴いた時に、一瞬だけその「終わり」が来たのだと感じた。自ら生を絶つのではなく、こういう外的要因にて、俺の生は尽きるのかと。
 正直な話、死にたくないと思った。しかしそれと同時に、死ねばもしや逢えるのかと万分の一ほどの微かな希望が脳裡を過ぎった。
 アラートの鳴る中で、生徒の様子を見ながら、死への恐怖と逢瀬への渇望の渦中でひとり胸をときめかせていた。
 現実はそのようなドラマを与えてくれるわけもなく、ミサイルは高く頭上を越え、遠い海へと落ちていった。そろそろ今日が終わる。俺はまだ、生きている。
十月四日(火)22:45

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?