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2023年詩

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#田畑

146「詩」秋祭り

146「詩」秋祭り

笛の音があたりの空気を引き裂き
この世からあの世へと
橋をかけて
秋の祭りは始まるのです

この世の人たちが
実った稲穂を
その土地に住む神さまに捧げ

あの世では
この世から移り住んだ人たちが
稲を育んだ人々をねぎらっています

太鼓の音が
あの世の人たちがちゃんと
生きているのを伝え

「ほら
みんなの鼓動が聞こえるでしょう」
あの世の人たちがこの世の人たちに
ささやく声であふれます

田畑が

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112「詩」くびき野・夏

112「詩」くびき野・夏

山端に
人々の生活はきちんとした規則を保ちながら
小さな息づかいを滲ませる

さらに高くさらに高く
伸びられるのを疑うこともなく
稲たちが日の光だけを見つめている

うっすらと空に溶け合う妙高山の手前
家々さえ飲み込むように
田畑が勢いを増す

くびき野の夏
熱い日差しを全て
身に蓄え 栄養に変え

やがて黄金色に変わる日を
ゆっくりと
待ち始める

84「詩」これから

84「詩」これから

山肌に馬が見えたら種まきの季節
昔からの言い伝えだ
数日したら田おこしが始まる
赤茶けた田畑の下でじっと冬を耐えた
思いたちが目覚め始める

家路につく夕暮れ
ふと自転車を停める
私の影が
固い土を割って生えた雑草の上に
ふんわりと落ちる

やがて
ふさふさとした稲が
ひしめき合って日の光に
手を伸ばし始める
一枚一枚の葉先に光を集めて
稲たちは良いモノだけを身体に貯め
やがて黄金色の光に変えるだ

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29「詩」くびきの冬

29「詩」くびきの冬

遠く妙高山のふもとまで田畑は続いていた

誰も足を踏み入れる事のできない純白が
世界の片隅まで覆いつくし
沈黙している

すべて生き物の気配はどこにもなかった

凍てつく寒さが辺りの空気を研ぎ澄ます
研ぎ澄まされた空気が
誰も汚すことを許されない雪原を
さらに
白く
世界の色を奪っている

いろんな色が集まって白い光になるのだ
白い光は無数の色を含み色を消していく

田畑は白い光の下で 重みにじっ

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