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第24橋 神戸スカイブリッジ&神戸大橋(兵庫県) |吉田友和「橋に恋して♡ニッポンめぐり旅」

「橋」を渡れば世界が変わる。渡った先にどんな風景が待っているのか、なぜここに橋があるのか。「橋」ほど想像力をかきたてるものはない。——世界90か国以上を旅した旅行作家・吉田友和氏による「橋」をめぐる旅エッセイ。渡りたくてウズウズするお気に入りの橋をめざせ!!


ポートアイランドと空港を結ぶ
空へと続く橋

 神戸ポートアイランドで推しのライブがあって遠征してきたのだが、ついでに前々から気になっていた橋を渡ってきた。ついで、とは言いつつも、こちらも旅の主目的だったりはするわけだが。

 神戸ポートアイランドは神戸港に作られた人口島である、などという説明は不要だろうか。三宮駅から出ているポートライナーでアクセスするのだが、高所を走るから景色が良くて旅気分を味わえるので実は結構お気に入りだ。東京でいえば、ゆりかもめに乗ってお台場へ行く感覚に近い。

 島の南端には神戸空港があって、関西へ来たときはしばしばここから飛行機で東京へ帰ったりしている。実は今回もまさに神戸空港から飛ぶ予定で、しかもお目当てである橋もまたこの空港に隣接している。なんというか、色々と好都合なのだ。

 位置関係を説明すると、神戸空港はポートアイランドの沖合いにある別の島に作られている。陸地では繋がっていないのだが、海の上に長い橋が架かっていて、その橋を通って車やポートライナーで空港へ辿り着ける。要するに、ポートアイランドと空港とを結ぶその橋こそが今回のお目当てというわけだ。

 橋の名前は「神戸スカイブリッジ」という。ある意味、空へと続く橋であるから、これ以上ない絶妙なネーミングといえるだろう。

 橋の上には歩道も設置され、徒歩で渡ることもできる。関西国際空港や中部国際空港など、似たような海上に作られた空港は色々あって、同じように海の上に橋が架けられているが、大抵は歩道なんて用意されていない。この手の橋で、歩いて渡れるのは貴重なのだ。

 ポートライナーの終点は「神戸空港駅」だが、その一つ手前の「計算科学センター駅」で下車した。歩いて橋を渡るためだ。

 こんな辺鄙な場所で下りる人なんていないだろうなぁ、などと勝手に想像していたが、意外と下車している客が多くて驚いた。来るまで知らなかったのだが、駅前に「神戸どうぶつ王国」があって、みんなそこへ遊びに来ているようだった。

 どうぶつ王国の前を通りすぎると、途端に人気がなくなった。ポートライナーの高架下を進んでいくと、工場や倉庫のような建物が並ぶ湾岸の埋め立て地らしい風景に変わった。テクテクと一人で歩を進めると、10分ぐらいで橋の入口に辿り着いたのだった。

橋へは高架を辿っていくだけなので、道はわかりやすい
橋へは高架を辿っていくだけなので、道はわかりやすい
橋へは高架を辿っていくだけなので、道はわかりやすい


 まず、道幅が広いなぁ、と思った。観光地化されているような橋と違って、さすがは空港へアクセスするための重要な通り道なのである。橋の幅は16.7メートル。歩道は橋の東側、片方にしかないが、歩道自体も幅が広くてとても歩きやすい。

 海側の柵は、顔よりも低い位置までしかない。そのせいで、景色がよく見えるのが何よりも素晴らしいと感じた。海の上を通っているのだなぁという手応えが得られるのだ。

この日は風がほとんどなくて、歩きやすかった。絶好の橋日和だ
この日は風がほとんどなくて、歩きやすかった。絶好の橋日和だ
この日は風がほとんどなくて、歩きやすかった。絶好の橋日和だ


 五月中旬という、暑くもなく、寒くもないちょうどいい季節に訪れることができた。空は青く晴れ渡り、遠く海の彼方にはビル群も望める。あの辺は大阪だろうか。

 土曜のお昼過ぎである。歩道とはいえ、自分のほかには歩いて渡っている人はいない。ただし、ロードバイクに乗った人や、ランニングしている人とはすれ違った。走ったら気持ちのいいコースなのだろう。橋の全長は1187.6メートル。1キロ以上もあるから、それなりに歩き甲斐はある。

 ゆっくりと写真を撮りながら進んで、橋を渡りきったらそこはもう空港だった。人気のないこんなところで写真を撮りまくっていたら、国によってはあらぬ疑いをかけられて拘束されるかもなぁ、なんてことを考えた。日本は平和だ。

 橋の歩道とは反対側の端は、ポートライナーの通行路となっている。仮に歩道が両サイドにあるのなら、帰りも歩きにしたところだが、片側だけだと同じ道を引き返すことになり景色は変わり映えしない。空港まで着いたら、ポートライナーに乗って引き返したのだった。

空港に到着。渡った先に何かがあると、達成感があっていい
空港に到着。渡った先に何かがあると、達成感があっていい
空港に到着。渡った先に何かがあると、達成感があっていい
空港のターミナルビルから、駐車場の向こう側に橋の雄姿が見える
空港のターミナルビルから、駐車場の向こう側に橋の雄姿が見える


 橋旅はこれで終わりではない。ポートライナーで三宮へと帰りつつ、今度は「中公園駅」で途中下車した。ポートアイランドの北端に位置する駅である。実は、もう一つ渡ってみたい橋があったのだ。

 ポートアイランドと本州とをつなぐ「神戸大橋」である。こちらもまた歩道が設けられており、徒歩で海を渡ることができる。

 とはいえ、やはり歩いて渡るような人は少数派なのだろう。中公園駅から橋の入口まで歩いて行くルートは少し複雑で、途中に歩いて横断できない道があったりして迷ってしまった。

 まずは「ポートアイランド北公園」を目指せばよい。海沿いのこの公園から階段で橋の上にアクセスできるようになっている。

 公園内は綺麗に整備されており、散歩していて気持ちがいい。対岸には神戸の町並みが望める。背後の山並みと、港町らしい風景が旅情をかき立ててくれるのだが、そんな中で真っ赤な橋がひときわ強い存在感を放っている。

赤い橋ってなんだかいいな。(写真には写っていないが)公園内には洋館などもあって異国感が漂う
赤い橋ってなんだかいいな。
(写真には写っていないが)公園内には洋館などもあって異国感が漂う


 世界のどこかで見たことのあるような風景だった。もう少し高いビルがあれば香港のようだし、運河に架けられたアーチ状の橋として見るとポルトの旧市街を思い出す。

 元々、神戸という町自体、異国情緒のあるところだったりする。周囲の景観も相まって、神戸大橋を渡っていて、まるで外国を旅しているかのような気分になった。

 全長322メートルと、神戸スカイブリッジと比べると距離こそ短いが、渡っているときの満足度では決して引けを取らない。夢心地でこの日二つ目の橋を渡った。

神戸大橋を渡った先には神戸ポートターミナルがあった。以前にクルーズ船で寄港したときに、ここで乗り降りしたのを思い出した
神戸大橋を渡った先には神戸ポートターミナルがあった。以前にクルーズ船で寄港したときに、ここで乗り降りしたのを思い出した
神戸大橋を渡った先には神戸ポートターミナルがあった。
以前にクルーズ船で寄港したときに、ここで乗り降りしたのを思い出した







吉田友和
1976年千葉県生まれ。2005年、初の海外旅行であり新婚旅行も兼ねた世界一周旅行を描いた『世界一周デート』(幻冬舎)でデビュー。その後、超短期旅行の魅了をつづった「週末海外!」シリーズ(情報センター出版局)や「半日旅」シリーズ(ワニブックス)が大きな反響を呼ぶ。2020年には「わたしの旅ブックス」シリーズで『しりとりっぷ!』を刊行、さらに同年、初の小説『修学旅行は世界一周!』(ハルキ文庫)を上梓した。近著に『大人の東京自然探検』(MdN)『ご近所半日旅』(ワニブックス)などがある。

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