幸せと戦争と赤い花
2014年8月下旬。カナダのモントリオールにある短大に入学した。
高校を卒業したばかりの10代の若者に混じって、強制的に受けさせられた
週3時間の科目があった。
大学進学を目指す10代の学生達。何もかもが不安で一杯だったに違いない。その授業はオリエンテーションのようなもので、大学卒業後、希望する職業につく為に何を勉強しなければならないか?その分野は仕事が見つけやすいか?をネットで調べたり、履歴書の書き方、面接での受け答えの練習をやった。社会経験をするという目的で、学校内外での20時間ボランティア活動も時間外に行わなければならなかった。
授業と同じくらいの時間がかかる宿題に加え、20時間のボランティア活動。しかも単位はもらえない。40代の私には無駄な時間だと思っていた。
***
最後の授業の日、先生は贈る言葉のようにいろんなことを話してくれた。
カナダでの履歴書では入学した時の年月日を書けばいい。高校中退してても、休学してても関係ない。履歴書で重要なのは最終学歴だけ。
それが社会の現実であると...
「でも、年収5万ドルに到達したら、その先収入が2倍に増えようと幸せが2倍になるわけではないと感じる人が多い。お金で解決できないことがあるんです」
そして、
「どうして人は戦争をすると思いますか?なぜ第一次世界大戦や第二次世界大戦が起こったと思いますか?それは経済のためです」
と付け加えた。
ほぉ~とリアクションしたのは私だけだった。10代のクラスメイトにはまだピンと来ない内容だったのだろう。
幸せと収入5万ドルの関係性と世界大戦と経済
異論がある人もいるだろうけれど、私にとってはそれまでに聞いていたどの見解よりも腑に落ちた。
『人生の中で受けてよかった授業は?』と質問されたら、この日の光景がふと頭に思い浮かぶかもしれない。先生の左肩から二の腕にかけて彫られていた、真紅の花のタトゥーとともに。
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