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なぜ、モンテディオ山形は“平日のデーゲーム開催”を選んだのか?

2023年5月17日に行われる大分トリニータ戦は、エデュケーショナルデーと題し、クラブとしては初の試みとなる「平日デーゲーム」での開催となります。
コンセプトは学びとエンタメの融合。
賛否両論、様々なご意見を頂戴しますが、今回の開催にあたってはいくつかの課題認識と目的を持って実施しています。

Jリーグ観戦とこどもにおける課題に着目

18、19歳の観戦体験でBリーグがJリーグ上回る
若年層のJリーグ離れが進んでいます。先日、発表された笹川スポーツ財団の直接スポーツ観戦状況の項目において、18歳、19歳の年代ではJリーグよりもBリーグの方が人気が高いことが判明されました。

18、19歳ではJリーグが上位5傑から圏外となり、バスケットボール(高校、大学、Wリーグなど)が5.3%で2位、プロバスケットボール(Bリーグ)が2.7%で5位に入った。
https://www.ssf.or.jp/thinktank/survey_list/20220610.html

笹川スポーツ財団:「スポーツライフに関する調査2022版から抜粋」

事実ベースで言えば、若年層にとってJリーグは遠い存在となりつつあるということです。
「若い方との接点をつくる必要がある」
一つの着目ポイントはここにありました。

こどもの運動不足が大きな社会課題に
もう一つは深刻なこどもの運動不足です。スポーツ庁2022年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果によると、こどもの体力は過去最低、肥満割合の増加も加速しています。
コロナを機に、学校の休校、外出機会の減少などが原因だと言われています。
プロスポーツチームとしてこの課題解決に取り組むことは至上命題だと考えました。

引用:スポーツ庁資料

求められる多様性と他社理解
ダイバーシティやインクルーシブな考えが重要視される昨今、教育機関においてもこどもたちに対して教育をしていくことが求められます。とはいえ、こうしたテーマは非常にセンシティブであり、コミュニケーションのとり方も慎重にならなければいけません。教育現場においても、ダイバーシティ(ジェンダー)についてどのように指導をしていくべきなのかは明確な答えが出ていないという悩みを頻繁に聞きます。
スポーツには、「言いにくいことが言える、難しいことが簡単に聞こえる」魔法のような力があると思っています。その特徴を活かし、こどもにも大人にも響く、多様性と他社理解を学ぶ機会を提供したいと考えました。

コロナで希薄化されたコミュニケーションの奪還
言うまでもなく、コロナを機にコミュニケーションの機会が減少しています。とある調査によると、コミュニケーションがなくなることで、逆にいじめは減少したり、誹謗中傷も減っているというデータもあるのですが、中長期的にみれば社会や人と交わらずに生きていくことが良いとは言えません。
コミュニケーションが発生すれば、時には人を傷つけたり、悲しませたりしてしまうこともあります。でも、そうした過程があるからこそ、自省を繰り返し、人とつながることの喜びや人への思いやりを感じるのだと思っています。
共有できる体験、共感、人との違いを知る。こうした機会が今のこどもたちに必要だと思います。

「やりたい」と思うこども増やす
スポーツでも勉強でも、自らやりたいと思って取り組めるかはとても重要なことです。知的好奇心や思考センスを育むのは大人の努力。
プロスポーツチームはエンタメの企業です。エンタメ企業が教育とかけ合わせた時にどのようなシナジーが生まれ、こどもたちのやりたいを導き出せるか?すごくチャレンジしてみたいことでした。

当日は全9つのコンテンツを実施

知的好奇心や思考センスを生み出す「シンクシンク」の実施
エデュケーショナルデー肝いりの企画は「リアルシンクシンク」の開催です。
世界中の子どもから「知的なわくわく」を引き出すための教材やコンテンツを開発・運営するワンダーファイ株式会社様協力のもと、こどもの興味や好奇心をひきだし、感性や思考力を育むことができるコンテンツを実施します。
空間認識や論理思考といった、考えるための土台となる力=「思考センス」を育むデジタルアプリ『シンクシンク』をリアル(ハード)に置き換えたコンテンツを会場でこどもたちは体験することができます。
こどもたちの「好き」や「やりたい」を引き出していきます。

トランスジェンダーグループが語る「他者理解の重要性」
多様性や他社理解を学ぶための機会として、元なでしこリーガーで現男性のトランスジェンダーグループをお招きし、特別講演をしていただきます。
3人とお話をした際に、「“LGBTに限らず、誰もが違った考えを持っている”という人生で大事なことを、こども達には心に刻んで欲しい。」というお話をされていて、この方々に是非お話をしていただきたいなと思いました。
これからの教育は、ジェンダーだけを理解するのではなく他者は違うということを理解することの方が重要だと考えています。同じだという先入観が生きづらさをつくってしまう。
本当に明るくてユーモアあふれる方々なので、きっと楽しく学べる、まさにテーマにふさわしい講演になるのではないかと期待しています。

運動不足解消と相互理解を育む「ユニバーサルスポーツ体験」
スタジアムの外では、こどもたちにスポーツ体験をしてもらいます。
ウォーキングサッカー、ブラインドサッカー、モルック、ボッチャ、ドッヂビー、ダーツといったユニバーサルスポーツの選択した理由は、運動能力の差が出にくく、運動が嫌いな子や苦手な子も楽しめる、ヒーローになれるチャンスがあるからです。
また、ユニバーサルスポーツは、スポーツを通して他者のことを理解することに長けたツールでもあります。モンテディオ山形ではこれまでも毎試合ホームゲームでユニバーサルスポーツを展開してきました。
普段の生活の中で、障がいをお持ちの方やお年寄りの気持ちを考えることは難しいものです。一緒に楽しむことで、違いや大変さがわかり、一方で違わないことにも気がつくものです。
楽しみながら学んでもらえたら嬉しいです。

サッカー観戦・応援を通じて新たな共感とつながりをつくる
イベント体験後はみんなで試合を観戦してもらいます。実は「応援」することは「幸福度」と密接な関係があるとも言われています。
そこまでを求めるつもりはないですが、誰かを応援し、横にいる人と笑ったり悲しんだりする。まずはそんな感情を持ってくれたら嬉しいと思っています。

5月17日の告知・集客は自治体様、学校様に強い協力をいただき、すでに3,000名以上のこどもたちの来場が見込めています。
きっと100%うまくいくことはないでしょう。でもやってみないと何も生まれないのも事実。
全力で向き合い、しっかりと反省して、地域やこどもの課題解決に寄与していきたいと思います。

もちろん、当日は一般来場もございます。平日休みの方はじめ、ご都合の良い方は是非スタジアムにお越しください。


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