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ある意味丸裸のコンサート、メットのAt Home ガラ。

今一時帰国中の日本にいるのですが、各歌劇場のストリーミングサービスがこの外出規制の期間に数多く出ているのですが、割とやることが多く、時差もあったり、観る機会を逃していた。

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が、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のインターネット生配信のアットホームガラコンサートが行われると言う事で、4月25日、(日本時間の26日夜中2時のスタート)観てみることにした。

と言うのも、歌手達は皆自宅からのライブ、世界各地からの中継、尚且つ、録音機材はどの程度調達しているかは判らないが、おそらくはピアニストもほぼ準備できないであろうこの状況に、最低限の機材のみの状況、どの様にメットの人気歌手達が対応するのか非常に興味津々であったから。

私も、テレワークレッスンだったり、個人的にアプリで多重録音したりと、いまだからこそできる事を色々チャレンジいている最中ではあったので、インターネットを使った、音楽のあり方が今後どの様に変化しいていくのか、ある意味大きな時代の変換期であるとも感じているので、ぜひリアルタイムで体感してみたかった。

勿論、プロのエンジニアなどが介入しているので、編集などもされており、予め、入念なリハーサル、ネット環境の確認などがされていた模様。(出演者のインスタグラムより)

楽しみにしていた割に、実は病み上がりでもあったので(これは後日書くかもしれません)深夜2時すぎに気づき急いでネットに繋ぐ。

そしたら丁度、アラーニャ夫妻の「愛の妙薬」の二重唱の最中。このお二人は生でも声は聴いた事はあるし、インスタの更新も頻繁なので、デジタルの彼らの音色にも慣れていた。彼らは固定されたパソコンカメラを利用していたが、その固定された画面にどう映えるか、とても計算された演奏だった。途中、回線が途切れて、数秒フリーズした時間もあったが、サービス精神旺盛な彼ららしい演奏だった。

ピアニストは用意しており、(紹介は聞き逃したが)そのピアニストもたまに巻き込みつつ、酔っ払いのネモリーノが、ギターで、オーソレミーオも歌い出すなど、魅せ方はさすがだと思った。

これは余談だが、前妻のゲオルギューと離婚するかしないかの時期に(この時点でもう関係は冷めきっていたと言われている)、彼らはこの「愛の妙薬」で共演し、そこから関係が深まったと言われている。現に、その時の映像がYoutubeでも観れるが、あまりに息のあったやり取りに、誰もが彼等の仲をたやすく想像できるほど。こちらがハラハラするほど、ラブラブなアディーナとネモリーノだったのである。

そうそう、奥様のアレッサンドラ・クルザクのリサイタルが2月にスカラで決まっており、チケットを買っていたが、丁度この日からスカラ座がコロナの影響でクローズしてしまい、リサイタルが聴けず残念でならなかった。

さて、全4時間のコンサートのまだ序盤、オーケストラの多重録音の映像と録音。服は黒色で統一はされていたが、割とラフで、各々のイヤホンを利用し、自宅で演奏している素朴な姿と、リモートながら息のあった演奏には心底感動した。

そう、このコンサート何が面白いって、演奏家の個性がこれでもかと際立っていたから。普段は勿論舞台用のドレスにメイク、完璧な形でのコンサートでのパフォーマンス。しかし、今回はカメラドアップだったり、そして歌手たち、演奏家達の私邸が垣間見える!これは本当に滅多にない機会!

これには本当に親近感を持ったし、同時に、超有名どころの歌手達の、ゴージャスな装飾品だったり、絵画やインテリア、色合いなんかは、歌手の個性そのもの。

ラフな人は本当にラフで、自宅も木目が多くて、自然を感じさせる様だったり、そのラフな流れで弾き歌いで連隊の娘のマリーのアリアを最後Fまで上げ、完璧に歌いニコニコとパフォーマンスしハッピーオーラ満載の彼女エリン・モーリーは高感度。

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(↑↑こちらは身一つで勝負)、伴奏を録音した音声をポチっと流して、カラオケの様に、上半身アップの座った形で、後ろには、あら、段ボールが見切れている。でも何だかそれが可愛らしく、でも、完璧に演奏するナディーヌ・シエッラ。骨格や母国語、おそらく下顎の脱力の為口の開きは大きいが、(最近それがより顕著な気もする)、私は彼女の完璧な息のコントロールと細やかな表現力は、正直イタリアの声とは違うが大好き。口の奥底、舌の色まで認識できそうな程のドアップは、発声の研究には売ってつけ。無理のない声だから、座ってリラックスして歌えますよね。

カジュアルなのは、割と若い世代の歌手に多く観られた。SNS慣れもしていて、インスタントに表現を、自分らしさを等身大に表現する、30代の歌手たちに対し、40代50代の歌手の、歌手の風格を失わせない、作り込んだタレント性(私はあまりこれは好きではない)。勿論世代で一概には言えないので、あえて歌手名はあまり出さないが、(と言うか、おもしろすぎて、一人一人書いていたら終わらない。。笑)その40代以降の、一時期重たい声が多かった時代の典型的な在り方かなあと感じていた。その中、弾き歌いや、ハープとのコラボだったり、色々個性があり、自宅のどこをバックにどんな服装で歌うかなどは本当にオリジナリティー溢れていた。

顔の角度まで作りこみ、ドレス風?の私服でDIVAの風格満点だったとある彼女もスカラ座で数回聴いたが、、途中一瞬集中力を発揮したものの、どこか気になるのか、何かを気にしながら歌っている様子。この丸裸感にどう対応したら良いのか手探りだった模様。いや、それほど、歌手にとっても過酷な企画だったと思う。

ベヒシュタインのグランドピアノが置いてあるのを観た時も興奮したし、が残念ながら、演奏はカラオケだったのでその音は聴けず。そしてバロックを歌う歌手のアンティーク風の自宅も彼の雰囲気にマッチしていたし、ダムラウ夫妻は、「ここが我が家のキッチンでーす」とキッチン前のアーチを舞台に見立てて、表情豊かに。

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(↑↑タイスの二重唱)は、ソプラノ、ニコール・カー。彼が伴奏と歌、彼女が寄り添い仲睦まじく共演していたのもとてもアットホームだったし(彼らは夫婦かな?おそらく30代)、うんやはり、オープンな歌手ほど、曲が生き生きしていたし、丸裸も厭わず、この状況の果敢に挑戦している潔い歌手達、愛情深い歌手ほど、グッとくるものがあり、やはり、音もソレを表していて、素直で素敵な響きだった。

リゼッタ・オロペーザも、インスタなどSNSの使い方が上手い歌手。去年のアレーナディヴェローナの椿姫の後、写真を撮ってもらったが、ご主人のサポートや、音楽機材の豊富な自宅からの、飾りすぎず、でも完璧に準備されたパフォーマンスもさすが。こういった気さくさは、より彼女の魅力を引き立てる。

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↑↑わたの大好きなメゾの、アニータ・ラシュヴェリシュヴィリは、ピアノ伴奏のシンプルながら、彼女の歌だけで勝負できる、落ち着いた演奏はいつみても溜息もの。

スカラ座研修生時代に、スカラ座開幕のカルメンの表題役を射止めた実力派。母国ジョージアでも、国民的有名人だそう。

彼女もSNSの使い方もうまく、30代のカジュアル実力派世代の代表的な歌手。ラシュヴェリシュヴィリの神懸かった存在感と呼吸のコントロールは、カヴァリエを彷彿とさせる。この包容力は、肩肘張らない彼女の人柄から来るものだと思う。私もインスタで何度かやり取りをさせてもらったほど気さく。

合唱の演奏も心打つものだった。自宅待機という最小限のコミュニティーでの生活が余儀なくされている今だが、だからこそ、合唱団の、例えば同性愛カップルだったり、ご夫婦で歌う姿にも感動。ハンチングをかぶっている合唱団の人もよく目立っておりその個性が微笑ましかった。

もう面白くて、流石に疲れはしたが、4時間があっという間、色んな見せ方がある中、どんな形であれ、偽らず、真っ向勝負する芸術家の尊さを感じた4時間だった。どんな形であれ、音楽は人の心に届き、決して廃る事はないのだと実感した日。気取った音楽はやりたくない、と言う自分の姿にも気づけたし、あぁだからこそ、私は真の自分からわき起こる音楽の為に、発声を磨き続けているだなと感じた。

しかし、自分一人では最近の悩みの一つ、録音技術に限度があり、誰か教えてくれないかな、と密かに思うばかり。

今後、世の中は嘘のつけない丸裸での勝負の時代になる。そしてそれが人々の共感をよび、コミュニティーを生む。そんな時代に向けて、私は、丸裸大作戦を自分にかそうと心新たにした。どんどん自分と向き合ってね。

おわり

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