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61. コーヒーは飲めないから、いつもカフェオレ。

ちょっと前に、近所をお散歩するのにハマった。逆にそれまでは、もう4年もこの街に住んでるのに用事がある場所以外を歩いたことがほとんどなかった。

家の中にずっといるよりも、外を歩いてみた方がなんとなく健康的になれる気がする。もともと家にいるのは好きで、今までは仕事で疲れた分を回復させるのに思いっきりダラダラ過ごすのが土日の定番だった。けど最近、家でただダラダラしてもなんだか元気になれない。逆に時間を浪費してる感が心と体にまとわりついて、もっとずーんとなる時もある。だから、用事がなくても外に出てみた方がいいのでは、とちょっと思い始めてる。


そんなわけでお散歩をしていたある日、周囲の生活感からちょこっと浮いた、おしゃれなコーヒー屋さんを見つけた。カフェもやってるみたい。中に入るとコンクリートの壁に沿って長い腰掛けがあって、ところどころにテーブルが置いてある。入り口の方は一面ガラス張りになってて、すぐ前の道がよく見える。

入り口の横に座ってカフェオレを飲みながら、入れ替わり立ち替わりやってくるお客さんや道を歩いている人たちを見てると、なんとなく私もこの町に溶け込めている感じがする。いつものコーヒー豆を買いに来る常連さん、子どもと一緒に自転車を漕ぐお父さん、スーパーの買い物帰りの夫婦。目の前でこの町の日常が流れていくのを、ただぼーっと見ている。
店員さんは30代くらいの、たぶん、夫婦。「こんにちは、まだまだ暑いですね」「今日はどうされますか」温かく、でもうるさくなく、一人ひとりに丁寧に声をかけてくれる。名前も知らないけど、わたしはなんだかこの町にとても大切にされてる気持ちになって、ほくほくしちゃう。


帰りは緑地公園のとなりを通る。夕日に木が照らされてオレンジや黄緑色になっているのを見上げて歩く。よく電車の通る踏切を渡る。練習を終えた野球少年たちとすれ違う。仕事帰りに私が通らない方の、あっちの道を歩いてる。


就職で上京して、家族も友達もいない町に住んでいると、なんだかずっと、ちょっとだけ寂しい。その寂しさが心地いい時もあるし、ああ、誰かにいて欲しいって時もある。
そのちょっとだけチクチクする寂しさを、ちょうどいい距離から埋めてくれる、そんな場所。

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