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自炊で自分の世界が広がった話

ふとハヤシライスが食べたくなって、材料を買った。たまねぎと牛肉の細切れ、なじみのあるハヤシライスのルー。材料をきちんとそろえ、箱に書かれている通りに作った。見た目は完璧なハヤシライス。いい感じにできたと思った。

しかし肝心な味の方はというと、なにか物足りなかった。おいしいことには違いないけど慣れ親しんだ大好きなあの味と何か違う。なんか深み?がない。何でだろうと思った。材料も、レシピも使っているルーだって一緒なはずなのに。

一晩考えてもわからなかったので母にLINEをしてみた。返信はこうだった。「ローリエとコンソメいれた?」と。知らなかった。だってレシピにのっていなかったし。入れたところでそんなに変わるものなのかなと思った。

後日改めてローリエとコンソメを入れて作ってみるとちゃんと大好きなあの味になった。びっくりした。たった二つの材料を加えるだけでこんなにも味が変わるなんて。母は「え~、常識だよ。」と言ったけれど私にとっては大発見だった。料理って面白いなと思った瞬間だった。

私は料理をほとんどすることがなく、ごくたまに母の手伝いをしても手際の悪さ故にいつも怒られた。だから料理って楽しくないなぁ、なんて思っていた。
そんな私にも料理をしなくてはならないタイミングが訪れる。大学進学の為の一人暮らし。いくら待っていても自動でご飯はでてきたりしないので、しかたなくIHコンロ一口の狭いキッチンでご飯を作った。

最初は切って焼くだけといった本当に簡単な料理から。慣れてくるとだんだん少ないレパートリーに飽き始めた。いろんなものが食べたいと思い、自分が食べたいものを次から次へと作るようになった。

ぶりの照り焼きにバターチキンカレー、親子丼、フレンチトースト、青椒肉絲。はりきってルパンに出てくるミートボールパスタなんかも作ってみた。
もちろん全部が上手にできたわけではない。レシピの通りに作ったはずの肉じゃががものすごく甘い味になってしまったこともあった。

成功と失敗を繰り返していくうちにいくつもの新しい発見があった。冒頭のハヤシライスの話もそうだし、他にも沢山。そして美味しく作れた時はすごく嬉しくて、失敗したらリベンジしたくなった。もっといろんな料理が作ってみたいと思うようになった。
一気に自分の世界が広がっていくのがわかって、楽しいと思えなかった料理をすごく楽しいと思っている自分がいた。

きっと自炊をしていなかったら料理がこんなにワクワクするものだなんて知ることもなかっただろう。最初は作るのがつらいときもあったけど料理を続けてみてよかったなと今では思っている。

きっと私はまだ料理という新しい世界の入り口に立ったぐらいなんだと思う。まだ知らない発見や喜び、作ったことのない料理が沢山ある。
たまには面倒だなと思うこともあるけれど、やっぱり美味しく作れた時の嬉しさには勝てない。
だから私は今日もご飯を作る。

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