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記憶の会社は、「数学」をどう捉えていくのか【TGIF数学・レポート記事】

モノグサ株式会社で広報を担当している中村です。
弊社は、記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」を提供しています。
記憶の会社、モノグサでは今年度より数学学習に本格的に注力して参ります。

そんな最中で、モノグサのTGIFでも「数学」をテーマに熱い会が開催されましたので、開催報告をさせていただきます。

TGIF(Thank God It's Friday)
モノグサではテーマを決めて、CTO畔柳が司会となり定期的に金曜夕方に対話型イベントを実施しています。

モノグサの数学への取り組み

CTOの畔柳さん(ksk)をファシリテーターとして、3名のモノグサメンバーに、Monoxerの数学についてお聞きしました。

【登壇者】
ksk:モノグサCTO畔柳圭佑、TGIFのファシリテーター
yfujiwara:Product Managerとして数学プロジェクトを指揮する
udagawa:Software Engineerとして機能開発、コンテンツ開発に携わる
mochizuki:Marketplace Opsとしてコンテンツ提供する出版社折衝に携わる

写真左からksk(CTO),mochizuki(Marketplace Ops),udagawa(Software Engineer),
yfujiwara(Product Manager)

Monoxerを通して数学に取り組む理由

ksk(CTO):そもそもなぜMonoxerで数学に取り組み始めたのでしょうか?

yfujiwara(Product Manager):そうですね、kskさん(モノグサCTO・畔柳)に「数学をMonoxerでやって欲しい」と言われたところから始まったような気もするのですが(笑)、真面目にお話すると大きく2つの理由があります。

1つ目の理由は、学校や塾をはじめとした教育機関で活用いただける教科の幅を更に拡げるためです。
現状のMonoxerは英語科目においては、英検の合格実績をはじめ十分に実績が出ています。このような実績を数学領域でも創出できるようになるとプロダクトの活用の幅が広がることに繋がります。

2つ目の理由は、「記憶を日常に。」というモノグサのミッション達成に近づくためです。
Monoxerは、ありとあらゆる知識事項を最小限の工数で記憶できるプラットフォームです。数学は従来「記憶」というアプローチからは遠い位置にあるとされていると思います。Monoxerを通して、数学を記憶から学習できるようにできれば、他のもっと難しいと思われる領域も記憶というアプローチが可能になる一歩になるのではないかと思っています。

ksk(CTO):具体的に、今回のアップデートではどのような機能が備わるようになったのでしょうか?

udagawa(Software Engineer):記憶度を管理するというMonoxerの特徴がありますが、その部分を拡張するような機能を実装しました。

もう少し具体的にお話しますね。
英単語の学習を例に挙げると、「Apple」という英語と「りんご」という日本語の対応を憶えられれば良いと思います。
しかし、数学においては解答の数値そのものを記憶するだけでは学習にはつながりません。開発メンバーの中では解答そのものではなく、公式やテクニック的な部分を憶えるのが良いのではないかという話になりました。
文章題でいえば、「あなたは今1000円お金を持っています。130円のみかんを買ったら、いくら残るでしょう?」という問題があった場合、「1000円ー130円=870円」になりますよね。この問題は、「870円」という解答の数値を憶えて欲しいから解いているわけではありません。
本質的には「今もっているお金ー買った品物の金額=手元のお金」という考え方を憶えて欲しいから解いているものですよね。金額の値が変わっても正答に至るプロセスは同じですからね。
これが数学における記憶対象だと捉え、実現するためのシステムを実装しました。具体的には下記3点を意識しています。

①ある問題を解くために使う適切な公式や解法
②公式や解法の中身をちゃんと記憶しているか
③その公式や解法を実際の問題に適用して、答えが得られるか

上記3つについて、どの程度できているか、あるいはどの程度できてないのか、先生が把握できるようになったら便利なんじゃないかなという考えで機能の実装を進めました。

ksk(CTO):問題を解く背景にあるテクニックや公式とされるものを記憶しようということが、これまでのMonoxerの体験とは異なる新しい点ですね。

「きんぴらごぼう」の例え話

ksk(CTO):mochizukiさんは、マーケットプレイス、コンテンツの観点で数学についてどう思われますか。

mochizuki(Marketplace Ops):今回の数学機能はMonoxerらしいアプローチで、これまでに世の中にはないものを出すということが、非常に新鮮だと思います。
数学の先生方が「これまで欲しかったが、これまで無かったもの」が作られている感じがしています。この機能によって、数学の先生方が生徒さんにしてあげたかったより多くのことができるようになるのではないでしょうか。

ksk(CTO):今回の数学機能は、新しいコンセプトだと思います。コンテンツを連携して提供する出版社様をはじめ、ステークホルダーに伝える時に苦労されましたか?

写真左:ksk(CTO) 写真右:mochizuki(Marketplace Ops)

mochizuki(Marketplace Ops):正直最初は伝わりにくかったこともありましたが、CEO竹内さんの「きんぴらごぼう」の例え話で伝わることが増えました。

「きんぴらごぼう」の例え話
数学を解くことを、きんぴらごぼうの調理工程に例えます。
きんぴらごぼうをつくる工程を分解していくと、最初は「ごぼうの皮を剥く」作業があります。剥くためには料理テクニックが必要です。ごぼうは繊維質なのでピーラーで皮は剥けません。
『ごぼうの皮を剥くには?』がテストの問題文だとしたら、『ごぼうの固さを利用してゴリゴリと皮を剥く』という方法を適切に選べ、『包丁の背で剥く』という料理テクニックを思い出し、『きちんと皮を剥く』という適切な方法が使えることが正解です。
きんぴらごぼうをつくる作業において、ごぼうを輪切りにしたり、皮をむかなかったりするなど選択肢は数多くあります。
『2次関数の最小値を求めよ』という問題を解くにしても、因数分解をはじめ選択肢は無限にあります。その選択肢の中から、2次関数なら平方完成を、ごぼうの皮なら包丁の背で剥くという選択肢のひとつを思い出し、それを『活用』しようと思ったら失敗せずに一歩進める状態を弊社では『記憶定着』と定義したいと考えています。解法を丸暗記するというよりは、必要なテクニックを習得している状態にするというイメージです。

今回の件で、例え話が理解を促進する有効性を改めて感じましたね。

数学開発における優先順位付け

mochizuki(Marketplace Ops):私からも聞きたいことがあるのですが、yfujiwaraさんは、PdMとして今回の機能についてどのように優先順位をつけて取り組んだんですか?

写真左:udagawa(Software Engineer) 写真右:yfujiwara(Product Manager)

yfujiwara(Product Manager):やりたいことが沢山ある中で、「それがないと動かない機能」と「あったらより良くなる機能」を区別することを大事にしましたね。当然ですが、「それがないと動かない」機能は、兎にも角にも作るしかないですからね。
「あったらいいな」と思う項目にどう優先順位をつけるかが難しいところですが、コストと効果を仮説検証しつつバランスを考えながら決めていきました。
仮説の段階だからこそ、関わっているメンバーの合意形成を特に大切にしました。みんなが納得する形にすることを強く意識していました。


数学とMonoxerと今後

引き続き、CTOの畔柳さん(ksk)をファシリテーターとして、モノグサメンバーと数学に関して議論を深めました。

【登壇者】
ksk:モノグサCTO畔柳圭佑、TGIFのファシリテーター
matsuhira:Customer Successとして先生方のMonoxer活用をサポート
takemura:Salesとして数学機能を先生の元へ届ける
fukatani:Software Engineerとして機能開発、コンテンツ開発に携わる
miyasaka:Software Engineerとして機能開発、コンテンツ開発に携わる

(与えられた問題を解くという範囲で)数学の難しさとは

ksk(CTO):数学の難しさについて議論したいと思います。研究として数学を突き詰めていくことは、別の難しさがあると思うので、今回は問題が与えられて解く場合の難しさに限定して議論を進めたいと思います。
例として数学検定の11級と1級の問題から考えたいと思います。

11級は小学1年レベル、1級の問題は大学生レベルです。11級の問題は「2 + 2=4」ということで、1級の問題の方が一見難しそうに見えますが、この問題も、オイラーの公式を知っていれば「e^6」とすぐに解くことができます。どちらの問題も公式を知っていれば解けるし、知らないと解けないような気もします。数学において難しいと感じるモノが何か、皆さんのご意見を伺えたらと思います。

takemura(Sales)

takemura(Sales):私はもともと数学ができたわけではなく、受験で数学を解く楽しさを感じました。数学においては「この問題はこう考えるのか」という❝手札❞が非常に大切だと思っています。
難しさはこの❝手札❞をどれだけ持っているかの経験に依るのではないかと思います。❝手札❞が少なければ少ないほど難しいと感じる気がします。

ksk:❝手札❞という引き出しを増やしていくことによって、難しい問題が解けていくということですね。

fukatani(Software Engineer):数学は、生徒が問題を解けなかった時に「なぜ解けなかったのか?」や「どうやったら再現性高く、解けるようになるのか?」の理由を分析したり、可視化して指導したりするのがすごく難しいのではないかと思います。

例えば、英語や社会の問題が解けなかった時に「ここを記憶してなかった」と要因が明確で、分析するのが比較的容易なケースが多いと思います。

その一方数学だと、解答に至るまでのプロセスが1つの要素でできておらず複数の要素からなっているケースがあることと、数学の答案は構築的であり、自分で作り上げていく作文要素があります。
先ほどの❝手札❞の話で言うと、「持っていること」と「正しく使うこと」ができる力が必要なのではないかと思います。

matsuhira(Customer Success)

matsuhira(Customer Success):数学が苦手な私の立場だと、「2+2=4」のようなシンプルな問題は、「2つのおはじきと2つのおはじきが合わさって4つになった」と頭の中で具体的にイメージすることができます。
しかし、「sin」「cos」を用いたような問題は、具体的なイメージがしづらい点に難しさを感じます。

ksk(CTO):現実世界に存在しないものを抽象的に扱う難しさですね。これも難しさのポイントになりうるなと思います。

miyasaka(Software Engineer):同じ解答に辿り着くプロセスでも、その「理解」の部分が、外からは見えず、人に依ってしまうのも難しいですよね。
例えば、マイナス×マイナスの問題がプラスになるということもどう「理解」しているかは人それぞれな気がしています。


「テストで点が取れること」と「数学ができること」の違い

ksk(CTO):「テストで点が取れること」と「数学ができること」について考えたいのですが、これらに違いはあると思いますか?

fukatani(Software Engineer):「歴史的な数学者になる」とまでいかなくても、深層学習やロボット自動運転や暗号通貨などの現代の重要なイノベーションは、割と全部数学の言葉でできているんですよね。
このように数学のコアを支えたり作ったりできる人が、私の中では数学ができる人の一例です。
「テストで点が取れること」と「数学ができること」は、直接的にそのままイコールではないと思いますが、「テストで点がとれること」は数学を使う世界で活躍するためには、良い訓練になるのではないかと思います。

matsuhira(Customer Success):私も違うと思います。私は数学が苦手ですが、テストで点を取ろうと思えばある程度は取れました。公式やテクニックを詰め込み、覚えたパターンをそのまま使って解答するイメージです。でもそれは「数学ができる」ではなく、本当に「できる」ようになるには違う努力が必要な気がします。

takemura(Sales):matsuhiraさんのお話にあったように、数学で点をとるだけだったら、ドーピングによってその場しのぎでできるというのはとてもよくわかります。「数学ができる人」は厳密に論を積み上げていける人なんじゃないかなと思います。

miyasaka(Software Engineer):テストはあくまで人が作るものなので、作成者の意図も大きく反映されますよね。大学入試も、共通テストのように「テストで点が取れる」だけでなく「数学ができる人」を問う問題に近づけようとしているし、実際その方向には向かっているんじゃないかなとは思っています。

Monoxerでどこまで「数学」を扱っていくべきか

ksk(CTO):Monoxerにおいてどこまで数学を扱っていくべきでしょうか?

matsuhira(Customer Success):先ほど「テストで点が取れること」と「数学ができること」についてのお話がありましたが、Monoxerは「テストで点が取れること」については相性が良いのではないか思います。
「数学ができること」についてはMonoxerでどう実現するのか、まだイメージは持てていません。

ksk(CTO):そうですね。「テストで点が取れること」は非常に重要で「数学ができること」にまでどの程度踏み込んでいけるのかが大切なポイントになるのではないかと思います。

写真左:fukatani(Software Engineer) 写真右:miyasaka(Software Engineer)

fukatani(Software Engineer):Monoxerでどこまでできるようにすべきかを考えるときに、ミッションである「記憶を日常に。」を実現する中で、人生の選択肢を増やすことができるというのが大きな価値だと思うんですね。
数学を日常的に使うエンジニアが育つくらいのものにはしたいですね。

ksk(CTO):ありがとうございます。私としても、人が人生の選択肢を決めていく上で自分が今持っている能力に関わらず、進みたい方向に対して、Monoxerで身に着けられる状態にはしたいなと思います。


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