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CEOの鈴木に聞く。コロナ禍で変わったもの、変わらなかったもの。そしてモノタロウの未来とは。

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。

前回の社長インタビューが2018年。当時(2017年度)850億円の売上高は、現在1500億円を超えるまでに成長。正社員数も、300名だった時代から、今や600名を迎えようとしています。この3年間は変化のうねりがありました。直近では、コロナ禍で世相が大きく変化し続けています。この期間のモノタロウの歩みやこれからについて、社長の鈴木にインタビューしました。

鈴木 さん
取締役兼代表執行役社長
1998年に立教大学を卒業後、住友商事に入社。住商グレンジャー(現MonotaRO)の立ち上げメンバーとして活躍。2006年にMonotaROの上場と同時に出向を終え、住友商事を退社。インターネットビジネスの可能性を感じて楽天に転職。その後、約1年を経て2007年にMonotaROに復帰しマーケティング部長として手腕を発揮する。2012年3月に取締役兼代表執行役社長に就任。

コロナ禍が与えた影響とは

ーー2019年の末から新型コロナウイルスの感染拡大がはじまり、2021年の現在もコロナ禍は続いています。新型コロナウイルス感染拡大がモノタロウに与えた衝撃はどのようなものだったでしょうか?

このような状況になって早1年半が経ちますが、最初の数ヶ月はやはり商品の調達がなかなかうまくいきませんでした。当時は新型コロナウイルスの感染が世の中に与える影響自体も見えてこず、その中で社員の働き方も一気に変えていかなければならなくなった。とにかく最初の3ヶ月4ヶ月の間は非常に手探り状態だったと記憶しています。

この1年半でさまざまなものが変わりましたが、その代表例の一つはやはり働き方でしょう。リモートワーク、それを実現するためのインフラや会社としてのルール、そして判断基準、これらはコロナ禍にあったからこそ推し進められ、考えられるようになったと言えます。

リアルだからこそのコミュニケーションとオンラインでも代替可能なコミュニケーション、それらの違いや実現方法については現在わかりつつある状態ですので、後はいかに会社として従業員個々人の安全を守り、かつ成果・アウトプットも落とさずむしろさらに増やしていけるかを考えていくだけです。

言うまでもなく、新型コロナウイルスがビジネスに与えた衝撃はあり、2年目に入った現在においてもなおその影響は続いています。プラスの影響にせよマイナスの影響にせよ、それらをいかに理解し、コントロールするかは非常に重要です。数字として出ているものには必ず要因があります。

だからこそ合計や平均だけを見るのではなく、それぞれの要素がどのように・何によって影響を受けているのか、またその結果がなぜ現在の形になっているのか、そして去年から続く影響が今年ではどのように変化しているのかを理解することが求められています。
すぐにはコントロールできなかったとしても、まずは対象を理解することがスタートで、理解ができれば、その先を想像することができ、短期、中期と打ち手を考えられるようになります。

ビジネスにおける新型コロナウイルスの影響はプラスとマイナスの両面がありましたが、オンラインで商品を調達するというサービス内容が幸いし、大きなダメージは回避できました。
「お客様にとって必要な商品を提供する」というミッションを継続しつつ、サービスをさらに改善して、「お客様がモノタロウを利用する理由の創出・拡大」に今までよりもフォーカスして取り組むことが重要だと現在は考えています。

パンデミック時に、経営者として意識していたこと

ーーパンデミックが起きたとき、経営のかじ取りについて考えたのはどのようなことですか?

経営判断はなるべく素早く行うよう努めました。
とはいえ、いくつもの選択肢があり、さらにどれが正解かもわからない状況は多々ありました。だからこそできる限りの情報を集め、そこから判断し、従業員を含め全員が迷わないようにすることを大事にしました。

ーー判断するための情報はどのように収集し、またそのためにどういったことを行いましたか?

社内の情報については、たとえば毎週行っている部門長会、または定期的に送られてくる週報(※)などから有益な情報を得られています。また、普段は物流センターをはじめ各現場にも足を運び、自分の目で確認するようにも心がけています。

社外の方とのコミュニケーションも非常に重要と考えていまして、こういう状況下ではありますが、興味関心がある事柄や人物に時間を割いていただき、オンラインでさまざまなお話を伺うことも続けていますね。
もちろんインターネットで調べられることはたくさんありますが、むしろこういうときだからこそ実際のコミュニケーションで得られるインプットが大切なのではと思っています。
コロナ禍であってもやれることはたくさんあります。

※週報:当社では、毎週最終日にその週の行動や所感、分かったこと等を社長、部門長全員、自組織の上長にレポートしています。各社員が自身の行動を振り返る機会となるとともに、常に経営層とのつながりを持つことで情報の透明性を確保しています。

ーーこの1年半の判断を振り返ってみて、今感じることはありますか?

今までやってきたことを変えなければならない、さまざまな状況の変化をキャッチアップしなければならない中で、今までと物事を見る角度が変わり、モノタロウが今後どのように進んでいくべきなのかを考えるきっかけにはなりましたね。会社としての新たな視点を得られたかなと感じています。

ーー今の質問と少し重なりますが、今回のコロナ禍から経営者として影響を受けたことはありますか?

もちろんさまざまな影響があったとは思いますが、考え方が根本から変わるようなことはなかったと捉えています。
というのは、百年に一度の不況であったり千年に一度の天災であったり、その種類は変わったとしても常に何かしらの非常事態は起こるものと認識しているからです。

それこそ過去10数年間にはリーマンショックもありましたし、東日本大震災もありました。非常時を通して自分自身の目線を上げる、考え方を変える契機にはなりますし、その時々で視点や考え方を変えていくわけですが、常に臨機応変な対応が求められている以上、経営者としての態度は通常時でも非常時でも、このコロナ禍であってもあまり変わっていないつもりです。

ーー実際は「百年に一度」のはずの出来事が、かなりの高頻度で起きていますよね。

そうですね、だから変化は常にあるものなのです。
たとえ話ではありますが、百年に一度だとしても変化の種類が百通りあれば毎年何かしらは起こるわけです。その意味では、何も起こっていない状況のほうが逆に珍しいとさえ言えます。

ーーその変化を織り込んで動いていくわけですね。

それを踏まえつつ会社経営を続けてきて今感じるのは、組織は生き物だなということです。
ある一つの生命体があるとして、それが誕生し成長期を迎え、成熟し、だんだんと衰退していく、このサイクルは人であっても会社であっても、あまり変わりません。

だから変化し脱皮し続け、成長のステージを幾度も繰り返すことを目指すべきなのではないかと。社会や環境の変化が事業内容の変化を促し、その変化を実現できれば社会に新たな価値を提供できる、これの繰り返しだと思います。

ーー主観的な問いにはなりますが、現在のモノタロウを人間に例えると何歳ぐらいでしょうか?

会社の規模がある程度大きくなってきましたし、25歳から30歳というところでしょう、10代ではないのは確かです。
今日ですとSDGsの取組に代表されるような、サステナブルなことに配慮する必要が出てきていますし、それに伴い社会からの期待も大きくなってきています。
もちろんスタートアップだったら関係ないという話ではないですが、やはり企業として社会に対する影響を大きくしようとすればするほど、それに対する責任にもしっかり向き合わなければなりません。
だから10代ではなく、かといって円熟してきた40代50代ではなく、「大人としての対応」が求められ始める20代後半だと思っています。

コロナ禍を経て変わったもの、変わらなかったもの

ーーコロナ禍においてモノタロウが変わったところ、変わらなかったところは何ですか?

先ほども申しましたが、大きく変わったのは働き方です。
「ワンフロアで全員が働き、そこで日々発生するコミュニケーションからさまざまな気づきを得て判断する」、これが今までモノタロウが理想としてきた働き方でした。
しかし当然ながら、ワンフロアで全員が働くということはなくなりました。その中でも変わらなかったのはコミュニケーション自体でしょう。

どのように行うかという手法こそ変わりましたが、当社の行動規範である「他者への敬意」は全く変わっていないと思いますし、大きく環境が変わってもなお、組織の中でいかにコミュニケーションを取って動いていくかを一人ひとり模索してくれて、それは非常に素晴らしかったのではないかなと思います。これが変わらなかったからこそ、感染者が発生しても助け合って皆がサポートし合えたのだと思っています。

ーーBtoBの商流通やニーズにはどのような影響があったと感じていますか?

商流通やニーズに大きな変化はなかったと感じています。
もちろん、必要な資材をオンライン調達しようという潮流はこのコロナ禍によって加速していますが、ニーズそのものは変わっていません。
仕事において必要なものを正確に・手間を掛けずに入手したい、商品の検索から経理上の処理までを一貫したサービスとして受けたい、という思いはお客様の中に変わらずにあります。もちろん調達をされる方がリモートで働くケースなどでは、オンラインで調達や発注できる当社の仕組みが追い風となった部分はあるのではないかと思います。

要は、必要となっている商品の種類や量には変化が生じていますが、効率よく物を得たいというニーズが大きく変わっているわけではない、ということです。
需要の変化という意味ではマスクやパーテーションがパンデミック前後で変動があった典型的な例と言えるでしょう。お客様の事業がコロナ禍の影響を受けたかどうか、またその影響はプラスのものなのかマイナスのものなのか、さまざまな違いがそこにはありますが、いずれにせよモノタロウのミッションはお客様のニーズに応えることです。

とはいえ長い期間で考えると、産業の構造は間違いなく大きく変化していきます。例えば100年前は全世界の人口の6割以上が第一次産業に従事していましたが、現在に至るまでに産業構造は大きく変化しました。こうした産業や社会の変化を正しく把握し、機会を見出して少しずつシフトしていくことは重要なことだと思います。

社長としての約10年を振り返って

ーー鈴木さんがモノタロウの社長に就任されて間もなく10年が経ちますが、これまで成し遂げたと感じられていることは何でしょうか?

あまり成し遂げたという感覚はありませんが...事業のスケールは大きくできたと考えています。お客様の数も一日の出荷個数も商品の数も、はたまた従業員の数も10年前と比べるとだいぶ大きくなりました。現在は海外事業も進めており、モノタロウの事業モデルとそれによって生み出されるものは日本の外にまで広がっています。
自分たちが取り組んでいる仕事が大きくなり、海外にも影響を与えられる存在にまで成長したというのは一つの達成かなと思っています。

ーーそのように大きく成し遂げたものがある一方、鈴木さんが大変だ・辛いと思うこと、思う瞬間はありますか?

これは楽しさと表裏一体ですが、上場企業の経営者としては、常に企業を成長させ続ける、計画を達成し続ける責任があると言えます。
毎日の受注とその見通しを確認して、「ああ少し足りないな」「今日は多いな」と日々感じ続けるのはあまり心地が良いものではありません。
約束を達成すること、そして連続した成長へコミットするためには、さまざまなことを考えて先回りし、さらに考えるだけでなく実際にアウトプットして実現しなければなりません。もちろん、新しいことにチャレンジできるという楽しみがそこにはありますが、プレッシャーを感じないわけではありません。

ーー「アウトプット」というワードで思い出しました。以前、倉庫で一緒に作業を行う機会がありましたが、鈴木さんの作業のペースは誰よりも速かったですね

20年前に当社で初めての物流センターを立上げましたし、今も物流センターの立上げに関わることもあります。実際に中でやってみて、以前よりも効率性が非常に上がっていると実感できたことが純粋に嬉しかったですし、自分の手でお客様の手元に届く商品を準備する機会を得たことが楽しかったから作業ペースも速くなりました。何事もそうですが、目の前のことを仕事として、やらなければならないこととして捉えてばかりだと面白さが削がれ、成長も難しくなります。
なので、どのようにすれば業務をより楽しめるか、どうすればより改善できるかを常に考えつつ行動するのが重要でしょう。

モノタロウの未来とは 

ーー改めて、今後事業として目指していくこととは何でしょうか?

原材料以外ならどんな品もモノタロウで揃えられる。正確な商品情報と確かなリードタイムでモノが届く。という価値をより深掘りしていくことが足下にあります。
そのため、短期的にはオペレーション、カスタマーサポート、物流やソフトウェアの開発、さらにはマーケティングなど、一つひとつの物事へしっかり取り組んでいく必要があります。

さまざまな計算方法がありますが、いずれの方法でも日本におけるモノタロウのシェアは3%から4%なんですよね。これが30%や40%でしたらさすがに頭打ちでしょうが、3%ならまだまだ成長の余地があると言えるでしょう。

そうした前提がある上で、長期的にはモノタロウのサービス自体がお客様にとってのソリューションになりたいと考えています。ただ商品を調達するのではなく、産業ごとにコミットしていく、たとえば、製造業ならそこがどんな環境でどのような商品を必要としているのか、自動車整備業ならどのような整備がそこでは求められていて、それを実現するためにはどういった商品が必要なのか。大企業のお客さまであれば、調達のところから会計システムのところまでを担うような、商品発注の前後もカバーするソリューションを提供することが、長期的には実現したいことです。これが達成できれば、より一層の利便性をお客様へ提供できますし、モノタロウとお客様の関係もより深まると考えています。

現在モノタロウは615万の各産業従事者のお客様にご登録・ご利用いただいていますし、今後も増えることと思います。それだけのお客様がいらっしゃるからこそ、いわゆるネットワーク効果(※)が生まれます。そこで資材調達のプラットフォームとしてよりサービスを充実させ、価値を高めていくことを長期的に見据えています。

あくまで調達という業務は、仕事の中のいちプロセスです。モノタロウという資材調達のプラットフォームの中で、その領域を広げソリューションを提供することによりお客様の仕事に深く関わることできます。例えば、工程管理を行う、整備を管理するようなサービスを提供し、そこから商品の発注に繋がっていく可能性もあり得るわけです。

もちろん長期的であっても短期的であってもお客様への価値提供はデータに基づきつつ目指すわけであり、その意味では長期でも短期でもあまり変わらないと言えます。

※ネットワーク効果:ネットワーク効果とは、顧客が増えれば増えるほど、ネットワークの価値が高まり、顧客にとっての便益が増えていくことを指します。 ネットワーク内の人だけでなく、ネットワークの外部にいる第3者にとっての価値も高める意味から、ネットワーク効果のことをネットワーク外部性とも呼びます。

ーー領域の拡大という点では、検索エンジンから始まったGoogleが多方面へサービスの領域を広げているようなことに近いのかもしれませんね

つまるところ、そのように領域を広げている企業が長い寿命を得ているのでしょう。新たな領域へチャレンジすることで、会社の年齢を20歳のころ、場合によっては5歳や10歳のころへ若返らせることができると思うんですよね。その中においても今のコアとなっている価値をいかに拡大させていくかということが、重要な取り組みです。

ーーこうした未来に対して、鈴木さん個人としての想いもお聞かせいただけますか

基本的には個人としての考えと会社としての考えは一致していますが、あえて答えるのであれば、一人ひとりの従業員が自ら考え行動できる力を与えられる環境づくりをより実現したいですね。

年齢を経るごとに考えが変わりづらくなるのは人も会社も同じでしょう。年々社員数も増え30歳近くになってきたモノタロウにおいて、新しい考えを受け入れる、一人ひとりがいろんなことに興味を持つ、疑問を抱くということが実現し続けられるように、私が行動することが大切だと思います。

ニューノーマルな働き方へ 

ーー今後、社員の働き方はどのように想定されていますか?

ニューノーマルな働き方ということですかね、基本的には週の半分くらいは出社して半分は在宅という形になるかと思います。
これの何が良いか、まずわかりやすいメリットは通勤時間がなくなることですよね。往復で2時間の通勤時間がかかるとした場合、週に10時間、月に40時間ですので月の約1.5日分は通勤していたことになるので、それがなくなればその分だけほかのことに活用できます。また、子育て世代の社員からすると、家族と関わる時間が増やせます。

またリモートワークの実現により集中できる環境を得られたというのも大きな利点でしょう。一方で、出社することによってはコミュニケーションが生まれ、そこから気づきを得ることができます。決まったコミュニケーションではないところからの発見は、リアルだからこそ生まれやすいものです。

リモートの集中と出社のコミュニケーションの両方を併せ持つことで、アウトプットの質をより高めていけると考えています。

ーー社員に期待すること、こうあってほしいということがあれば教えてください

興味関心を広く持ち、そして疑問を抱いてほしいですね。
一つの事業の中で社員が多くなるということは、それぞれの仕事が専業化していることを指すと思います。専門性を高めていくことも大切ですし、それだけにならず、総合的にコラボレーションしていける環境が理想です。そのためには自分の業務だけでなく、ミッションや、自分の仕事の前後に関わる人、当然ながらお客様、視野を広く持つことが大切だと思います。
これは常々お伝えしていることですが、複数の専門性を重ねていくことで新たなアウトプットが生まれ、そしてそれによる成果はより貴重なものになっていきます。
ですから、仕事をより楽しめるようにするためにも、新しいことへチャレンジできるようにするためにも、一人ひとりの社員が広い興味関心を抱いて専門性を得て、それを掛け合わせてほしいです。
そして、それを実現できる環境がモノタロウにあると考えています。

ーー今後、モノタロウの仲間となる方に向けて一言をいただけますか

そうですね...自分で言うのもなんですが、いい会社だと思います(笑) 毎週末、週報を500通以上読むわけですが、すごく意欲的な方もたくさんいらっしゃいますし、何らかの事情で思うようにならなかったり、必ずしもポジティブではない方も当然いるわけですが、いずれの状況下でも多くの方が状況を良くしようとするし、自分や組織のためにどんなことができるかを考えて行動しています。その意味でいい会社だと思うんですよね。

先ほどのソリューションの話もそうですが、会社が提供するサービスが挑戦を続けていく中なので、プレイヤーとして成果を実感できる瞬間も多々あると思います。もちろん環境変化に対応しながらにはなりますが、チャレンジがしたいと望んでいるのであれば、良い場を提供できるのではないかと思います。

ーー鈴木さん、ありがとうございました

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