世界最先端ロボットが800台稼働する超巨大物流センターを立ち上げる、物流DXに向き合うシステムエンジニアとは
※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。
モノタロウの物流センターは、兵庫県に尼崎ディストリビューションセンター、茨城県に笠間ディストリビューションセンターと茨城中央サテライトセンターがあります。そして新たに、22年春の稼働に向けて、大阪からのアクセスが良く西日本全域をカバーできる兵庫県の猪名川ディストリビューションセンターの準備中です。400億円規模の全体予算で、最新鋭の物流ロボット、搬送設備や倉庫制御システムを導入してDXに取り組み、商品の配送を効率化してお客様へのリードタイムをこれまで以上に短くすることを目指しています。今回は、物流センターのシステムや設備全般の実現化に携わる物流システムエンジニアの石崎さんにインタビューしました。
■猪名川ディストリビューションセンター
・所在地: 兵庫県川辺郡猪名川町
・使用延床面積 (取材当時): 16.3万平方メートル (広さ目安:サッカーコート23面分)
・稼働開始目処: 第1期 2022年4月 第2期 2023年Q3
・出荷能力: 約18万行/日
猪名川ディストリビューションセンターの全貌については、こちらもご覧ください。プロロジスパーク猪名川1
石崎さんよりメッセージ
「物流システムエンジニア」というとシステム開発のイメージを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、モノタロウの物流システムエンジニアは、ITシステムの他にも、倉庫建屋/インフラ/搬送ロボットやマテハン(マテリアルハンドリング)と呼ばれる物流機器/作業端末など、物流センター内の設備全般の導入と運用を担当するチームです。
私はモノタロウに転職して以来、これまでの8年間で3ヶ所の物流拠点の立ち上げに奔走してきました。そして、現在は各拠点の運用チームをマネジメントしながら、2022年春に開業するモノタロウで最大規模になる新物流拠点「猪名川ディストリビューションセンター」のプロジェクトを推進しています。ここには最新鋭のロボットが導入され、関西弁で言うところの“えげつない”ほどの規模と設備の施設が稼働します。
そんな私ですが、モノタロウに転職するまでは物流経験ゼロでした。このインタビュー記事を読んでくれる方の中には物流分野の専門性にハードルの高さを感じる人もいるかもしれませんが、お伝えしたいメッセージは、「頑張れば、誰でも、何でもできる」ということです。これまで物流経験がある方も、経験のないエンジニアの方も興味を持ってコンタクトしてくれると嬉しいです。
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Q. これまでのキャリアはどのようなものでしたか?
「物流経験ゼロから最先端の物流DXを手がけるように」
私は新卒でSIerに入社しました。プログラミングや要件定義のドキュメンテーションもガリガリと取り組みました。当時の上司に誘われてソフトウェアハウスの立ち上げに携わり、その後も個人事業主やシステムアウトソーシング会社などの経験を経て、2012年7月にモノタロウに中途入社しました。転職サイトのスカウトメールがきっかけだったかと記憶しています。入社時の3ヶ月の研修の後に、韓国子会社のNAVIMRO Co., Ltd.のフロントシステムやSAP導入などを担当しました。
それまでのキャリアを通して初めて物流に携わったのは、尼崎ディストリビューションセンター(2014年7月 開設)の立ち上げプロジェクトです。続いて、笠間ディストリビューションセンター(2017年3月 開設)、茨城中央サテライトセンター(2021年3月 開設)の立ち上げと運用を行ってきました。今日まで本当にあっという間に毎日が過ぎていきました。この期間は世の中のトレンド的にも、物流分野のロボット・AI導入やDXが特筆して進化した時期であり、それは現在もまさに進行しています。物流センターを立ち上げる毎に最新鋭の機能設備を導入してアップデートもしてきましたので、振り返れば苦労も多くありましたが、貴重な経験ができて働き甲斐や楽しさを感じています。
そして、いま私が注力しているのが、2022年春に開業するモノタロウで最大規模になる新物流拠点「猪名川ディストリビューションセンター」のプロジェクトです。この物流センターが稼働することで、現状のモノタロウの売上規模の2倍(3,500億円)に対応できるようになり、在庫能力は50万点で幅広い需要に応えます。倉庫業務の生産性を高める機器やシステムを導入して業務改善をすることで、コストの削減や入出荷のリードタイムの短縮に繋げます。また、スタッフにとっても働きやすい環境を整えることで、安全で業務効率の高い職場を実現します。
猪名川ディストリビューションセンターの建屋は、マルチテナント型物流施設「プロロジスパーク猪名川1」の賃借になります。入居者であるモノタロウが運用しやすいように、レイアウトや設計変更をしていただきました。例えば、セキュリティーゲートやサイネージモニターの設置位置など、これまでモノタロウが他の物流拠点で培ってきた細かな要望を伝えて実現してもらいました。また、入退室の検温管理/間隔の空いた検品空間スペース/密にならないような空間スペースの設計/空調を吸い込み型にするなど、建物を建てる時から新型コロナウイルス感染拡大後のニューノーマルに対応する先進の物流倉庫を考えて進めています。
Q. 新物流センターの特徴は?
「世界最先端の無人搬送ロボットが計800台稼働する」
モノタロウでは、これまでも各地の物流センターに最先端の物流機器やシステムを導入して業務効率化を進めてきました。特に省人化は大きなテーマであり、無人搬送ロボット(AGV)の導入を積極的に進めてきています。倉庫内の商品を保管している棚ごと指定場所まで自動に搬送できるので、人手と台車を用いる従来のピッキング作業と比較すると3倍以上に作業効率が高まり、倉庫内業務の作業負荷を軽減して物流量の変動にも柔軟に対応できます。
モノタロウが初めて無人搬送ロボットを導入したのは、2017年3月の笠間ディストリビューションセンターです。検討段階時では、国内では無人搬送ロボットの導入事例がほとんどなく、最新のことは世の中には情報が出ていないので、計画段階ではあらゆることを調べ、自分たちなりの仮説を立て検証を重ねてきました。そして、日本国内ではモノタロウがパイオニアとして、日立インダストリアルプロダクツ製の無人搬送ロボット「Racrew(ラックル)」と倉庫制御システム(WCS)を採用して各拠点で活用し続けており、猪名川ディストリビューションセンターにも第一期で約400台を稼働させる計画です。
しかし、単にロボットを大量に導入すれば良いかというとそんなことはありません。メーカーは機械の品質についてはきちんと保証してくれますが、「オペレーションをどういう風に考えて、どんなシステムの機能があれば正しく運用されて生産性が最大化されるか」が重要で、そのための機能の定義や運用ルールの制定は、私たち物流エンジニアチームが他部署やメーカーの協力をもらいながら進めてきました。計画段階では「こんなところで困るのではないか?こんな機能が必要ではないか?」と、あらゆる方向に想像力を働かせて社内で検討を重ね、メーカーに要望を伝えていろいろなシステムや機能を作っていきました。笠間の無人搬送ロボットは無事にフル稼働しています。オペレーション面などを改善して、猪名川にも導入していきます。これまでは出荷工程だけでしたけれども、入荷工程にもラックルを活用して、作業指示やコントロールを最適に高度化していく予定です。
▼Racrew
ITシステムにおいては内製文化のあるモノタロウですが、物流システムにおいては外販パッケージのWMS/WCS(倉庫管理システム)を採用し当社の設備、オペレーションにあわせてカスタマイズしています。アプリケーションシステムがマテハンやロボットなどの設備に連携することが多く、専門会社にお任せした方が内製で開発するよりもメリットが大きいからです。なお、電源や物理ネットワークなどインフラ設計についてはモノタロウの物流業務に最適な環境を実現するために自前でCAD図面を引いてレイアウトしています。物流センターを立ち上げる度に施設の規模が大きくなって、防災やBCP(事業継続計画)を意識したインフラ設計が必要となり、非ITスキルの重要度が増してきました。
Q. 物流SE業務のやりがいは?
「システム以外にも多岐に渡り、目に見えて形になることが面白い。新しいチャレンジの中で、最先端の経験ができる」
通常のITシステム開発だと目に見えないものを作り上げていきますが、物流システムエンジニアの仕事は、システム以外にも建屋/インフラ/マテハン/端末など多岐にわたり、目に見える形になっていくことに面白みがあり、物流センターが完成した時の感動はとても大きいです。モノタロウの企業理念「資材調達ネットワークを変革する」にある通り、常にお客様を意識して新しいことにチャレンジできる環境と社内文化の中で、世界でも最先端の物流DXを経験できることが一番の魅力です。
Q. グループのメンバー構成や、新たに加わっていただく方のイメージは?
「物流領域経験者も未経験者も、力をつけられる環境がある」
現在、物流システムグループには社員12名と業務委託の方6名が、尼崎本社や各地の物流拠点に所属しています。平均年齢は40歳ぐらいですが、新卒入社した方も活躍しています。またモノタロウに転職されて7年目の女性も力を発揮いただいていますね。私も含め社員12名のほとんどは物流業界の未経験者で、前職も物流分野の仕事をしていたのは3名です。(小売系の社内SEとして物流や倉庫も見ていた方、3PLの物流会社で立ち上げ支援していた方、本社勤務で各地の小規模倉庫を一元的に対応していた方です。)
物流分野に専門性のハードルを高く感じる人も多いかもしれませんが、物流システムエンジニアリングの仕事の工程は一般的なシステム開発の工程「企画→要件定義→設計→開発構築→テスト→運用」と同じです。新規の立ち上げ時期には、企画や要件定義のスキルや経験が必要になってきますが、それができるにようになるにはモノタロウならではの業務知識が不可欠です。業務の細部にまで考えを巡らせて、ITと物流の両方の観点を持てることが大切です。入社の際に私たちのグループの領域のご経験が浅ければ、運用やテストの現場でまずは1〜3年ぐらいの経験を重ねてもらい、徐々に上流の工程にスキルの幅を広げていただくように考えております。また社内の他部門や外部パートナーと協力して仕事を進めていくので、フットワーク軽く様々な人々と議論を重ねて、物事をデータや数字で表現できる人が望ましいです。
猪名川での働き方
猪名川ディストリビューションセンターは、最寄りの阪急電鉄・能勢電鉄「川西能勢口駅」から20分のバス路線が新設されるほか、自動車通勤のための駐車場も整備されます。最上階には景観の良いカフェテリアが作られるなど快適に働ける施設です。物流センターは夜間も稼働していますが、BCP対策や保守体制などルールと仕組み作りにより、物流システムエンジニアは9~18時勤務となり、まず夜間対応は想定していません。またリリースや工事があるときは休日勤務が発生するケースもまれにありますが、その際には別途お休みを取っています。現地でしか出来ない業務も多いですが、メンバーと調整することでリモート勤務を実施することも可能です。
このような大規模施設の立ち上げフェーズからの参加は貴重なキャリアになると思いますし、当社における私自身の歩みが示すように、たくさんのチャレンジを行う機会があり、かけがえない経験とやりがいを提供できることと思います。
また、私たちのグループ以外にも当社には経験豊富なエンジニアが多いので、そのチャレンジから刺激を受けたり、知識や技術的な側面で情報交換したりという側面からも、成長できる環境がありますよ。