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SENNHEISER HD 650 with SoundID Individual Calibration

まずはこのヘッドフォンの導入経緯から。去る2022年2月某日のこと。その日は急ぎの仕事もなくのんびりしていたところ、何かのSNSで音響補正ソフトウェアのメーカーであるSonarworksが写真コンテストみたいなのをやっていた(国内代理店絡みではなく本国で)ので、暇つぶしにちょちょいと写真を撮って応募してみたんです。その写真がコチラ。

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お題が「Sonarworks製品を入れ込んだ写真を撮ってね」という感じだったので、メインモニターとして使っているパイオニアのスピーカーを測定した画面を表示させた上で、愛用の富士フィルム X-E3にLeica Summilux 35mm f1.4 1st. (メガネ付き)を付けて撮影したのでした😆

そして、投稿したことすらもすっかり忘れてた3月某日。インスタのSonarworks SoundID Referenceの公式アカウントから「おめでとう!HD 650が当たったよ!」というDMが来たのです!この件で初めて知ったのですが、Sonarworksってラトビアの会社だったんですね!ロシアがウクライナに侵攻して2週間くらい経ってたのでいろいろ心配だったんですが、ラトビア→ポーランド→中国→日本という経路で無事に届きました。流通関係も大変だろうに、本当に感謝すると共に、彼の地に一刻も早く日常が戻るのを願うばかりです(マジで夢に見るほど心痛いので)。

◉SENNHEISER HD 650というヘッドフォン

このヘッドフォンは、オーディオに詳しい人だったら知らない人はいないんじゃないかというくらいメジャーでロングセラーな逸品。発売は2004年なので、実に18年前(2022年現在)のモデル。2017年には後継のHD 660Sも発売されているけど、いまだに現行品なのはスゴイ!しかも、前身モデルのHD 600も復活生産(だったかな?)されてますね。HD 600は1997年の発売。ちょうど僕が日本大学芸術学部放送学科に入学した年で、このHD 600や、さらに前身のHD 580に憧れたのを覚えてます。当時から「ダイナミック開放型の完成形!」みたいな評価でしたね。それほどの完成度だったので、最新のヘッドフォンが群雄割拠する現在でも、現行品として生き残っているというワケです。

◉音質

さて、肝心の音について。実は、結構前からこのヘッドフォンの試聴は何度もしていて、結構好きだったんですよね。とにかく癖のようなものをほとんど感じない、フラット傾向の音。リスニング用途だけでなく、音楽制作に使う人も多いのも頷けます。フラットとは言っても、開放型にはめずらしく(最近はそうでもないけどw)低域の量感がしっかり出てるタイプ。ただ、僕の記憶ではもうちょっと地味だった気がするけど、これはわずかに派手な印象。気のせい?(この解明は後ほど)

そうそう、インピーダンスが300Ωと高いので、パワーのあるヘッドフォンアンプでないと音量稼げない点は注意ですね。

周波数バランスは上記のように優れていて、Sonarworksが独自に行った測定でも、最もフラットなヘッドフォンとして同社のリファレンスになってる模様。解像度も結構高く、音の分離も良いので、細かい音までよく聴き取れます。普段、ノイズチェックや楽器REC時に愛用してる密閉型のAKG K371と比べても、音の奥行き感や見通しの良さは明らかに上。同じ開放型で価格も近いaudio-technica R70xと比較すると、R70xの方が低音が豊かで高域がおとなしい印象。音楽のミックスに使うならHD 650の方が使いやすいかもしれません。

さて、実は送られてきたHD 650自体は普通のものなんですが、Sonarworksがこの個体を実際に測定した結果を提供する「Individual Calibration」(個別補正)というサービスが施されたものとなります。本来なら本国のSonarworksからオンラインで購入するか、お手持ちのヘッドフォン(どんなモデルでもOKだったはず)をメーカーに送って測定してもらうかするんですが、国内代理店では受け付けてない模様(多分)。

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ケーブル部分に追加されたタグと、アジャスター部の内側に固有IDが書いてあって、同社のSoundID Referenceシリーズを利用して入れば、そのIDをソフトウェア上で入力すると、個別補正プロファイルが使えるようになるという仕組み。SoundID Reference自体には膨大な数のヘッドフォン補正プロファイルがプリセットされてますが、それらは「Average」と表記されている通り、いくつかの個体を測定した結果の平均値となってるようです。

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上図1枚目が個別補正プロファイル、2枚目がアベレージプロファイルです。こうして見ると結構違いますね!僕の個体の方が低域と高域の癖が強めです。これはもしかしたら製造年の影響かもしれません。というのも、現行のHD 650とHD 600は、発売当初とは外装の仕上げが違うんです。かつての両モデルは石っぽい凹凸感のある塗装で、前者がグレー、後者が青っぽい色だったんですが、現行はどちらも模様のないツルッとした塗装に変わってます。

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これに伴い、見えないところでもいわゆる予告なき仕様変更がされているのかもしれません。Sonarworksが最初の製品を出した頃はまだ旧製品時代だったので、こういった違いが出ているのかもしれませんね。そして、前述した僕の記憶との違いの原因もここにあったように思います。あぁ、スッキリ😁

ということで、それぞれの補正プロファイルを適用して聴いてみると、個別補正の方では高域が少しおとなしくなり、中域の密度が上がる印象なのに対し、アベレージの方はそこに少し高域の明るさを足した音になる感じ。グラフの通りな感じです。補正なしの場合と比べて一番変わるのは中域の質感ですが、おそらくこのグラフの2~3kHzあたりの補正が効いてるんじゃないでしょうか。個人的には、別に補正しなくてもいいかな?とおも思いますね。これは他のヘッドフォンでも同じなんですが、外に持ち出して使う時など、SoundID Referenceがない環境で使うときにギャプを感じて使いにくくなるから。なので、ヘッドフォンに関しては、基本的に補正はせずに使い、ミックスチェックする時の一候補として使う感じですね。

ちなみに後継のHD 660Sは、このHD 650をもう少しハイファイにしたような音だったと記憶してます(悪くないけど、あまり好みではなかった)。そして、HD 600はHD 650よりも少し平坦だけど元気な印象で、これは好みな音です。音楽のミックスの補助で使うならHD 650、テンション上げて制作したり、音楽を楽しく聴いたりするならHD 600がいいかもですね。

◉装着感

これは個々人によって意見が分かれるところなので多くは言いませんが、側圧は少々強め、バンドの頭頂部も最初のうちは長時間装着で少しだけ痛いなと感じるかもしれません。この点は圧倒的に前述のR70xの方が快適です。ただ、この記事を書くのに1時間以上着けっぱなしで作業してますが、もう慣れてしまったのか、痛みとかは全然感じないですね😁

◉あとがき

HD 650は開放型のデファクト・スタンダードと言ってもいいくらい完成度の高いモデルなので欲しいなと思いつつも、ヘッドフォンは他にもたくさん持ってるし、価格もそう安くはない(家電量販店価格で55,000円)のでずっと見送ってたんですが、もしディスコンになるというなら、そうなる前に買ってもいいかな……と思ってたもの。それがまさか貰えちゃうなんて!今年の運を使い切ってないか本気で不安です😆

とは言いつつも、最近ではもっと高性能なヘッドフォンは腐るほどあります。開放型だとFocal Clear Professional(当時は現行のClear MG Proではなかった)なんかを試聴した時にスゲェな!と思ったんですが、あれは20万くらいしますからね😅ただ、SONY MDR-900STと同じで、多くの人に使われ、長く生き延びてきた製品の音を知っておくのは良い経験になると思うので、気になる人は昨今の値上げラッシュの影響が出る前に検討してみてはいかがでしょうか?

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