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Design for the Future Vol.2 - ファッションの持続性をクリエイティブの視点から考える

世界で起きているさまざまな環境問題に対して、私たちの「クリエイティブ」を通してどのように未来を見ているかを紹介する企画「Design for the Future」。東京・ロンドン・ニューヨークのmonopo各オフィスで取り組んだプロジェクトを通して、ブランド・エージェンシー・個人の役割を問いながら、私たちが学んだことを共有していきます。

第2弾はクリエイティブ・プロデューサー、友谷朝子(ともたに・あさこ)による「ファッションの持続性をクリエイティブの視点から考える」です。


⑴ クリエイティブ・エージェンシーとしての役割


「サステナビリティ」はあらゆる業界にとって避けては通れないテーマであり、ファッション業界も例外ではありません。ファストファッションの普及によりトレンドは目まぐるしく移り変わり、大量生産・大量消費がファッションの消費スタイルの基本となりました。その結果、消費者のブランドに対する要求も増すばかり。このようにして生まれてしまった悪循環は、世界中で深刻化している環境問題に多大な影響を与えています。衣類を作るうえで生じる汚染水や温室効果ガスは私たちの生活を脅かし、さらに大量の在庫廃棄が環境に大きな負荷をかけています。また、商品に使う毛皮をとるために動物を殺処分することや、発展途上国の労働者を低賃金で働かせることなども問題視されるようになりました。

このような環境問題や社会問題を考えるとき、私たちにできることがあるのでしょうか。

monopoはエージェンシーとして大きな課題に直面したとき、一個人として対応できる最も現実的な規模にその課題を噛み砕くことが効果的なアクションだと考えます。私たちは、自分たちの信念をブランドと協力しながら作品や商品、そしてサービスを通して細心の注意を払いながら世に伝えていくことをミッションと捉えています。言い換えれば、ファッション業界に紐づく環境問題や社会問題に対する視点も、私たちの働き方に反映されているということなのです。


⑵ グリーンウォッシュからの離脱


ファッション業界におけるサステナビリティは、複雑に絡み合う環境問題と社会問題を孕んでいるため、いかなるブランドにとっても非常に困難な課題となっています。そして、エージェンシー側はサステナビリティに精通し、環境意識の高い世代の消費者にリーチすることを課されています。ブランドが消費者に開示し、保証しなければならないことは増える一方で、やりすぎると「グリーンウォッシュ」と批判されることもあります。

私たちはmonopoとして真摯にこれらの課題に取り組むため、持続可能なファッションに取り組んでいるブランドと協力し、プロジェクトを慎重に選択することを心がけています。最近では、Bコープ認定を取得したファッションブランドCFCLと、2023年春夏パリ・ファッション・ウィークのコレクションでコラボレーションしました。


⑶ CFCL - 現代生活のための衣服


CFCLの表現する現代生活のための衣服は、デザインや機能性が洗練されているだけでなく、責任と透明性をもって作られています。環境への配慮・最適な国産素材の選択・流通経路の透明性・服の機能性、そして時代に左右されないデザインを追求した「現代生活のための衣服」を提案するブランド、CFCL。表面的ではなく、実際に環境問題や社会問題に取り組んでいる企業の一つです。廃棄材料を最低限に削減したニットを基調としたCFCLの商品は、3Dコンピューター・ニッティングで生産されており、そこには人の手いらずで衣服が完成する「ホールガーメント」技術が活かされています。CFCLのデザイナー兼クリエイティブ・ディレクターの高橋悠介さんは、「今のファッション・ウィークは、服を見るだけでなく、そのルックの背景に何があるのか、どこから来ているのかを知るためにある」と語っています。2023年のパリ・ファッションウィークで初めて行われたプレゼンテーションでは、コレクションのクオリティーを追求するだけでなく、未来に向けたビジョンも発表されました。


CFCLとは、"Clothing For Contemporary Life "の略で、最先端のスタイルだけでなく、既存の衣服に革命をもたらす「Knit-ware」という新しい視点を提供しています。monopoはそれらを体現しより多くの人に届けるべく、ブランドの未来を見据えた哲学と意図を調和させたストーリーラインを作成しました。CFCLの服を纏う彫刻のようなモデルやパフォーマーが紡ぎ出すプレゼンテーションの世界観を写すこの動画には、彼らが思い描く未来予想図が表現されています。このコラボレーションムービーは従来のショーレポートではなく、空間演出家ナイル・ケッティング監修のもと、視聴者を近未来的なCFCLの世界に誘い込むような演出がなされています。映像監督のセバスチャン・バイラーは、2つの仮想現実空間の間を編集でダイナミックに行き来させることで作品の世界観を誇張させ、また美術に使われていたペットボトルにも着目することでリサイクルされたポリエステル素材を中心とした衣服の起源を示唆しました。


CFCLのコレクションの全貌と映像はこちらからご覧ください!


⑷ monopoの考え


クリエイターとしての私たちの役割は、ブランドのストーリーを魅力的に伝え、多くの人に届けることです。もちろん、私たちクリエイティブエージェンシーの力だけでは環境問題を改善することはできません。しかし、さまざまなパートナーと協力しながら私たちの信じるより良い未来へと向かえば、解決への大きな一歩になるはずです。monopoは同じ信念を持つパートナーと力を合わせることで、あらゆる業界に新鮮な考えを提示し、影響を及ぼすことができると考えています。クリエイティブエージェンシーとして、クリエイターの仲間に語りかけ、コミュニティとして環境問題に取り組むことで何倍もの影響力を持ったプロジェクトになるはずです。 


monopoのWebサイトでは、CFCLとのコラボレーションの様子や制作へのこだわりを紹介しています。ぜひご覧ください!


■ ライター : クリエイティブ・プロデューサー、友谷朝子(ともたに・あさこ)

支社間で活動するmonopoのクリエイティブプロデューサー。東京オフィスで4年間資生堂などの案件を担当したのち、2020年からはベルリン、ロンドンと拠点をうつす。現在はmonopoの支社間のコラボレーションを促進したり、グローバル案件の牽引を担当している。ビジュアルコミュニケーションを得意とし、映像・スチール・デザイン・音楽を組み合わせた世界観づくりを得意とする。


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