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異端児大学生さんのデビュー戦を分析してみた


プロデビュー戦に負けたということで、分析してみたいとコメントを送らせていただいたら、分析してみてくださいと動画が送られてきたので分析してみました。

この動画の1試合目です🥊

正直プロでやっているというだけで十分すごいのですが、それに敢えてどうこういうのが武術研究家です。「お前はできるんか❗️」と言われるひともおられると思いますが、敢えてですのでご容赦ください。

最初はジャブ(?)か挨拶のために出したところでスタートです。
異端児大学生さんはサウスポースタイル(右手が前)、相手はオーソドックススタイル(左手が前)の試合でした。構えが噛み合っていないので、距離感の難しい試合になります。

相手のミドルキックに対してミドルキックを差し返すというのが試合としては1合目になりました。ミドルキックの差し合い自体はいいのですが、異端児大学生さんのミドルキックに対するディフェンスが少しマズイように感じました。サウスポーとオーソドックスの試合の時はこの受け流すディフェンスの使いどころは多く、それ自体は問題ありません。

手を下げてディフェンスするには距離が少し近いです。相手の右のキックに対して下げていいのは自分の右手ぐらいです。ずっとミドルを見せられてていきなりハイキックが来た時にディフェンスができません。

異端児大学生さんのステップワークと構えは少し落ち着きがなく感じます。ジッとするのはよくないですが、アマで結構やられていたそうですが、デビュー戦で少し浮き足立っていたのかもしれません。相手の方が落ち着いているように思いました。

その後に異端児大学生さんがワン・ツーを出します。これはかなり伸びがありよかったと思います。前で見ると怖さを感じるかもしれません。この伸びは異端児大学生さんのポテンシャルの高さを感じました。走り込みもしっかりしているのでしょうが、バネの質が良さそうです。

ただ、左のストレートが少し雑です。そして、前足の膝が柔らかく使えていたらもっと伸びると思いますし、KOパンチになってくると思います。

1R目で様子見なのもありますが、相手をロープまで押せているので相手はプレッシャーは感じていると思います。

その後、相手が雑なローキックを出してきます。これを異端児大学生さんは距離で躱します。これは良かったと思います。落ち着いています。

ここで異端児大学生さんはローキックを蹴ります。相手は特に反応していませんが、キックはどれも本当によく蹴れていると思います。

次に相手のミドルキックに対してワン・ツーを打ちます。ツーは当たりませんでしたが、ポジショニングとタイミングは非常に良かったと思います。

ただ、ここでも気になるのが左のフックです。大振り過ぎます。威力が出るように思いますが、大振りになると、KOパンチにはなりにくいです。当たる当たらないというのもありますが、当たってもKOになりにくいです。

自分の力にも少し振り回されている印象もあります。バランスや構えにはこだわった方がいいでしょう。

ここで異端児大学生さんがジャブからミドルキック、相手のミドルキックがあり、バランスを崩した軽い左のストレートそして相手のとりあえずの前蹴り。

相手は様子を見ている感じでしょうか。少し消極的で異端児大学生さんが押している印象です。

そして異端児大学生さんのロングのミドルキックが出ます。これは相手も見えているように思いますが、相手の躱し方が少しお粗末です。実際コーナー近くのロープに下がっていますし、下がり方がカウンターを狙える下がり方ではないので、相手に特に怖さは感じません。

相手はとりあえずローキックを出しますが、異端児大学生さんは距離で躱します。試合の最初よりは少し落ち着いてきたでしょうか。異端児大学生さんは距離感が非常にいいです。

異端児大学生さんのインローを出します。ジャブ的に距離を作っている感じでいいと思います。

相手の微妙なステップイン。そしてミドルキック。これを異端児大学生さんは左に回りながら受けます。これは良かったと思います。相手の微妙なステップインの感じから見ても相手はやりにくさを感じていると思います。

異端児大学生さんのジャブ、そしてそれに反応して相手は前手のフックを被せます。これは相手が良かったです。異端児大学生さんもそこまで踏み込んでいなかったのと反応の良さで直撃はせずにかする程度です。

ここまでの戦いでパンチは相手に分があるかなと思いました。幸いサウスポーとオーソドックスという距離の出やすい組み合わせなので、僕が異端児大学生さんならキックにこだわって距離を作るし、相手だったらなんとかパンチの打ち合いに持っていきたいと思うでしょう。

相手がインローを蹴ってきますが、これを異端児大学生さんは手で受けます。ミドルの可能性を見たんだと思うんですが、これは良くないクセです。異端児大学生さんは伝統空手でもしてたのかな?この手のクセは空手家によくあります。

次に相手の前蹴りを距離で切ります。これは良かったです。大きく下がりましたが上体も倒れていませんし、仮に攻め込まれても後手後手になったりはしないでしょう。

相手がハイキック(?)を出しましたが、距離が遠いですね。相手はサウスポーが苦手そうですね。距離が作れていないです。

異端児大学生さんのインロー、カーフのあたりですが、プレッシャーになっています。相手が下がります。

ローキックの蹴り合いになります。これも相手がバランスを崩します。やはりキックは異端児大学生さんの方がいいように見えます。

異端児大学生さんのミドルキックと相手のミドルキック崩れのインローが入ります。ここで異端児大学生さんが少し下がりますが、相手のインローが軽く金的っぽく入ったんじゃないかなと思います。

そして異端児大学生さんのハイキック。これは相手にガードされていますが、相手のキックと違ってちゃんと相手の頭のところまで足が届いています。距離の作り方も異端児大学生さんの方がうまいのではないでしょうか。もしくは相手はサウスポーとの経験が少ないのかもしれません。

そしてやりがちなんですが、試合相手にハイキックされたから自分も出すという行為。相手もハイキックを出してきますが、食うを切ります。やはり、距離感とキックのセンスは異端児大学生さんに軍配でしょう。

次に相手のローキック崩れを落ち着いて距離をとる異端児大学生さん。これも相手は相当距離を遠く感じてやりにくいと思っていると思います。

そして異端児大学生さんのハイキック相手のガードが間に合っていますが、空を切る形になります。しかし、相手のハイキックの空を切る形よりだいぶいいように思います。

異端児大学生さんがローキックを蹴りますが、自分のバランスを崩します。とりあえずこれは距離さえ取れれば問題ないでしょう。

そして、相手のローキックを距離で躱す異端児大学生さん。相手もこれはそこまで意味なかったと思います。お互い様子見でしょう。

異端児大学生さんのジャブジャブハイキックに相手は下がります。相手は下がり方が下手ですね。

相手のミドルキックに異端児大学生さんがミドルキックを蹴り返す。さらに相手がローキックを蹴るが距離で異端児大学生さんが躱す。このやり取りも異端児大学生さんが有利に見えます。

異端児大学生さんのローキックから飛び込みのジャブ。相手はガード。僕が異端児大学生さんならここまで好戦的に戦わずにキックで対応したと思いますが、これ自体は悪いことではありません。

相手のハイキックを異端児大学生さんは距離で躱します。よく見えているでしょう。相手のキックは投げやり過ぎます。サウスポー対策がだいぶ甘いように感じます。

相手の飛び込みジャブに異端児大学生さんの左フックがカウンター気味に入ります。そしてコーナーに追い込みミドルミドルハイのキック。相手がグラついたので試合後半なら追い込んだでしょうが、そこはまだ1R、タイミングだけのパンチだったし、慎重に行ったのでしょう。

異端児大学生さんのワン・ツー。ツーのフックが超大振り。自分でバランスを崩しています。

相手のミドルキックを異端児大学生さんは距離で躱します。
正直相手のキックには全然脅威を感じていなかったでしょう。

そして異端児大学生さんのハイキックで1Rが終わります。

1Rの僕の評価は引き分けか10:9で異端児大学生さんです。マストジャッジシステムなら確実に異端児大学生さんにつけるでしょう。

僕が異端児大学生さんのセコンドならキックで距離を作りながら相手を削る作業を2Rに課します。相手は蹴られると蹴りたくなるみたいだし、お粗末なキックの空振りは体力も削られます。

削る場所は相手の前足です。正直異端児大学生さんが負ける要素があるならパンチの打ち合いです。カーフやインローを蹴るって相手が踏み込みにくくして、戦うと安全に戦えると思います。その中でミドルキックも出して腕自体も削るとよりいいでしょう。

デビュー戦で負けたとのことですが、僕はこの時点で異端児大学生さんの方が優勢でした。正直距離感やバネの良さやポテンシャルを見てもほぼ異端大学生さんが上。相手が勝っているところはパンチぐらいでしょうか。

逆に自分が相手のセコンドならキックに付き合うな。無理矢理でもパンチの打ち合いに持っていけ!という指示をしたでしょう。削られると厄介なので2Rの最初から相手のキックに合わせて踏み込んでパンチしろ!みたいなことを言ったと思います。

2R目が始まりました。相手のミドルキックに異端児大学生さんがジャブを打つという僕のプランの真逆なスタートになりました。

相手のローキックに対してミドルキック。異端児大学生さんのガードの仕方が気になりますが、キックの差し合いは異端児大学生さんに分があるように思います。

そこから異端児大学生さんのハイキックからラッシュが少し入って、相手がローキックしますが、異端児大学生さんが距離で躱します。
このラッシュの時の左大振りのパンチが気になります。危なっかしいです。

異端児大学生さんが少しプレスをかけて相手のミドルキック。これはガード。ここでも受け流す感じの手の使い方をしますが、これぐらいの距離で相手に攻める気がなさそうなのでこれはいいでしょう。

相手のミドルキックに異端児大学生さんのジャブ。これはタイミングも非常に良かったです。そして同じことをして相手はダウン。タイミングだけなのでそこまで相手にダメージはないと思いますが、相手のタイミングを読めていて非常にいいダウンだと思います。

ここで、試合に負けたのは打ち合いで負けたんじゃないかという予感が強くします。パンチをうまく当てれていることから打ち合いになったんじゃないのかな?と。

後出しのたらればの話になるのですが、理想はミドルキックの打ち合いをして、相手がお粗末なミドルキックをしたところで、パンチを合わせるという作業が良かったです。パンチだけで打ち合うのは今回は良くないと僕は考えます。

ダウンから立ち上がった相手はハイキックをしてきますが、しっかり躱します。
やはり距離感は異端児大学生さんがいいと思います。

異端児大学生さんがローキックを出して躱されますが、これは距離を作る上でいい行動です。さらにロングのミドルキックを打とうとしますが、相手は大きく後ろに下がります。相手の距離の取り方がこの時間帯に少し遠くなります。ダウンのダメージが意外とあったのか、攻め方が決まらず攻めあぐねているのか、どちらにしても相手は様子を観ているようです。

相手のハイキックを躱してそこから異端児大学生さんのミドルキックからラッシュ。しかし、踏み込み過ぎてクリンチになってしまいます。コーナーだったのでもう少し落ち着いて、押し込むのではなく自分のいい距離で止まって、ラッシュに行きたかったです。相手が消極的な時間帯だったので、一気に行って良かったかもしれません。こういう時に不用意な攻撃が出るものなので、一気に持っていけた可能性があります。

そして、相手が雑な後ろ回し蹴りからのクリンチ。異端児大学生さんは相手の打ち終わりを狙っていて非常に良かったと思います。結果的に相手が勢いのまま突っ込んできているのでクリンチになりましたが、狙いは非常に良かったです。

相手はバテているのかダウンのダメージがあるのかあまりいい状態ではなさそうです。

相手のローキックを躱し、そこから飛び膝のような形でラッシュに行きます。これは良かったと思います。この時相手は消極的で異端児大学生さんからはいけるんじゃないかという前のめり感が少しあります。

行ける時に行くのは非常にいいことなので、前のめり感は決して悪いことではありません。冷静さだけは頭の片隅に置いておきましょう。

ここで相手のローキックに対して異端児大学生さんは首相撲からのボディへの膝蹴りを狙います。おそらく倒しにかかったんじゃないかなと思います。倒したい気持ちはわかるのですが、首相撲からの膝蹴りという技の選択は少しいただけません。距離がパンチの距離になるからです。

この試合の流れ的にキックで削って相手のお粗末なキックを誘い出してパンチという流れが理想です。ここでの首相撲からの膝蹴りという選択は自分で相手の得意な距離にする行為です。

僕はここで少し「ん?」ってなりました。一見押しているようですが、僕の中で異端児大学生さんの試合だったのに、急に雲行きが怪しくなってきた感じがしました。

相手のローキックを距離で躱す異端児大学生さん。この距離は異端児大学生さんの距離なので、相手はあまり何も考えていないか、休憩したいかだと思います。

相手がミドルの前蹴りからのラッシュ。異端児大学生さんも返しますが、お互い距離でパンチは空振ります。ここでも相手のキックはよく見えていたのではないかなと思います。

そして相手のミドルキックに対してジャブで攻め込もうとする異端児大学生さん。相手のミドルキックがストッピングのように入ってバランスを崩します。しかし距離的にチャンスと見た異端児大学生さんと相手がパンチの打ち合いになります。ここで、左のパンチの差し合いで負けてしまいます。さらに右の返しをもらってしまいました。

僕としてはそれ見たことか!といった感じです。

構えの関係上相手は左が前手で異端児大学生さんの左が後手というのもありましたが、左の大振りのせいもあって相手のパンチの方が先に当たってしまったです。

これは大きいダメージになってしまいました。すぐに立ち上がってはいるものの足にきています。相手はバテていましたが、対戦相手のこういう姿を見ると息を吹き返すのがファイターというものです。

このときニュートラルコーナーに戻っている相手を見ると相当バテています。つまり、カウントが終わり次第ラッシュをかけてくるでしょう。相手にとっては正念場です。

ここからは相手のミドルキックからごちゃごちゃとパンチの応酬になります。完全に相手のペースです。僕の分析では相手の活路は殴り合いにしかなかったのに、そこまで辿り着いたのです。これは相手もプロということでしょう。流石です。

足にきているのもあってここのパンチの応酬で異端児大学生さんは負けてしまいます。ダウンの感じを見てももう少しやれそうかなとも思いましたが、セコンドがタオルを投げて試合終了になりました。

若いのもあるし、まだ先があることなどを考えての判断でしょう。ずっと練習を見ていたセコンドの判断です。おそらく、その見切りに間違いはないのかなと思います。

結果的には負けてしまいましたが、僕は異端児大学生さんが相手に勝ちを譲るような形になってしまったという印象です。僕の感覚でいうと異端児大学生さんとこの相手は10戦したら7か8は異端児大学生さんが勝つと思います。残りの2か3を今回に持ってきた相手を褒めるべきかもしれません。正直相手は少ないチャンスをものにしたと思います。逆に言うと異端児大学生さんも大きいミスを何回もしたという印象はありません。

僕が異端児大学生さんのトレーナーなら今後は構えとステップワークをめっちゃ練習させます。構えに関してはもう少しガードをあげること、これは大きいパンチをもらわないと言う意味より、重心をあげて持ち前のダッシュ力を強化するためです。いつもどおりの状態とガードをあげての状態とワン・ツー・スリーぐらいのコンビネーションをしてみてください。前に進む量が大きくなっているはずです。

あとは前足の膝の使い方が少し硬いので、そこを柔らかく使うとコンビネーションがスムーズになり、バランスも良くなると思います。

そして、攻め気が強くパンチで行こうとしている時に少し猫背になるクセがあります。これはよくありません。胸を張りましょう。

あと一番ダメなのは左の大振りのパンチです。あれはいただけません。軸をしっかり持って打てばシャープな振りのフックの方がKOできます。もしかしたらアマの時はKOパンチだったのかもしれませんが、プロでも上の方になると通用しなくなると思います。今回は数は少ないミスでしたが、試合を決める形になりました。プロの厳しさを僕も感じた次第です。

左のストレートとフックは鏡の前で延々と練習した方がいいでしょう。
前足のところに軸を持ってきて、膝関節、股関節を意識しながら軌道を確認しつつ、スムーズに出せるように心がけましょう。前膝を柔らかく使うことをステップワークでもワン・ツーでも意識してください。

僕が観た異端児大学生さんの評価は非常に高いです。根本的なバネが非常にいいですし、距離感や攻めるタイミングのセンスなんかも非常にいいです。むしろこのあたりを教えることが難しいです。天性のものでしょう。

僕が異端児大学生さんのトレーナーなら異端児大学生さんの基本戦術はアウトボックスで、キックでロングの距離を作りながら、相手が届かない距離で不用意なキックを出してきたりとかしたときに一気に持ち前のダッシュ力でカウンターを取りつつ一気に攻めると言うスタイルです。

そのためにステップワークとポジショニングを練習することをおすすめします。最初のダウンの時に左のパンチの差し合いに負けたのも、ポジショニングをもう少しズラすだけで結果は変わったと思います。自分の左ストレートは正面から相手を捉えるけど、相手の正面には立たないような角度です。

このポジショニングは那須川天心選手がめちゃくちゃ上手いですね。あとはボクシングのゴールデンレフトの山中選手や、井上尚弥選手なんかもポジショニングがいいですね。そこにいる限り相手のパンチは当たらないし、自分のいいパンチだけ当たるのです。

異端児大学生さんは距離感がいいので、距離感とポジショニングにはこだわったほうがいいかと思います。

また試合があるようなら応援しています。
次の対戦相手の試合の動画があれば、徹底解剖しますよ😄

他の方も自分でも対戦相手でも動画を見せていただければ、分析しますのでよろしくお願いいたします。

モノノフ

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