清水希容選手の会見での涙の美しさが圧倒的だった件

僕はずっと空手道競技を応援してきた。
それは自分が空手や空手にまつわる先輩や後輩のおかげで社会復帰できたからだ。

ずっと大会ドクターをしてきたし、
今回オリンピックでもフィールドドクターとして参加していた。
ちなみに出動はありませんでした。

ただ、テレビには映らない所を見たので、
許される範囲でお話させていただこうと思う。

今回取り上げさせていただくのは清水希容選手。

かっこよく、美しいと言われる選手だ。

今は美人とかブサイクとか言ってはいけない時代だが、
僕は意味があることだと思うので、
あえて見た目には触れていきたいと思う。

僕は決勝戦の直前に通路で二人の選手を見た。
日本代表の清水希容選手とスペイン代表のサンドラサンチェス選手だ。

世界戦、各国の代表の緊張感がある。

直前まで練習をするサンドラサンチェス選手に、
直前に、監督の指示を聞き、かつ集中力を高める清水希容選手。

サンドラサンチェス選手の練習の音は狭い通路に響き渡る。

動きのキレから出る道着の音だが、
ムチを打っているようなキレのある音だ。

そして、清水希容選手の顔をふと見た時、
ガチガチの顔をしていた。

僕には非常に緊張しているように見えた。
世界戦を何回も勝っているひとでもオリンピックは緊張するものなのか、
それともいつも直前はガチガチに緊張しているひとで、
コートに立つとスイッチの入る人なのかそれは僕には分からない。

僕は『これはサンドラサンチェス選手が勝つ可能性があるのでは?』
と思っていた。

わかりやすいパワーやキレはサンドラサンチェス選手、
空手の動きというものの本質を理解して身体を使えていて、
しなやかさなどでは清水希容選手に分があるかなというのが僕の見立てだ。

実際コート横で見た決勝戦の印象もそうだった。
空手らしい身体を使えているのは清水希容選手だと思ったし、
パワーに関してはサンドラサンチェス選手だと感じた。

もう一つ現場で感じたことを書く。

家に帰ってから録画していた演舞を見たが、
テレビではそんなことは感じなかった。

何を感じたかというと、
サンドラサンチェス選手は自己ベストの演舞をしているように見えたのだ。

それに対して清水希容選手は、
決勝の演舞が、自己ベストだったかというと僕は疑問が残ると思う。

いつもはもう少しいい演舞をしているように感じたのだ。

全くの個人的な感想なので、気にしなくていいのだが、
少なくとも僕はそう感じた。

結果発表のとき、僕の和まりは空手をずっと見てきた人ばかりなので、
「清水希容選手だろ。」、「清水希容選手だな。」という声が聞こえていた。

その中で僕は心の中で『サンドラサンチェス選手の可能性あるぞ、、、』と思っていた。海外のジャッジの見るわかりやすい部分ではサンドラサンチェス選手が上回っている可能性を見たからだ。

そして結果は

サンドラサンチェス選手金メダル🥇
清水希容選手銀メダル🥈

という結果だった。

両名とも厳しい練習をしてきた結果だ。
何もいうことはない。

しかし、勝者の影に敗者はいつも涙しているのだ。

このためだけに努力をしてきて、結果が伴わないということがあるのだ。
その努力が無駄だとは思わない。
しかし、空手道競技はパリオリンピック種目から外れているのだ。

オリンピックの金メダルを獲るという夢は潰えたのだ。

その試合直後の会見で清水希容選手は、
最初は試合開催についての感謝や、予選のようにもっと自信を持ってできたらよかったかなと言っていた。

途中、「これまでのところですごくしんどかったので、、、」

というところで涙が溢れた。

そこには何年分だろうか、苦労が滲んでいた。

「悔しいです。」

その言葉にいろいろなものが詰まっていた。
僕なんかでは量り知ることのできないものだと思う。

その後の受け答えも涙しながらもハキハキと答える清水希容選手に、
精神的な美しさも感じた。

きっと空手界のファンを多く産んだと思う。

そしてそのファンのうちの誰かが、
また空手界を盛り上げてくれるタイミングが来るのではないだろうか。

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