見出し画像

①生活保護業務の肥大化…「歩く生活保護手帳」がいないと回らない!?

現役生活保護ケースワーカーのものかきもどきです(産休中)。

実は出産予定日を3日後に控えているのですが、なかなか陣痛が来ず…陣痛が来ない中で色々と歩き回っていると、より自分が(公務員として、ケースワーカーとして)どうしていくべきか、考えてしまいますね…。

前回の記事で、生活保護行政が抱える4つの問題点に名前をつけました。

今日はその内の①生活保護業務の肥大化について、もう少し思うところを詳しく書いてみたいと思います。

生活保護マニュアルの分厚さは食パン1欣分!?どんどん追加される通知やマニュアル…

生活保護ケースワーカーに配属されて一番に職場で支給されるのが、「生活保護手帳」「生活保護手帳別冊問答集」というものです。
これらは全国共通で、生活保護法そのものや地域ごとの保護費の支給額に加え、厚生労働省からの関連法規や関連通知を全てまとめたものです。
ずっっしりとした分厚さ、重さがあります。職場から持って帰ってきて写真に撮ればよかった…。

私が思うこの生活保護手帳の怖いところは、毎年度、新しいものが紙で配られる、というところです(笑)というのも、毎年生活保護の関連通知というのは厚労省からどんどん出てくるので、それを追加していかなければならないからです。
もちろん、古い記述が削除されることもありますが、私の感覚では毎年追加だらけです。つまり、このままでは∞にどんどん分厚くなっていくということになります。

それに加えて、都道府県や市、独自で問答集を出している自治体もあれば、医療扶助マニュアルや介護扶助マニュアルといった分野に特化したマニュアルも並列してあります。

これらのマニュアルを全て重ねると、本当に食パン一斤分くらいの分厚さはあります。これはマジで。それぞれが数百ページに及ぶようなものですから。

怖いことに、職場の中には、これらのマニュアルがほぼ頭の中に入っている、「歩く生活保護手帳」と呼ばれるようなヲタ…いえ、大先輩が1人か2人います。その人たちは、それを頭に叩き込んだ上で仕事をして、他の人に助言もして、また新しい関連通知が来れば必ずチェックして、自分の頭の中の生活保護手帳を日々更新されているわけです。

私なんかは現場6年ですから、まだまだ未熟者ですが、ただ、ある程度「この関連するテーマの記述はこの辺りの章に書いてあったな…」とあたりをつけてページをめくることくらいはできます。それだけでも、職場では正直、重宝される存在でした。

しかし!!この「歩く生活保護手帳」の人がいないと、生活保護行政がまともに機能しない、というのは大問題ではないでしょうか??


本来、行政というのは、法律法令をもとに、常に正しい答えを出すのが当たり前である訳です。「〇〇という事例⇒△△という答え」であるのは、ケースワーカーによって差が存在してはいけません。

生活保護ケースワーカーは人間を相手にしている訳なので、もちろん柔軟性は必要ですが、正直職場にいると、ケースワーカーによって答えが違う、というのはかなり見かける場面です。
その人によっての振れ幅が大きくなってしまう原因が、この生活保護手帳をはじめとしたマニュアルが膨大且つ複雑すぎること。ひいては、生活保護業務の肥大化、にあるのではないかと思っています。

普通に3年ごとの異動で生活保護のケースワーカーになる人が、これらの通知を全て頭に入れる、というのはとうてい無理です。頭に入れなくても、できる仕組みを考えないと。
確かに「歩く生活保護手帳」の人に聞けば、ある程度正しいと思われる答えが返ってきますが、それを一回一回やるわけにはいきません。ましてや、そのレベルの人が職場にいなかったらどうするのか。

書籍として、「生活保護手帳の読み方・使い方(よくわかる生活保護ガイドブック)」というものが売られていますが、そもそもそれを読まないと生活保護手帳が読めない、というのはどういうことなのか。マニュアルのマニュアルがある、なんてちょっとおかしいと思います…


「歩く生活保護手帳」の人がいなくても、皆が(ある程度)同じ水準で仕事をするためにはどうすればよいのか、これを次の記事で考えたいと思います。
キーワードはやはり、電子化、AI、などになってくるかと思いますが…(私の関心ごとでもあり)

私のとにかく問題意識は、「このままでは生活保護行政がダメになってしまう」という一点に尽きますので、自分の問題意識の整理のために、細々と続けていきますね。

とりあえず、次に職場に顔を出すときがあれば、古い生活保護手帳と問答集、こっそりもらってこようっと…(2023年度版が出れば、2022年度版は廃棄になるはずなので…やれやれ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?