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エッセイあそび

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 当たり前の話だが、小学校には同じ建物の中に、一年生と六年生がいる。六歳から十二歳。急速な成長を伴う期間を一つの建物で過ごすのだ。一年生と六年生の平均身長差はおよそ30cmである。一年で5cm身長が伸びる、というのは改めて考えるとなかなか劇的だ。

 高学年になってから、戯れに、すでに下級生が下校した教室に入ってみたことがある。同じ建物で、同じ教室で、同じ机。けれど驚くほど低くて、足が窮屈だった。

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机

机の上に花一輪。
そんな眺めが好きだ。
普段から花を買う習慣はあまりないけれど、特別な時に花をもらったりすると必ず机の上に飾る。
日常に少しだけいつもと違う彩りを。
そんな眺めが好きなのだ。

買いたい一輪挿しがある。
http://www.oodesign.jp/#!ripple/c1d7i
水面に波紋を描きながら自立する一輪の花。
とてもシンプルでとても機能的なこの一輪挿しを見つけた時、ア

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私は、机が嫌いでした。
もっと端的に言うと
勉強が嫌いでした。

机にじっとして勉強することが苦痛で
親愛なる友達と遊びたかったのです。

机に着いて
漢字の書き取りをして
英語の書き取りをして
歴史を知り
科学を知り
数式を解いて
一体なんの意味があるのだと
心底そう思ったのです

私は勉強をサボるようになりました。
そうすると母に叱られたのでした。

そんな日々が続き
少しする

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机、いわゆるひとつのデスク。

机の上に遙かなる山嶺が見える。
夢でも、幻でも、蜃気楼でもない。
勇敢なクライマー達の挑戦を、ことごとく撥ね退けてきた机上にそびえる高峰“Mountain of books(本の山)”である。

あぁ、みたまえ、あの急峻なる斜面を。
麓の段階では整然と積まれた本たちであるが、中腹からはタテヨコを同じ向きに揃えることも諦め、側面へ出っ張ったり引っ込んだり。
それゆえに傾きかけた頂を、隣の峰々がかろう

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「机」

 名は体を表す、なんて言葉がある。それって当たり前じゃないか。物より先に名前だけが存在するなんてこと、そうそうあるわけないんだから。水っぽいから「みず」って呼びはじめたんだし、山にあるような大きな石だったから「岩」って名付けたんだろう。後出しじゃんけんで、それっぽい呼び名を付けたって、ただそれだけのこと。

 でも、ふと思うんだ。それなのに、なぜこんなに、ぴったりなものと、そうじゃないものがあるん

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エッセイ「机」

 思い出せないのだ。
 確かにわたしは、高校までは、木製のそれを使ってきたはずなのに。

 いつからわたしは、机にラクガキをしなくなったんだっけ。

 小学生の頃のそれは、なんだかやけに賑やかだったような気がする。
 ラクガキなんてもんじゃない。
 消しゴムなんかでは消えない、コンパスの針やシャープペンの先などで彫られたと思われる無数の傷跡。自分ではない誰か、過去、色々な人がその席に座り、色々な人

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お祭り

「お祭り」

              鹿水 美優

 僕にとって、お祭りとは何だったか。

想いを巡らせてみようと思う。浴衣、花火、お神輿、いろいろなものがあるが、やはり一番なじみ深いのは、屋台であろう。

 僕がいつもよく夏祭り等で食べる定番のものがいくつかある。例えば「わたあめ」である。原価がどうとかは置いておいて、やはり、その雰囲気で食べるから美味しいのだろう。
 割りばしについた雲みた

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「通勤」に逢いたい。

『用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。』(内田百閒「特別阿房列車」より抜粋)

汽車というものは、用時抜きで乗りたくなる乗り物である。すらりと伸びた線路上を、ゆらゆら心地良く揺られながらどこまでも。車窓からの風景は日本の風光明媚を四季折々に伝えてくれるし、時々流れる車内アナウンスや切符を確認しにくる車掌さんの一挙手

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なつかしい味

まんまるのきつね色が、
まんまるの黒い鍋に浮かんで「ぱちぱち」「じゅわじゅわ」
ひっくり返すごとに、色を深めて。
ふと、夜に浮かぶお月さまみたいだと思った。泡が弾ける賑やかな夜だ。

コロッケは、父と母の合作料理だと思っている。

たねづくりは母の分担。彼女のお芋のつぶし方は絶妙。
つぶしすぎず、程よくかたさを残して。
一緒に入ってる、玉ねぎ、人参、お肉も甘くておいしいよね。

油で揚げるのは父の

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自転車

 おおよそ「アウトドア」というものに最もそぐわない人間が自転車というテーマを与えられてエッセイを書こうというのだから、多少軸がずれたり偏屈な文章になってしまうことを許してもらいたい。なにせここ半年と言わず、自転車になど乗った覚えも無いのだ。だから最初に断わっておくが、私は自転車の楽しさやその種類について述べたりはしない。悪しからず、ご了承願いたい。

 さて、書き出すにあたって人生の中で一番自転車

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プライド

 誇り高い、というととても立派な感じがするのに、プライドが高い、というと、扱いが面倒くさそうな印象がある。
 プライドを言い換えるとなんだろう。自尊心? 自信? 自負心? 自意識?
 プライドは「自分」を認めて、意識しなければ抱くことは出来ないものなのだろう。
 プライドは難しい。自身と向き合わなければ作れないが、自分を正確に測れるだけのモノサシが無ければ滑稽だ。
 けれどだからこそ、プライドを持

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ビンの中身

ビンの中身

機密性の高いビン類はちょっとした一品作りに便利だ。
材料を入れて冷蔵庫に入れておくだけ。
それだけで美味しい物が出来るんだから面倒くさがりな私にとっては救世主みたいな存在。
いつもお世話になっております、本当にありがとうございます。

最初はやっぱり漬物かな。
薄切りにしたかぶに味噌を薄く重ねる。
その上にまたかぶ、そして味噌。
これを繰り返して半日冷蔵庫に入れておくとかぶの甘み引き立つ味噌漬

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