映画『風立ちぬ』と空飛ぶ円盤

 6月24日は空飛ぶ円盤の日である。1947年のこの日、ケネス・アーノルドという実業家がワシントン州レーニア山上空で謎の飛行物体を目撃、新聞記者に説明するのに、水面に投げた受け皿(ソーサー)という例えを使った事から、「フライング・ソーサー」、「フライング・ディスク」という言葉が生まれた。
 日本ではこれを「空飛ぶ円盤」と呼んだ。今に至るUFO(未確認飛行物体)に関する議論の発端とされる。
 よくよく調べると、「謎の飛行物体」は有史以来存在した事が分かったので、「これが世界最初のUFO」という訳ではない。(映画『風立ちぬ』の冒頭に出てきたような謎の飛行船の話もある)

 一体その正体は何か、米軍の秘密兵器か、誰かの発明品か、ドイツや日本の残党か、ソ連からのスパイか、あるいは、それ以外に何か正体があるのか、この時巻き起こった議論は決着を見ず、あやふやなままである。

 さて、話は変わって、スタジオジブリの映画『風立ちぬ』である。この映画には2人の日本人航空技術者「二郎」と「本庄」が登場する。
 この2人のモデルとされるのが、航空機の設計者の堀越二郎と本庄季郎である。

 この2人はそれぞれ、日本を代表する航空技士だった事からと思われるが、「空飛ぶ円盤騒ぎ」が起こった際に雑誌に記事を寄稿している。

 堀越二郎の記事が載ったのが少年文化社の『ロケット』1950年8月号である。
 この雑誌は工作好きな少年向けの雑誌であり、特に飛行機に力を入れている。
 木を削って作る「ソリッドモデル」や簡単なリモートコントロールができる「Uコン」、ゴムを巻いて飛ばす「ライトプレーン」(『となりのトトロ』でカンタが作っているやつ)、当時最新の旅客機「ブリストル・ブラバゾン」の紹介記事等がある。
 飛行機だけではなく、自動車の記事や、今に続く鉄道模型雑誌『鉄道模型趣味』の広告も載っている。

 堀越二郎は「H・R・K」という筆名を用いて書いており、過去の変わり種航空機の紹介や最新のジェット機の動向等から、目撃されたものは何らかの誤認で、「実在の空飛ぶ円盤」の可能性は無さそうだが、円盤形自力推進爆弾が開発されている可能性はあるかもしれないとしている。

 しかし、この当時既に大型全翼機(YB-49は1948年初飛行だが)や無人機の登場を予測していた堀越は、さすがだと感じる。

 なお、以前、雑誌『ムー』には、この原稿には失われた部分があり、そこに、既にこの当時に堀越が「宇宙人説」を語っていたという想像が載った事があるが、私が読んだ限りはそのような箇所は無かった。

 一方の本庄季郎は『科学朝日』1950年6月号に寄稿し、自分ならば「空飛ぶ円盤」をどのように「設計」するかについて書いている。

 本庄の設計は、固定翼航空機とヘリコプターのハイブリッドであり、現在に至るまでジェット機の高速性能とヘリコプターの垂直上昇を兼ね備えた複合ヘリコプターの開発は続けられている事から、こちらも将来を予測した話となっている。

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