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monogatari9
2024年7月17日 06:57
壁に掛けられた奇妙な絵。 一メートル四方くらいの、この小さな部屋には不釣り合いな大きな絵だった。閉じ込められた部屋という閉鎖空間。その空間をさらに重苦しく、そして息苦しいものにしている。 真尋は顔を絵に近づけた。そして細部を観察していく。 その絵は山脈と森をバックにして、手前側に塔のような奇妙な建物が描かれている。全体として灰色と黒を基調とした陰鬱な絵だった。その建物にはいくつかの窓があっ
2024年7月16日 07:07
真尋はドアに耳をつける。 ドアの向こう側から、小さな音でもいいので何かしらの物音がしないかと聞き耳を立てる。だけど、そのドアを介してどんな音も聞こえては来なかった。ここまで無音だということは、かなりの防音対応が施されているのかもしれない。外の音が自分に聞こえないようにするためなのか、あるいは、自分の叫び声が外に聞こえないようにするためなのか。どちらにせよ、真尋にとって希望の持てる状況では無かっ
2024年7月15日 07:23
他の可能性……。 例えば、真尋の記憶にある“昨日”、親友の真由美と一緒に大学から帰ってきた“昨日”が、実は昨日のことではないということはないのか。 自分の記憶にある“昨日”と今との間には一年以上の時間の隔たりがあって、自分はその間の記憶を何らかの理由で無くしただけではないのか。 だけど、もしそうだとしたら、自分の記憶にある“昨日”着ていた服装と、今の自分の服装が全く同じ点に矛盾があった。そ
2024年7月14日 07:36
真尋は、机に置かれた一枚の紙を手にとった。 何の変哲もないコピー用紙のような紙に文字が印刷されている。紙を確認してみたが他に怪しいところはなく、別の文字の書き込みも見つからない。「真実は、いつでもすぐそばにある」 声に出してその一文を読んでみる。 実際に言葉にすることによって、そこに何かの答えが見つかることを期待していた。だけど、真尋の声は閉ざされた部屋に虚しく響くだけで、何の答えも与え
2024年7月13日 06:39
真尋の呟きに、誰も答えてはくれなかった。 ひどく頭が痛む。昨夜、自宅に帰った後のことを思い出そうとすると、その頭痛が邪魔をする。うまく思い出せない。ただ時間が経つにつれて、少しずつ思考がはっきりとしてくる。そして、それに伴って、自分を今取り巻く状況の異常さが徐々に深刻なものとして真尋の胸に迫ってきた。昨夜自分に何かが起きたのは確かだった。「まず、今の状況を整理してみよう」 真尋は自分に言い
2024年7月12日 07:16
あらすじ一人の女性が目覚めると、見知らぬ部屋に閉じ込められていた。窓もドアも開かず、外との連絡も取れない。部屋には何もない、ただ壁に一つだけ奇妙な絵が飾られている。1 佐藤真尋が眠りから目を覚ますと、自分の顔を蛍光灯の光が照らしていることにまず気づいた。 あれ、昨夜、電気消し忘れたんだっけ? そんなことを思いながら大きく伸びをする。次に気づいたのは、自分がベッドに寝ていないとい