あいしてるは最初に言うのよ。
五月。ある日曜の昼下がり。
僕の大好きな彼女が、ふるさと北海道からやって来た。僕はこの日の為に、辛い仕事も頑張って来た。1年振りに彼女に会える!彼女の笑顔を思い出すだけでワクワク、居ても立ってもいられなかった。
彼女に会う前に、僕は渋谷駅に降り立った。何かプレゼントを渡そうとヒカリエに立ち寄った。渋谷で再会する記念に「渋谷のはちみつ」を使ったクッキーをひとつ買った。本当はあれもこれも買いたかったが、荷物の多い彼女に重い物を持たせる訳には行かない。彼女の好きそうな巾着袋に包んでもらった。手渡した時の彼女の笑顔を想像して、またニヤ付く僕。
待ち合わせまで時間がある。余裕だ。と思ったが、甘かった。2駅向こうまで電車に乗ったが、トラブルでストップ!待てども待てども電車は一向に動かない。閉じ込められた車内で約15分。彼女はもうあの場所で待っているに違いない。ごめんよ、ごめんよ・・・
結局、待ち合わせ時間ぴったりに駅到着。約束の場所まで歩いて5分。急いでいる時に限って信号に引っかかる。あーもう!外気温は約35℃。ハンカチタオルで額の汗を拭う。この日、北海道佐呂間町は39℃超。彼女は夏を連れて来たようだ。
さぁ、この扉の向こうに彼女がいる。
分厚い防音扉のノブに両手を掛け、
思いっ切りグイと押し開けた。。。
シーンと静まり返ったホール。ステージ上には3人の女性アーティストがオープニングのご挨拶。彼女は大きなアコーディオンを抱え、真ん中に座っていた。そう、彼女はアコーディオン奏者でボーカリスト。名は「マルカート」 これはユニット名。アーティスト名は「タテヤマユキ」。
ユキさん、あいしてる。
ライブタイトル
「あいしてるは最初に言うのよ。vol3」
ジョイントライブなので、彼女は2番目の出演だった。最初に「あなたに会えて嬉しい」と歌ってくれた(あ〜これ何て言うタイトルだっけ)。僕も君に会えて嬉しいよ、と心の中でハモる。彼女の歌声は透明感に溢れ、僕の疲れを癒してくれる。
「いつもあなたとふたり」
目と目が逢う。ドキッと鼓動が跳ねる。不意にジンジャーエールをゴクッと飲み込み、辛さで咽せそうになった。彼女が満面の笑みで、ニコッ♪(笑ってくれた!)僕も笑顔を返す。彼女が頷く。僕も頷く(遅れてゴメンね)。例え、オーディエンス全員が「私に笑ってくれたのよ」と主張しても、この一瞬は譲らないよ。僕だけのものさ!と勝手に思い込む、めでたい僕。
「銀の舟」
心ときはなって~♪
(解き放つよ~)
はばたけ!僕!!
続くフランス民謡、ミュゼットを演奏。アコーディオン・ソロが素晴らしく、柔らかな音色がホール全体に響き渡る。彼女が美しいのは言うまでもないが、アコーディオンもまた美しく、鍵盤の白い貝が青いスポットライトに照らされてキラキラと光る。まるで海のよう、、、思わず彼女の手元に見惚れてしまった僕。
「メニルモンタン」
なんと!フランス語で歌ってくれた。これを歌うために、彼女はフランス語学校へ通ったと言う。努力家だ。見事な発音と演奏を披露し、場内はアッと言う間に大きな拍手に包まれた。ブラボー!あ、イタリア語か。Très bien!と言うべきか。いや、とにかく素晴らしい!僕も盛大な拍手を送り続けた。
「今日からここで」(新曲)
彼女が、ふるさと北海道から上京し、プロデビューを果たし、しばらくしてUターンを決意し、北海道でまた活躍するまでの心情を素直に歌った曲。この歌詞を書くまでに10年かかった、と打ち明けてくれた。
僕もそうさ。
北海道を離れる時の不安と期待、たったひとり東京で闘った孤独な日々、Uターンを決意するまでの悔しさと葛藤、ふるさとに戻った時の複雑な心情は僕の人生と重なり過ぎて、涙を堪えるのが痛いほど辛かった。でも、北海道に帰っても、東京に戻っても「おかえり」と言ってくれる人がいたからゼロから頑張れた。。。
きっと君もそうだったんだね。
「豹、走る」(ラストナンバー)
走り続けろー!!
おーーーー!!!
背中を押してもらったよ
ありがとう、ユキさん
あいしてる
最後にも言うのよ。(笑)
マルカート (タテヤマユキ)さん公式サイト
大変僭越ですが、タテヤマユキさんとの出会いは、YouTube限定ラジオ番組「Monochrome Rainbow」2018年8月5日放送回 25:03〜詳しくお話しております。ユキさんが所属するユニット「ロケット姉妹」のナンバーもご紹介させて頂いてます。(ユキさん&姉様、ありがとうございます!)
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