Stammering Pride and Prejudice Difference not Defect(吃ることへの誇りと先入観 欠点ではなく違い)を読んでみた
本記事は、Stammering Pride and Prejudice Difference not Defect(吃ることへの誇りと先入観 欠点ではなく違い)という吃音当事者のアンソロジーを読み、その感想を書き連ねていくものだ。
※1 本書は英語のため、分かりやすくなるように日本語訳を入れいてる。今回は翻訳にDeepLを使用した。そのため直訳調になり、不自然な訳もあると思われるが、その点についてはご理解いただきたい。
※2 今回本書を紹介するにあたって、J&R Pressの方から許可をいただいております。
最初に断っておくと、この本は吃音を社会モデルの観点で扱っている。そのため、吃音治療についてはあまり触れておらず、吃音治療を求めて読まれる方の期待には答えられないだろう。しかし、吃音を祝福し、吃音があることに誇りを持つ方法を示してくれる可能性はあると思う。
まず始めに「社会モデル」について自分の理解の範疇で説明すると、
社会モデルは、医学モデルと対極の位置にある概念です。医学モデルでは、病気のある人、障害のある人を患者として扱い、その病気や障害を治療していく概念です。対して社会モデルは、病気や障害のある人自体には問題はなく、その人達が感じる不自由や生きにくさは個人ではなく社会に由来するものとして捉える概念で、個人ではなく社会を変えていくことに視点を置いています。
話は逸れますが、この「社会モデル」は、本書によるとMike Oliver(マイク・オリバー)という方が提唱した概念で、正しくはthe social model of disability(障害の社会モデル)というそうです。マイク・オリバーは、世界で初めてdisability studies(障害学)という学問を作った方で、マイクによる障害の社会モデルは様々な障害に応用されているそうです。
(色々書きましたが、僕は学生時代工学部にいた人間ですので詳しいことは分かりませんm(_ _)m 気になった方は、ご自身でお調べください。)
この本は全22章で、各章は各吃音当事者による文章で構成されている。各章の著者は、専門家から一般の吃音の方まで多岐に渡っており、様々な目線で描かれている。
この本の特徴として、Stammering Pride(吃ることへの誇り)と題名に記されている通り、著者はバラバラでもいかにして吃音があることに誇りをもつのか、誇りをもてるようになっていったのかについて描かれている。
一方で、吃音のある人が社会から受けている偏見、差別に対しても真剣に向き合っている。また、職場でも吃音のある人が安心して働けるために、団体を立ち上げて戦う人たちのお話も出てくる。
本書の内容は、以下の通りである。
1. Honest Speech(誠実なスピーチ)
Erin Schick(エリン・シック)
2. An introduction to stuttering and disability theory: Misfits in meaning(吃音と障害理論の紹介。意義上の外れ値)
Joshua St. Pierre(ジョシュア・サン・ピエール)
3. Why stutter more?(なぜもっと吃るのか?)
Emma Alpern(エマ・アルペン)
4. Scary canary: Difference, vulnerability and letting go of struggle(怯えるカナリヤ。違い、脆弱性、そして藻搔きを手放すこと)
Katy Bailey(ケイティ・ベイリー)
5. Time-bound(時間的制約)
Nisar Bostan(ニサール・ボスタン)
6. People with stigma: A reflection on stigma in society and the person who stammers(スティグマのある人。社会におけるスティグマと吃音のある人についての考察)
Patrick Campbell(パトリック・キャンベル)
7. The big secret(最大の秘密)
Wendy Ronaldson(ウェンディ・ロナルドソン)
8. Keep kids talking: The impact of shame for children who stutter – A parent’s perspective(子どもたちが話し続けられるように。 吃音のある子どもに対する羞恥心の影響 - 親の視点からの考察)
Dori Holte(ドリ・ホルテ)
9. On stuttering activism and resistance(吃音の活動と抵抗について)Zahari Richter(ザハリ・リヒター)
10. Coming together in collaboration: Elephants, canyons and umbrellas in the stammering community(コラボレーションで一つになる。吃音コミュニティにおける象、深い割れ目、傘の存在)
Ann Packman, Grant Meredith and Patrick Campbell(アン・パックマン、グラント・メレディス、パトリック・キャンベル)
11. Making change happen:How can we work together to decrease stigma(変化を起こす。スティグマを減らすためにどう協力するか)
Michael Boyle(マイケル・ボイル)
12. A tale of two therapists(2人のセラピストの物語)
Rachel Everard and Carolyn Cheasman(レイチェル・エベラード、キャロリン・チースマン)
13. Transforming the stuttering iceberg(吃音の氷山を変える)
Nina G(ニーナ・G)
14. One story at a time: Using a narrative approach to self-therapy(1つの物語を大切に。 ナラティブ・アプローチを用いたセルフセラピー)
Josh Walker(ジョッシュ・ウォーカー)
15. Bella's secret(ベラの秘密)
Sarah Wilkinson(サラ・ウィルキンソン)
16. Looking back, looking forward(振り返って、前を向いて)
Sam Simpson(サム・シンプソン)
17. Finding our voices at work(職場で吃りを)
Iain Wilkie(イアン・ウィルキー)
18. Fighting stigma against stammering:The Defence Stammering Network(吃音に対するスティグマとの戦い。吃音防衛ネットワーク)
Walter Scott(ウォルター・スコット)
19. Capturing the stammering aesthetic(吃音の美学を追求する)
Alda Villiljós , Sigríður Fossberg Thorlacius, Sveinn Snær Kristjánsson and Málbjörg(アルダ・ヴィリヨス、シグリドゥル・フォスバーグ・ソーラシウス、スヴェイン・スナー・クリスティアンソン、マルビョルグ)
20. A journey in eight events(8つのイベントの旅)
Elizabeth Wislar(エリザベス・ウィスラー)
21. It's complicated(吃音は複雑)
Kristel Kubart(クリステル・クバート)
22. Stutter naked(裸の吃音)
Christopher Constantino(クリストファー・コンスタンティーノ)
今後は章ごとに(順番はランダム)感想を綴っていきます。ただ、本業の仕事もあるので時間のあるときに、不定期で更新していく予定です。
最後に、この本を共有したいと思ったきっかけとなるザハリ・リヒターの引用文を載せます。
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