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大洪水が起こる前に

大粒の雨が激しく降り続く中に立っていると、視界は遮られ、首を垂れ、背も丸まり、周囲の音も何も聞こえない状態になる。
ただ、ザーーーっという雨音だけに支配されて、この世で自分だけなんじゃないかって思う。

屋根のある所へ避難すると、今まで自分に直接当たっていた雨を、屋根が受け止めてくれるおかげで、寸分先も見えなかった視界は広がり、音は自分から少し遠ざかり、屋根にぶつかる雨音だけになる。そうすると周囲の音が聞こえるようになる。

更に屋内へと移動すると、激しい雨の気配がスっと消え、俯瞰してその様子をうかがう事ができるようになる。不思議なもので、一歩外に出れば、確かにそこには先程まで感じていたものが在るのに、そこから距離を取ることができるのだ。

こうやって降り注ぐ雨から、身を守ることができる。

少しくらいの雨なら、自ら傘をさしてしのげるだろう。
でも、それが意味をなさない程の雨もある。

街だって、降り続く雨に対して対策をする。
水が溜まらないように流す先を作る、塞き止める為に土嚢を積む。

そうやって、降ってくる雨からみな、凌ぐ。

自分を立ち止まらせてしまうものは、何も空から降ってくるものだけじゃない。

日々、目に見えないものが己に降りかかって、周りが見えなくなり、周りの声も聞こえず、動くこともできなくなったら?

屋根になるものは持っているか?
身を寄せられる場所は在るか?

自分の頭の中で洪水が起こっている時、その大量の水を流す先はあるか?
守りたい領域に浸水してくるものを食い止めることができる術はあるか?

でも、直接自分を守るものが全てではない。
それだけでは自分というものを守れない時だってある。

傘という存在になってくれる人は傍に居るか?

自分に問う。

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