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"干からびたデコレーションケーキ"―詩




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それは恋じゃなかった
だからといって何と言えばいいかは分からない
友情でもましてや割り切った関係でもない

声に惹かれた 端々に見え隠れする痛々しさにも

ふたりで会うことになったこと
それ自体不思議だったかもしれない
ただ予感はしていた
そして最初に会った時
やはり普通じゃいられないのが分かった
お茶を飲んで"お友だち"として話しているのは
無理があった
かといって相手の大切な人になる気も全然しなかった
彼の大切な人はきっと違う次元にいるのだと感じた
それは私も同じこと
向かい合っている時
彼は何か渋いものを口に入れたような苦しそうな顔をしていた
私も居心地がわるかった
私たちはあまり多くを語らなかった
お互いについて既に知っている情報が
多くの言葉を必要としなかった
私たちは言葉以外でわかり合うことを求めていた
ふたりだけの一時の時間を求めていた

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