イスラエルと浦島太郎
まさか自分がイスラエルの地に降り立つ日が来ようとは。
「1月末にイスラエルの実家に帰る予定なんだけど、スペインからなら近いし、イスラエルでグルメツアーしない?」
全ては、アルゼンチン生まれ、イスラエル育ち、日本人と結婚して大阪在住の建築家、Jorge(ホルヘ)さんからのこのメッセージから始まった。
ホルヘさんとは私の実家のある神戸で、六甲山へでの植樹イベントを通して知り合った。イベントの途中、辛口の彼は他の方と少し口論になって、後半ポツンと一人で行動していたところに私が話しかけたのがきっかけだ。
洋食和食ジャンル問わず舌の肥えたホルヘさん。自転車が趣味で毎日スポーティーな自転車をこいでは隠れた名店を見つけてくる。
食べるのが大好きな私たちは意気投合し、定期的にホルヘさんのおすすめのご飯屋さんに食べにいくグルメツアーをしていた。
で、まぁ今回のこの誘いだったわけだが、いつものように神戸にいる私に「大阪でご飯しようぜ」と、誘うかのようなテンションで提案されて笑った。
(神戸ー大阪間は1時間やけど、スペインーイスラエルは飛行機で5時間やし、何より気持ち的にそんな気軽に行けるとこちゃうねん。と当時の私は思った)
でも、このチャンスを逃したら一生イスラエルに行くチャンスなんてないかもと思い乗っかってみることにした。
ワーホリでスペインにやって来てすぐだったので、一応報告しておこうと親に連絡。
「紛争と砂漠の国でしょ!?そんな危険な国になんでわざわざ行くの!?あんたももう30だし、まぁ基本何やるかは自由だけど、イスラエル行きだけは辞めてほしい」
と、かなり深刻なトーンで言われた。
紛争と砂漠・・・。
確かに私もそのイメージだ。急いで現地の治安事情を調べ、ホルヘさんに加えもう一人知り合いから現地の情報収集をし、最終的に自分の中では"大丈夫"と判断した。
ということで親には申し訳ないが、親のセリフの中の"基本何やるかは自由"という部分だけを切り取って理解し、航空券を買った。
世界一厳しいとも言われる入国検査を2時間かかってようやく通過し、無事入国!
あれ、おかしいな。割と質素な空港を想像してたけど結構近代的だぞ。
「お〜い!こっちこっち!無事着いてよかったね!お腹空いてる?」
ホルヘさんが迎えに来てくれていた。
到着するなり、荷物を置いてすぐ町に繰り出すことになった。
およ。およよよ。砂埃にまみれた廃れた町の風景を想像していたが、高層ビルやマンションがひしめき合っている!?
そう、お恥ずかしながらグルメのことと、治安のこと"しか"調べてこなかった私は、イスラエルがIT技術に優れ、世界有数のスタートアップ大国であり、中東のシリコンバレーとも呼ばれマイクロソフトやインテルに代表するグローバル企業の研究所が集まっている国だということをカケラも知らなかったのだ・・・。
「あれ?知らなかった?」と、浦島太郎状態で立ち尽くしている私を見てホルヘさんがさらに、1人あたりの名目GDPは日本より高く、OECD加盟国でありいわゆる先進国であると教えてくれた。
さ、さようでございましたか恐れ入りました。
自分の世間知らずさに恥ずかしくなり、穴があったら入りたいくらいだった。
「お腹空いてるよね?僕の行きつけのとびきり美味しいフムス屋があるから行ってみよう!」
そんな私をよそに到着してからお腹が空いてるかどうかばかり気にしてくるホルヘさん。
またもやお高そうなビルが並ぶ大通りを通り抜け・・・。
「ここだよ」
あっぱれグルメなホルヘさん。この老舗っぽいお店のフムスがおったまげるほど美味しかった・・・。
300円くらいかな?と思っていたら、お値段1500円!!
イスラエルは日本より物価が高いそうだ。
まだ自分のイメージしていたイスラエルと現実のイスラエルとの違いを咀嚼しきれておらず、それに加えて連れられるがままにやって来たこの店のフムスのおいしさは桁違いで、もう色んなことに圧倒されていた。
ホルヘさんはサクッと食べ終えると、「まだ食べれる?」と店を出てまたスタスタ歩いていく。
「ここのパンは食べといた方が良いよ。はい、これ」
な、なんだこのスパイスの効いたパン!ふっくら、もちもち美味しすぎる〜!!!
「この少し先にも美味しいお店があってね。あ、まだいける?おなか?」
「は、はい!!」
あの日、ポツンと一人でいた亀さんに声をかけたら、イスラエルという未来的な地にタイムスリップして連れて来てもらい、初っ端から何を食べても美味しい竜宮城ならぬ、イスラエルを案内してくれるとな。
イスラエルと浦島太郎のグルメツアー、次回へつづく。
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