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トヨタ生産方式やリーン生産方式を取り入れた小規模農家/THE LEAN FARM "Ben Hartman"

 今回はトヨタ生産方式やリーン生産方式を取り入れた、小規模農家のベン・ハートマン著「LEAN FARM」を紹介していきたいと思います。
今まで紹介した多くの海外農家がこの人の本をオススメしており自分も改めて勉強し直すことも含めて少しずつ紹介していければなと思います。

Ben Hartmanは農家であり、名誉あるシンゴ賞を受賞した『The Lean Farm』の著者です。2017年には『The Lean Farm Guide to Growing Vegetables』というフィールドガイドを書き、Gristによって米国の50人のグリーンリーダーの一人に選ばれました。彼はUSAIDが資金提供するプロジェクトのシニアコンサルタントです。Clay Bottom Farmでは、農家がより小さく、より賢く農業を行う方法を教えるためのオンファームワークショップとオンラインコースを提供しています。

LEAN FARM

2011年、Clay Bottom FarmのCSAの顧客の一人であるスティーブ・ブレンネマンが、私たち(ベンとレイチェル、農場のオーナー)にリーン手法を農場に適用するというアイデアを持って接近してきました。私たちは耳を傾け、学び、コースを変更しました:私たちは栽培面積を1エーカーから1/3エーカーに減らし、ほぼすべての道具を取り除き(私たちは7つのフィールドツールのみを使用しています)、ほぼ半分の時間を働くようになりました。現在、私たちは私たちの食べ物を農場から1.5マイル以内で全て販売しています。"ダウンサイジング"にもかかわらず、私たちの製品、農場、利益の価値は着実に増加し、仕事と生活のバランスを見つけました。
ここがその公式です:

1. 削除。 ほとんどの農場には、視界を遮り、価値を加える作業を遅らせるため、部品や道具、供給品、不必要なジャンクが多すぎます。価値を加えるために絶対に必要でないものはすべて取り除きます。容赦なく行いましょう(私たちが使用するのはリーンの5Sです)。イーロン・マスクは彼のエンジニアにこう言います:あなたが追加しない限り、あなたは十分に削除していません。それは私たちの農場で真実を鳴らします。
2. 顧客から始める, そこから逆算します。完全に正確に。彼らは具体的に何を望んでいますか? いつ? どのくらい? これには、聞き取り、観察し、メモを取る必要があります。精度は気遣いです。リーンの現地現物(自分で見て確認する)は私たちが使用するプロセスです。
3. 無駄を削減する。 全てを単純化します。私たちの農場では、ほとんどの「要件」は不必要であることに気づきました。私たちは土壌のテストを行ったり、トラックによる肥料で土壌を改良したりしません:私たちは地元の葉、堆肥化したものを使用します、それだけです。私たちは食べ物をクーラーにほとんど保管せず、代わりに食べ物が収穫されたときにそれを配達します。私たちは耕したり、すきを使ったりしません:私たちは根と微生物にその仕事を任せます。私たちの農場の転換点は、食物の育て方についての従来の知識を疑い始め、無駄を削減したときでした。
4. 進歩する。 毎シーズンの目標は、より大きくなったり、より多くのことをしたりすることではありません。それはより良い仕事をすることです:無駄をさらに削減し、私たちが何をするかを地元のコミュニティが必要としていることによりよく調整しますーー素晴らしい食べ物を育て、それが食べられること。

これがマイクロサイズの地域化された農場で利益を得るためのロードマップです。

5つの原理

1.顧客の欲しいものを明確に特定する。

何があなたの顧客を本当に興奮させるのかを研究してください。あなたの顧客が望む正確な商品やサービスはあなたの農業を推進するべきです。

2.各製品のバリューストリームを特定する。

 顧客が何を求めているのか、市場調査でニーズが分かったらまずはバリューストリーム(生産工程)を書き出していきます。計画から種の注文、最後は銀行からの入金に至るまで細かく作業工程を見直します。

3.バリューストリームの「ムダ」を無くす。

次に作成したバリューストリームから「ムダ」を見つけます。
付加価値のない「ムダ」な作業を見つけたら、それを根絶することを目指して下さい。目標は「ムダ」のないバリューストリームです。


4.過剰生産をしないために生産者から顧客に対して、いつ、どの位の量が生産されるのかをアナウンスしておきましょう。

あまりにも多くの野菜を育てたり、あまりにも多くの鶏を育てて余分なものを生産してしまわないように。顧客が望む量を、彼らが望むときに正確に生産する事を目指します。また出荷量や集荷日を顧客と共有してロスのないようにする事も必要です。


5.生産から販売までの工程を改善しつづけて、「ムダ」をゼロにする。

 継続的な改善の農場文化を発展させましょう。完璧な流れ(ゼロウェイスト生産)を目指して。

リーン生産方式は農家にとって大事なツールの1つ

 リーン生産方式はツールとして非常に効果的であるため、大きくなるための手段としてそれを使用したくなるかもしれません。しかし、リーンは、農場を小さく保ちながら利益を増やすためにも同様にうまく使用できます。


 米国の一般的なビジネスモデルは、成功したモデルを毎年規模を拡大することを前提としています。

 量よりも質や価値を生み出すことに焦点を当てたリーン生産方式の原則は、サイズの制約があっても成功する可能性があります。
 
 実際、縮小することは、農場にとって正しい決定である場合があります。
リーン生産方式を参考にして、栽培面積を1エーカー未満に縮小し、毎年利益を増やす事が出来ます。
 栽培面積を縮小し、「ムダ」をなくし、プロセスの捻れを解決することで、満足する給与を得ることができたらあなたはどうでしょうか?

 リーン生産方式の体系的な「ムダ」の排除を着実に適用することと、利益率の高い作物に焦点を当てて需要が最も高い作物を収穫するための慎重な計画を立てることで、農場は小規模で収益性の高い状態を維持しています。リーン生産方式とは、少ない労力で効率的により多くの作業を行う事です。

 米国では、巨大な農業会社による利益がより一般的です。USDAの報告によると、農場の規模は1990年以降2倍になり、「傾向は続く可能性が高い」とのことです。
 ワシントンポストからの最近の記事にこう述べられています:家族経営の農場でさえ今は巨大です。

 農場の超大型化に関する問題はたくさんあります。地方のコミュニティはボロボロのままです。多くの農場は無菌で、魅力的ではありません。ヘビ、トンボ、渡り鳥の防風林、樹木、多くの動植物にとって生息地が少ない場所になっています。

 1900年代には、大多数の農場で、さまざまな果物や野菜に加えて、鶏、牛、乳牛、豚が飼育されました。農場はかつて私たちと自然を繋ぐ場所であり、かつて農場では子供たちが遊んで自然について学びました。
 今では多くの巨大な農場は自然界にほとんど似ていないので、子供たちは自然について学ぶ機会が減ってしまいました。

 しかし、小規模農場も増えていることも事実です。リーン生産方式は、コストを削減し、小規模の利点を活用することで、小規模農家が生き残る為の大事な道具です。
 リーン生産方式を適用する小規模農家は、巨大な生産者よりも顧客により細かいサービスを提供すると同時に、農場を運営するのに十分な量を生産することが可能になるのです。

価値を定義するのはあくまで顧客

顧客目線ではなくつい農家の都合で失敗する4つの事を紹介します。

1.使いきれないテクノロジー


 多くの農場は、機能が多すぎるトラクター、複雑すぎる温室、または高すぎる動物飼料システムで行き詰まっています。農業技術は毎年進歩していますが、それが明らかに顧客にとってより低いコストでより多くの価値を生み出す場合にのみ投資してください。

 James P. Womack 、Daniel T. Jones著「Lean Thinking」では冷戦後、顧客ではなくエンジニアが価値を定義し、ビジネス上の意思決定を推進したため、ドイツの産業は衰退したと主張しています。「これまで以上に複雑な機械で製造された、より複雑な設計は、まさに顧客が望んでいたものであると主張されました。しかし、証拠はどこにあったのでしょうか?」
まずは顧客が何を求めているのか真摯に向き合うことを大切にしましょう。

2.ニーズの少ない野菜

 顧客は決して農家が食べたいものを必ずしも食べたいと思っているわけではありません。紫色の豆や色とりどりのニンジンやエスカロールに魅了されているかもしれませんが、顧客はいますか?
 あまりにもファンシーで珍しい野菜を育ててもニーズがなければロスが増えてしまうだけです。

3.プロセス

 屋上で栽培している場合でも、最新の新しい水耕栽培システムや垂直栽培システムで栽培している場合でも、多くの農家は、栽培プロセスに魅了されて、顧客が本当に望んでいるものを曖昧にします。

 新しいアイデアを否定するわけではありませんが、重要なリーン原則は
本当にそれは顧客にとって必要なのかどうかという問いを常に立てる事なのです。

4.過剰供給と供給不足

 綿密な計画にもかかわらず、すべての農場は供給過剰と供給不足の間で時々変動します。

 ただし、在庫の量は顧客とは無関係です。在庫が顧客が望むものや望む量を変えることはありません。

具体的な例の1つは、CSAボックスのケールです。


 人々がCSAプログラムを離れる一般的な理由は、生産者が彼らにあまりにも多くのケールを与えたということです。生産者は過剰供給に対して一時的に凌いだのかもしれませんが、顧客にとって多すぎるケールは不満を抱かせる原因になります。

 必要な量を必要な時に供給する事が長く顧客としていてもらえる大切な事です。基本はあくまでも顧客の目線を忘れない事が大切になります。

以上です。
何か参考になれば幸いです。

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