サンドイッチ_1

フランスに行く楽しみの一つは食べ物で、やはりパン、チーズ、ハムなどはうまい。味の密度が全然違う。そして日常食なので安い。
そしてバター。ブルターニュの塩がたっぷりと効いたバター。それらを使ったクッキーなどの焼き菓子。そして、種類が豊富で値段も手頃なハチミツ。

パン、チーズ、ハム、バターなどの基本食は、混ぜ物が全然入っていない。原材料はいたってシンプルで、素材の味がする。
それらを総動員してつくるサンドイッチもこれまたうまい。
日本にいるとサンドイッチなんて食べたいと思わないし、自分でつくることもない。ところがフランスに滞在していると、彼らは考えるよりも先に手を動かして、パパっと作ってしまう。春から夏にかけては、さっと作って、公園や海岸、ドライブの休憩、長距離列車の中などで食べることが多い。

特に北フランスは、今、この時を逃すと次いつ晴天に恵まれるかわからない。朝、気持ちよく晴れ渡っていても、昼過ぎにはどんより曇り空…なんてことがしょっちゅう。だから休日「晴れた」と思ったら、家事やメールの返信は放っぽり出して、バタバタとでかけていくのが正しい人生なのだ。

南でも北でも、そうと決まった時の彼らは驚くべきコンビネーションプレイを発揮する。
普段は個人主義の国で通っているのに、この時ばかりはチームワークが抜群だ。
まず湯を沸かしておいて、卵をゆでる。その間パンにバターやマスタードを塗る人、具を挟む人。家に子供がいる場合は、どこからかバスケットを取り出してきて、おやつやジュースを詰める。魔法瓶やカップ、果物やサラダをいれるタッパーなどをかき集めてくる。
手を動かしながら口を動かすことも忘れない。「どこへ行こうか?」「あそこの公園は?」
「それより、泉のほとりがいいんじゃない」「あーだこーだ」…

奥さんと私とでバスケットに食べ物を詰めている間、ご主人と子供たちは車のトランクにシートや遊び道具を詰め込む。そしてものの30分もしないうちに出発。

夕方の浜辺、昼の強い日差しを遮ってくれる森の木陰、運河や湖などの水辺、車での移動の途中に立ち寄った、名も知らぬ街の橋のたもとetc... 旅先の小さな町でベンチや公園が見つからず、カフェにも持ち込みを断れられ(食べ物の持ち込みは日本より寛容な場合が多い)、無人の教会で懺悔も祈りもなく、人に見られる前に、大慌てで食べて立ち去ったこともある。


(サンドイッチ_2へ続く)


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