マガジンのカバー画像

エッセイ

48
運営しているクリエイター

#ファッション

【展示レポート】 細見美術館 「集う人々 描かれた江戸のおしゃれ」展

今日は友人Kさんのご好意で、細見美術館で開催中の「集う人々 描かれた江戸のおしゃれ」展を鑑賞しました。 細見美術館は京都の岡崎、平安神宮やロームシアターのすぐそばにある私設美術館。明治生まれの実業家、細見良に始まる同家三代に渡るコレクションが基礎となり、日本の美術工芸のほとんどの時代と分野を網羅しています。本展も同館の所蔵品をベースに企画され、洛中や洛外を描いた屏風や風俗画などから江戸のファッションを読みとっていきます。 自分なりにあれこれ思い巡らせて鑑賞した、一鑑賞者の自由

SAINT JAMESのTシャツ

近所に住む友達が夏期休暇でフランスへ帰っている間の植物の水遣りを、頼まれて夏の間中せっせと通っていた。 ヴァカンスシーズンが終わり、先日帰国した彼女の家に呼ばれて訪ねていくと、お礼を兼ねてお土産を用意してくれていた。 その中の一つにSAINT JAMESのTシャツというのがあった。白地にブルマラン(紺色)の、いかにもフランスといった長袖のTシャツだ。 彼女から口頭で聞いた説明によると、このSAINT JAMESこそがフランスのマリンスタイルの発祥で、元はブルターニュの漁師が

マルジェラを巡る冒険 #6

そうして伝えた靴の品番をもとに、百貨店から本社へ再度問い合わせたところ、靴の図面が見つかった。おかげで業者の方でも大まかなイメージを掴むことができたらしく、これなら何とか修理できそうだという。 そうして、あれよあれよと言う間に修繕は進んで、一週間後にはお直し完了しましたとの電話を頂いた。 私は出来上がった靴をみて、またしても息を呑んだ。 もともとのデザインで、ほつれていた部分がきれいに縫い合わされている。もとの縫い目と何ら変わりない仕上がりで。 私は出来上がりに大変満足

マルジェラを巡る冒険 #5

「マルジェラの社員はフランス料理店でマナー研修をうける」 就活中、色々な会社研究をしている時期に聞いた話で、真偽のほどや、本店での話なのか日本でもそうなのか等定かではないが、あながち嘘ではないのかもしれない… 相手との会話のうちにそんな風に思った。 どんな研修がなされているかはさておき、 販売達は非常によく教育されている。 それが率直な感想だ。 もしかしたら、研修制度などまるでなく、販売員達は初日から売り場に放置されていて、今回の対応も一個人の判断だったのかもしれな

マルジェラを巡る冒険 #4

電話で対応して下さった方を訪ねて、百貨店のマルジェラ売り場を訪れた。 私はずたぼろになった靴を見せながら、大変恐縮し、無理ならそのまま持ち帰りますので、と何度も告げた。応じてくれたのはまだ若い感じのよい女性で、「こんなに大切にご愛用いただいて」と、私の注文を熱心に聞いて、書き留めて下さった。 私は、デザインで一部パーツが始めからめくれていることを告げ、今後のダメージを防ぐため、元のデザインから変わることになるが、縫い合わせてほしいこと、その他修理の方から見て、補強や交換が必

マルジェラを巡る冒険 #3

もしその靴を年に数回はくだけの、超秘蔵っ子いっちょうら靴に留めておけば、今でも美品の状態が保たれていたのかもしれない。 でも靴は履いて歩くべき道具であり、人生の相棒なのだ。 それに何より、この靴はどんなスタイルにもとてもよく合う。 メンズシューズを基調にしているので、パンツススーツにはもちろんはバッチリだし、ジーパンを履いてもカジュアルになりすぎず、ピリリと決まる。そして甲のところがきゅっとしまってスラッとしたフォームをしているから、意外にもブラックドレスなどのフェミニンな

マルジェラを巡る冒険 #2

それは本当に美しい靴だった。 単に形がきれいとか、デザインがかわいいとかなら、他にも沢山あると思うのだが、それは流麗なフォルムと細やかな作りが見事に調和して、一粒のダイヤみたいな輝きを放っていた。 ドキドキしながら年が明けるのを待って、セールで半額近くになってから購入した。 箱から取り出し、改めてまじまじ眺めると、その仕事の細かさに息を飲み、どぎまぎさせられた。 元になっているメンズシューズの細かい技術や製法のことはわからないが、おそらくきちんとした靴はパーツも行程も多

マルジェラを巡る冒険 #1

それは完全なる一目ぼれだった。 吸い寄せられるようにしてその場へ向かっていったのだから、ほとんど運命といってもいいのかもしれない。 2008年か9年頃、長い電車通勤に疲れ果てていた。シックだけど重たいウールのコートから軽いダウンへ替え、足元もヒールではなく楽な靴を選ぶようになっていた。 まだ地震の起こる前、ヘルシーなスポーツテイストやアスレジャースタイルが、本格上陸する前夜だったから、靴下のまま履けるきれいめの、フラットな靴を探していた。 別にファッション愛好家でも、