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なんちゃっていねい生活 都会に近い田舎に住もう

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関東の小都市・神奈川県横須賀市在住の文筆家が、なんちゃってな「ていねい生活」の日々を綴ります。スキやシェアしてもらうと面白いことがあるかも!
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#一人旅

小さな旅行記 2024冬北海道行(1)

 2024年最初の旅の舞台は北海道になりました。  この旅を計画したのは去年10月のことです。大変レアなイベントが札幌で行われるのを知り、それに合わせて以前から念願だった北海道乗り鉄旅をすることにしたのです。  とはいえ、今回はどうしても網走スタートにしたかった。そこで最初は釧網線乗りつぶしなども考えましたが、結局は石北線を優先することにしました。どうせ釧網線乗りつぶしをするならそのまま根室線に突入したいのだけれども、そのために必要な日数が取れなかったのです。  とはいえ、網

癸卯葉月 処暑 四国行 夏休み編その4

廿八日 午後 予土線で伊予から土佐へ。土佐は20年ぶりぐらい、けれどもこのルートで行くのは始めてである。そのまま高知まで突っ走るという手もあったのだが、今回は途中の江川崎駅で下車し、一泊することにした。 お目当ては四万十川だ。長年、一度は見てみたいと念願していたのだ。 「最後の清流」と名高い四万十川は同時に暴れ川でも有名である。穏やかな流れが一旦ことが起こると橋もなにも破る激流に豹変するという。 よって、上流には「沈下橋」と呼ばれる簡易橋が架けられている。欄干もなにもない

皐月十日 旅の記憶その9 芦野公園

 さて、いよいよ旅の最終日です。  今日はちょっと忙しくて、夕方までに取材を済ませ、空港に行かなければなりません。  効率よく動かねば! ということで、あさイチで駅に向かいました。  駅はもちろんこちら。  これまたあこがれの津軽鉄道。  しかも桜の季節。  目指すは当然芦野公園駅。  そこにお目当ての人が待っているわけですし。  ちょうど登校時間帯にあたったようで、駅も車内も学生さんでいっぱいでした。いいなあ、この鉄道に乗って通えるなんて。私なんて何の色気もない大阪市営

皐月十日 旅の記憶その8 五所川原の夜

 旅も四日目、連日2万歩近く歩いていると、さすがに疲れも溜まってきます。この日宿泊したホテルは最上階にレストランがあったので、夕飯はそこで済ませてしまう手もありましたが、いやいや、ここまで来たのだから地元のお店を、と心奮い立たせ街に出ることにしました。といっても、たくさん歩く気力はありません。  そこで、ざくっとネットで徒歩数分圏内のよさげなお店を探し、電話で開いているのを確認してから向かいました。さすがに店を求めて彷徨する残力はなかったので。  で、結論から言いますと、頑

皐月八日 旅の記憶その7 弘前から五所川原

 岩木山神社のお参りを無事に終え、弘前での目的はほぼ終了。街に戻って唯一残っていたミッションである弘前フレンチ堪能といきます……のはずだったのです。だったのですが、舐めてました。さくら祭り中のランチ事情を。  目星をつけていた店は満席もしくは団体客のみの受け入れという状態で、たまたま見かけて戸を叩いた店も満席御礼。完全にランチ難民です。この時点でもう空腹はマックス。昼たっぷり食べるつもりで朝食を控えめにしたのが仇となりました。しかも気温はどんどん上がっていく。つまり、体力が削

皐月五日 旅の記憶その6 岩木山神社

 明けて二十五日。  本日のメインイベントは岩木山神社への参拝です。  実は数年前に全国一の宮巡拝を発願しまして、コロナ禍を挟みつつも今のところ順調に数を重ねております。  一の宮に関してはいわゆる「諸説あります」状態ですし、そもそも岩木山神社は現代になってから追加された「新一の宮」のお宮さんではあって、由緒にうるさい向きは色々思う所有りのようですが、私はというと「あれば参る」が基本でして。  ま、一の宮云々関係なくしても、岩木山を御神体とする神社にはやっぱりお参りしたいじゃ

皐月四日 旅の記憶その6 弘前

 津軽地方を訪うのは二十年ぶりでしょうか。  とはいえ、前回は夏だったので、桜の季節は初めてです。花の盛りに来ることができたなんて勿怪の幸い。14時から弘前市立博物館で開催される東雅夫さんの講演会がなければ、人混みが大の苦手の私がこの時期を選んで来ることはなかったかと思います。何事も、御縁は大事です。  御縁といえば、仕事関係で何度かやり取りさせてもらっていた怪談作家の高田公太さんにご連絡し、こちらも初めてお目にかかることにもなっていました。近頃はどの土地でもお化け関係の方々

皐月三日 旅の記憶その5 青森から弘前

 普段なら朝食は食べずに飲み物だけ、十一時ごろに朝昼兼用の食事を取ることが多いのですが、朝から活発に動く旅先では早朝からがっつり食べます。青森駅前のビル内に朝五時からオープンしている市場があり、そこで地物海産物の定食や丼ものが食べられるというのは事前調査済み。  近頃ではめっきりそのつもりがなくても早起きしてしまうようになりまして、この日も自然と六時には目覚めました。加齢めぇ。  ま、おかげで並ばずしてこれを食べられたのですけど。  青森っていえばホタテでしょうってわけで

皐月朔 旅の記憶その4 函館逍遥

 明けて4月23日、メインイベントは「函館の女」と「津軽海峡・冬景色」です。  そう、はるばる来たぜ函館へから津軽海峡で海鳴りを聴くのです。  とはいえ、出発までは函館観光。  まずは海岸沿いに西洋建築が並ぶエリアに移動します。   と、歩き始めたら、赤い靴の女の子が。  あれ? 横浜じゃなく? と思ったら、モデルの少女が母と別れたのは函館だったそうで。知らなかった。そして、帰宅してからちょろっと調べたところ、実は異国には行かないまま孤児院で亡くなったと知りました。貧困ゆえ

卯月晦日 旅の記憶その3 長万部から函館

 長万部からは特急北斗で一路函館へ。一度乗ってみたい列車のひとつでしたので、この機会を逃すわけにはいきません。北斗12号なので、車両は261系です。  空いているので自由席でも問題なく好きな席に座れます(JR北海道には大問題だろうが……)。座席はゆったりしているし、車窓は広いし、言う事ありません。  ここまでとは景色が一転し、視界を遮るものがない海沿いの旅が始まりました。雲が多かったこともあり海は昏く、荒涼とした海岸線が続きます。これもまた北国の一風景ですね。  ですが、し

卯月二十九日 旅の記憶その2 倶知安から長万部

 倶知安から三度目の乗り換え駅である長万部まではだいたい一時間半ほどかかります。窓際に陣取り、さっそくお弁当を食べながら流れる景色を堪能と洒落込みました。  いわゆるひとつの呑み鉄旅です。  呑み鉄旅の酒のチョイスは、多少ぬるくなっても美味しいものを選ぶのがコツ。ビールならエールがよろしいかと思います。今回は白ビールにしました。このタイプは香りが命だから本当はグラスに注いで飲むのが一番だけど、電車では瓶からそのままも悪くありません。  走る列車に揺られて、ただのんびりお酒を

卯月二十九日 旅の記憶その一 千歳から倶知安 

 二十二日から二十六日まで四泊五日の北国旅をしておりました。  備忘として、しばらく少しずつ旅の記録を書いていこうと思います。  今回の旅を企んだ最大のきっかけは函館本線の小樽-長万部間が廃線になる、というニュースでした。  2030年度末開業予定の北海道新幹線延伸に伴うものなので、廃線までもうしばらく間はあります。とはいえ、関東住みの私にはそうそう行けるものではなく、思い立ったが吉日を決め込んだわけです。  それに、一度早春の沿線風景を見たかったというのもありました。

卯月二十六日 旅の終わり

 今回の旅、物見遊山ばかりではありません。  ちゃんと飯の種も拾いに行っていました。  何かはまだ内緒ですけど。  まあ、この写真を見たら、一発で「あれか」ってなりますよね。  今回、取るか取らないかでかなり迷っていたんですが、本人から「オレを入れろ!」の圧がすごくて入れることにしました。え? 妄想? そんなことありませんよ。あまりにもあまりな偶然が重なりまくったので。  それについてはいずれ、また。  五日かけて巡った北国の旅も終わりです。  空港に行くバスの中で雨が