SVBショックで金融危機不安を抱えるあなたへ
閲覧いただきありがとうございます。
金融経済を日ごろから分析しているマネゴリと申します。
元々、大手の証券会社で日本有数の創業一族の運用に携わったアドバイザーです。個人投資家の皆様に経済の本質をお届けし有意義な資産運用のキッカケとしてご覧いただけたらという一心でコラムを書いております。
ご参考にして頂ければ幸いです。
さて、今月は米国のSVB(シリコンバレー銀行)ショックで金融株の不安定感は続いていますが、一部の弱気派市場参加者が指摘するような、景気悪化をもたらす流れにはまずならないでしょう。また、未だに経済の強さを数量ベースの「実質値」で評価する人は多いですが、金融市場で重要なのは、どれだけのキャッシュを稼いだかです。つまり、「名目値」の方が重要である点を意味だに理解できない市場関係者ほど、直近の金融株売りをネガティブに捉えているように思えます。
しかし、今回の一部の金融機関の破綻は、日本の金融恐慌や欧米で発生したサブプライム・ショックなど経済危機をもったらしたような金融株売りとは全く違うことを理解したほうが良いでしょう。
そもそも金融株が一斉に売られているのは、金融システムへのリスクを感じているからではなく、投資家の見通し(主に機関投資家やヘッジファンド)が外れてポジションをクローズしている影響が大きいと考えられます。
好調な実体経済を背景とした高インフレの持続が政策金利の引き上げをより意識させていた中で、SVBショックを契機に市場環境を激変させ、それが突発的な事故のような影響を市場に与えただけです。
今回のような金融機関の破綻も金融業界全体というよりは個別の経営戦略の失敗の可能性が非常に高いです。金融システムは、引き続き堅調を維持していることがFRBのみならず、ECB、日銀、英中銀からも指摘されています。パウエル議長は、SVBの経営が相当酷いと指摘しているように、明らかにSVBの破綻は、個別要因だと考えていいでしょう。
加えて、現在の預金引き出しは、ネットで簡単に行える。これが、金融当局の想像を上回る預金引き出しに直結し、一気に破綻銀行の資金繰りを悪化させ、突然死的な破綻に繋がったと考えば整合性がとれます。
なお、現代版取り付け騒ぎは、店頭に並んで預金の引き出しを行うようなことをしません。ほとんどがネット経由で簡単に引き出せます。また、引き出した預金は、タンス預金になるのではなく、他行に移行するだけとなる点が最大の特徴です。つまり、タンス預金のような預金が金融市場から抜け落ちるタイプの危機とは全く違うということです。タンス預金で使わなければ、実体経済や金融市場にはない預金と同じです。
つまり、過去の取り付け騒ぎのようなタイプの金融懸念には繋がらないので、金融システムは健全と言えます。一部の金融機関の預金が他行に移行するだけの話だからです。これを理解しないで一部の関係者が過剰に騒いでいるのです。
また、社会全体に対する信用収縮への懸念がそもそも乏しいことも意識したほうが良いでしょう。
元々、現在の過剰流動性は、中央銀行の流動性供給のみならず、「財政政策」により、社会に広く流動性が供給されていることをちゃんと理解しないといけません。過去の過剰流動性は、金融政策を通じて供給されているだけで、多くは金融市場に滞留しているだけ、それを避けるために導入されたのがマイナス金利政策です。
この従来の過剰流動性と現在の過剰流動性の差を過小評価しているから、高いインフレの持続性と底堅い株式市場の併存を意識できなかったのでしょう。それが年初からの予想を上回る世界同時株高をもたらしていたと考えられます。その上昇では金融株が特に堅調だったのも、マクロファンドの買いの影響が大きかったと推測できます。その見通しがSVBショックという一部金融機関の破綻で見通しと環境が大きく変わってしまい、それを売り投機の好機として反応した投機家の影響もあり、一気にパフォーマンスの悪化に繋がったと考えられます。
市場は常に間違うということです。一部の金融機関の破綻は、生き残る金融機関にとっては逆にビジネスの拡大や強化のイベントになります。既に、SVBは事業分割も視野に身売りの話が出ていることから弱った金融機関にハイエナたちが早くも群がってくるでしょう。
今回の金融株売りにより、景気に対するネガティブな影響をもたらすだろうというイメージを持っている弱気派市場関係者は多いですが、彼らの懸念も杞憂で終わりそうです。そもそも今回の高インフレをもたらしたのは、金融機関の異常な信用創造ではないからです。コロナ・ショックにより、アメリカでは第二次世界大戦時を上回る規模の財政政策を行った影響で、高インフレとなりました。1929年の米国株暴落に始まった世界恐慌から米国が完全に回復したのは、第二次世界大戦に参戦したことによる財政拡大だったことは、歴史を勉強した人なら理解しているはずです。その水準も上回るような財政支出をコロナ・ショックで行ったという事実を、きちんと理解している市場関係者は意外と少ないのが現状です。マーケット解説などがテレビ中継でありますがこの点に触れているコメントを未だに一回も目にしていないのは非常に残念でなりません。
だから、インフレ見通しだけでなく、それに対する金融政策見通しも、多くが予想を外しているのが現状です。従来の低金利・低インフレ・グローバルリズムは、もう終わっています。そのことも多くの経済人は意識すら出来ていません。
今は、政治主導で経済が動いています。政治と経済が分離する新自由主義的政治・経済システムではもはやありません。だから、金融懸念についての対応も異常に早いのです。リーマン・ショック時のように様子見などしません。政治と経済は一体化の流れになっていることをよく認識してもらいたい。
ここ最近の世界各国の政治の動きを見ればグローバル化の終焉がよく分かります。中国の仲介でサウジアラビアとイランの関係改善が進み、中国とロシアの関係も強化されています。逆に米中対立は、今後も激化し、長期化することになるでしょう。
既にアメリカの覇権構造は崩れ、世界は多極化していきます。この流れは絶対と言っていいでしょう。だから、アメリカと、その愉快な仲間たちで構成されているNATOは、ウクライナ戦争の終結を逆に長引かせるような行動をとっているのです。平和など全く意識もしていないでしょう。
この国際政治環境下で、自国の景気悪化を政治が選択するわけがないです。また、高インフレは、低所得者層の生活環境を悪化させるので、インフレ対応も優先させます。一部の銀行が破綻してもインフレ対応を優先させるECBやFRBの行動は、政治の視点でみれば当然の反応です。
ただ、金融機関の破綻が実体経済への影響を懸念していることも事実なので、市場は既に次のモードに突入し、金利引き上げ打ち止め期待を前提に動き始めています。
そう、半導体関連などのグロース株が逆に堅調となっていることです。金融機関の破綻により景気悪化が本当に意識されているなら、このような動きには絶対になりません。結局、2022年のグロース株の急落相場から、何一つマーケットは変わっておらず金利変動をベースにマーケットは動いているだけの話なのです。
ただ、金利が低下してとしても、低金利・低インフレ・グローバリズムに回帰することはもはやない。グローバリズムの終焉は、低賃金労働者の供給を抑制する。既に先進国は、団塊ジュニアなど人口が多い世代が現役を引退しつつある。つまり、安い労働力の供給環境では、もはやないのです。
だからこそ、機械化・デジタル化の流れは今後も続くことになります。ChatGPTへの注目は、社会変化を前提にすれば当然の流れなのです。
社会変化の過渡期は、その変化に思考や行動が伴わない企業や組織、個人に多大な悪影響を及ぼす一方、その変化を先取りした企業や組織、個人には多大な恩恵を受けるイベントになり得ます。
ただ、多くは、その変化を理解できず、思考や行動が習慣化されているからこそ、大きな変化に翻弄されてしまうのです。
その翻弄された企業・組織・個人の反応をみてリスクと感じるのか、チャンスととらえるのかで、その後のリターンが大きく変わってくることを、理解して頂きたい。
「大きな変化は、リスクではない、チャンスだ」
なら、このマーケットでどのような対応をするべきなのかは、自ずと答えが出るでしょう。
急落は投資の好機、今の世界の政治情勢を背景に欧米は国内の経済悪化はどう考えても避けなくてはなりません。SVBショックの対応の早さがそれを物語ってます。目先の急落はポジションの失敗によるポジション解消売り、それに便乗した機械的な投機売りであるならば、この売りは長くは続きません。株価を割安にしてくれるイベントでしかないと考えていいでしょう。勇気を出して投資をしてください。過去の経験から買いたくないという時が買い場、まだまだ上がるだろうと思っている時が売り場です。株は買いたくないと思う時に買うことをお勧めします。
より良い投資が出来ることを心よりお祈りいたします。
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