脱八方美人宣言
と言っても、最近のことではない。
どんな人と接していても波風を立てたくない場合、本当の気持ちや意見を隠して、相手に合わせるということは、日常の中で多少は出てくるだろう。
それが、極端なことを言えば、Aさんが「Bさんが悪い」と言った時にそれに積極的に同意していたにも関わらず、Bさんが「Aさんが悪い」と言ったら、それにも積極的に同意したとしたら、あなたの本音はどこなの?ということになり、Aさんからも、Bさんからも、はたまたそれを知った第三者からも信頼をなくすかもしれない。
このケースではないのだが、高校時代の友人で、わたしが行きたい店に行くのに誘ったら、休みの日に電車に乗って付き合ってくれた人がいた。その他にも、観劇やイベント参加にも付き合ってくれて、誘いに乗ってくれやすい人だなぁ、と思っていた。
ところが、ある日、共通の友人で「彼女は『本当はその店に行くのはあまり気が進まなかったけど、付き合って行ったんだ』って言ってたよ」と、わざわざわたしに知らせてくれた人がいた。
知らなかったらそのままで済むことも、時折、そのように他人が裏で言っていたこと、していたことを告げてくる人はいるものだ。それが良いことか悪いことか、相手のことを思って知らせて来るのか、それとも、仲違いさせるために耳打ちするのか、人や場合によって異なるのだろうけれど。そして、それは聞き手が知るべきことなのかもしれないけれど。
そんな素振りはぜんぜん見せていなかったので、他の人に言うほど気が進まなかったのに、誘いに乗ったのか……と、衝撃を受けた。
だからといって、そのことを問いただすことはしなかったのだが、他にも付き合ってくれていたことの、どこまでが本人の意に沿っていたのだろうか……という疑問が出てきて、それ以降、誘い難くなった……というよりは、そういう気持ちにならなくなった。
陰で他の人に打ち明けるぐらいならば、「そんなに気が進まない」って言って、断ってくれればよかったのにと思ったが、きっと言えるぐらいならば言っていたのだろう。無理強いはしていなかったものの、言えなかったから誘いに乗ったけれど、すっきりしないからそのことを他の人に言ったのだろう。
ある意味、やさしい人とも言える。
わたしも、言い争いなどはしたくはない方だが、その出来事は、それまでどのぐらい八方美人の傾向があったかは分からないものの、そうはならないようにしようと、心の中でひそかに誓うきっかけになった。
イタリア語で、「八方美人」を意味する単語・言い回しを見ると、amico/amica di tutti(直訳は、「みんなの友だち」)と、ruffiano(男性)/ruffiana(女性)とある。
この後者は、「ごきげとり、おべっかつかい」の意味がそれにあたるのだろうけれど、「ぽん引き、女衒(ぜげん)」などの意味が最初にあるので、使用には要注意。。
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