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この母にして、この子あり-蛙の子は蛙。

「チャオ、○○!」

後方から声をかけられて振り向くと、見覚えがある女性が微笑んでいた。

燦々と太陽が輝く昼時。

彼女の目、そして顔や頭部の雰囲気を見て、
「え、G?いや、M?あ、Tだっ!」と、数秒の間、思考を巡らせ、その当人にたどり着く。

そんな風に思うとは、その3人はどことなく似ているのだろうか……と、今さらながらに考える。
どこが共通するかと言えば、どことなく彼女たちの目はネコっぽいかも。そう言えば、MもTも、カラブリアに家族のルーツがあるから、そういうこともあって、なんとなく似ているのかも。

「どうしてた?」
(実際のイタリア語の直訳では「何をわたしに語って/話してくれる?」に近いが、日本語では、そんな風に尋ねないので、意訳するとこんな感じ)

彼女とわたしが属していたところの現状を話す。

彼女の近くには、既知のご主人と、はじめて見る息子くんと、おそらく、義母さん。

息子くんが母親である彼女に近付くと、わたしの方を見て、「おはようございます!」と日本語で挨拶した!

「おぉ~、おはようございます!」
と、わたしが返答すると、
「ドラえもんが好きなの」
と、彼女が応えた。

彼女は日本好きの親日家で、わたしたちが知り合う前のことだが、結婚式の引き出物(ボンボニエレ)は水引で飾り、新婚旅行はもちろん日本だったそうだ。
日本の鯉が好きだと言う。ご主人は、とんかつが好き(そういうイタリア人は多いのだが)。

息子くんは7歳で小学1年生とのこと。

記憶をたどると、以前、彼らとは最寄りのスーパーでの買い物時にしばしば顔を合わせていたが、そういった機会に、赤ちゃんがお腹にいることを聞き、その子が生まれた後、まだ寝かせるタイプのベビーカーを押していたのを目にしていたことを思い出した。
だから、実際には、息子さんを見るのははじめてではないのだが、成長した彼を見るのは、はじめてだ。

そうか……最後に会ったのは、7年前ぐらいか。

ひとしきり、共通のメンバーについて話していると、息子くんが何かお菓子の材料を並びあげ、「いつ作ってくれるの?」と彼女にせがんだ。その材料を聞きながら、わたしは昨年人前で朗読した絵本を思い出した。

「材料が揃ったらね」
「何について言ってるの?」
彼女に尋ねると、
「どら焼き(笑)」
「あぁっ!」

ドラえもん好きならば、たしかにどら焼きは憧れのおやつだろう。
そのおかげもあり、日本から輸入されているものを入手したこともある。
そう言えば、共通のメンバーのひとりがみんなにイタリア式のどら焼きを作って来てくれたことも思い出した。

「そうだ、ヌテッラも!」

息子くんが、材料に付け足す。
餡子の代わりというわけね。

わたしは、「彼の日本語の発音はいいね!」と褒めた。

別れ際、彼は日本語で挨拶しようとしたが、「おはよ……」と言いかけ、尻すぼみになる。
わたしが「チャオ、さようなら!」と言うと、「あ、そうだった!」と思い出したという表情で、「さよなら!」と元気よく繰り返した。

イタリアの小さな日本ファンをまた発見。

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