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小粋な黄緑のシニョーラ

ガラスのボックスになっているバス停で、ベンチに座ってバスを待っていた。
なかなか来ないなと、ふと顔を上げたら、後から来たシニョーラ(マダム)の立ち姿が目に入る。
パッと見て、視線が吸い寄せられた。

彼女のその日のコーディネートは黄緑がテーマなのであろう、そして、ベージュとカフェラテブラウン。少しゆるやかなトップスには台形のような幾何学模様でそれらの色が散りばめられていた。それに、ボトムスにはベージュのパンツ。小ぶりのバッグとシューズは黄緑。耳にはぶら下がりタイプの大げさではないピアスをしていたが、パールがかったおはじきのような丸いモチーフも淡いグリーンで、口の中で爽やかな甘さが広がるキャンディのようだった。綺麗な色。

バスがそろそろ来るかという頃、シニョーラはおもむろにFFP2マスク(日本の防じんマスクDS2に相当するもので、サージカルマスクより感染予防用)を取り出して身に付けたが、そのマスクも黄緑で、コーディネートにぴったりだった。
最初に見た時からサングラスをかけていたので、目の色は見えなかったが、もしグリーンだったらまたお揃いだなぁ、と。

今やマスクを着用している人はかなり限られてはいるものの、少し前から、それ以前よりはぽつりぽつりと見かける。(本当に少数だけれど)

日本では、わりと淡いニュートラルな色のマスクでナチュラルに顔に馴染むように装着している人が多いように思われるが、イタリアの人ははっきりした色合いのマスクが多く、服装の色とコーディネートしている人も少なくない。そこは、国民性の違いがよく見られる。
日本ではまた、黒や紺などの色のマスクは、特に女性には敬遠されている傾向があるようだが、こちらの人たちには、かなり選ばれていると見受けられた。イタリアというと、カラフル、ヴィヴィッドな色合いを思い起こされる方も少なくないと思う。実際にそういう色のものを身に着けやすい社会環境である一方で、ブラックコーディネート・アイテムもかなり好まれているゆえ、ダークカラーのマスク人気も納得できる。

ファッションは自分の気分を引き上げるのと同時に、外から目にする他の人にも影響を与え、印象に残るものだなと、また再確認した束の間の出会いだった。


文中のバス停ではないけれど、電灯の下の所がバス停

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