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キッチンの窓から眺む絵画

わたしは家のキッチンの窓から見える風景が好き。

白い窓枠があたかも額縁のようで、その向こうの景色は描かれたかのよう。

それは、借景とでも言えるだろうか。
裏手の家と言うか、向こう側の家と言うか、とにかく、隣人宅とその敷地の様子が、四季折々、天候によって移り変わる景色。

絵心があったら描きたいという欲求がむくむくと沸き上がってくるようなランドスケープ。

木工職人さんが工房として使っていた建物。
壁は白地だが、月日を経て汚れた様子を風合いがあると言い表せる雰囲気。
煉瓦色のテラコッタの屋根には、時々、鳥がとまっているところも見える。
年季が入った木製の扉がまたよいのだ。
(ただし、こうして、眺めを楽しむには、という意味だけれど)

以前は、2階と3階に行く外階段の下に、ウサギ小屋があった。
非日常的でおもしろいと思っていた。
日本人のクラスメートが来た時に、キッチンの窓から一緒にウサギを見たのを覚えている。
「可愛いんだけど、食べちゃうんだよねぇ」と、彼女は言った。
彼女もわたしも、すでにウサギ肉を食べたことがあった。
その小屋にいたウサギが食べられて、もういないのかどうかは分からない。

この州はアーチの形で細長く、海と山が近く、他の州に比べると土地が限られていることもあり、牛や豚などをたくさん育てられる場所もないため、伝統的な郷土料理の肉料理としてはウサギ肉が重要だったようだ。
ウサギのリグーリア風というメニューもある。
ウサギ肉を煮込んだ料理で、やはりこの地方のタジャスカオリーブやローズマリーなどが入っている。リグーリア料理レシピ本で確認したら、ウサギ肉の料理だけでも6品あった。

この春は、風が種を運んで来たであろうヒナゲシの花が群生していた。
まだ、その花自体は所々に咲いてはいるが、草もぼうぼうになってきたこともあり、そこに咲いていたヒナゲシは数日前に草と一緒に刈られたようだ。

新たに色を添えるのは、今か今かと待っていたノウゼンカズラの赤橙色(レディッシュオレンジ)。
外階段と壁の所にフォトジェニックに葉が絡まっている。
今週初めに咲き出したところで、見頃はもう少し先。

夏の風景が始まった。

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