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TV: 時代劇 #1 | どうする家康

備忘のような ただの薄味感想記事です。
情報の新規性は全くありませんので あしからず。。。


TVの時代劇は 民放各局ではもはや 再放送枠以外はほぼ新作がない ”オワコン” 状態となっているため 観る人が減り 京都などの老舗撮影所やかつら製作なども 関連業界の苦境を導いている と認識しています。

でも 年齢のせいでしょう 多種多様な雑音や活動に溢れた現代から 余分なものが削ぎ落とされた日々の生活と それに伴う静謐な時間の上に語られる台詞を とても心地よく感じます。

勿論 時代劇にも色々あり 波長の合わないものも多数存在しますので
例えば 最近のNHK大河ドラマは その年のテーマ次第で観たりします。

ところがネットニュースなどで見聞きする最近のNHK大河は不評なものが多いようで(去年の鎌倉殿は好評だったようですが)
今年の 『どうする家康』も例外でなく 「視聴率が芳しくない」、等々の厳しい言葉を見かけます。

戦嫌いの頼りない主君と弱小家臣団が 戦国の力関係に右往左往する日常から始まります

信長、秀吉、家康を中心に据えれば エピソードに事欠かず お話が盛り上がらない筈がない、と期待したのは素人の故です。
初回から観ていたんですが 生憎 諸事情により数ヶ月後から暫くご無沙汰になり 確か10月頃の朝鮮出兵辺りから再開して今日に至っています。


それで:
見ていない中盤は ひょっとして中弛みしていたかもしれません?けど
本作は なかなかどうして 面白いなぁ と感じます。
逆に なぜ批判するコメントをよく見かけるのかが 理解できません。

ジャニーズ事務所が多くの番組製作側に圧力を掛け、更にこの番組は主役の松本潤が事務所の威光を笠に着て現場を牛耳っている など 黒い噂もあるようですが(そういうのがよろしくないのは当然として 後者は証明されてませんから)視聴者にとって 作品は 観させてもらうものが全てです。


ということで薄口レビューみたいなものを。

はじめに 自分にとって やや合わなかった点から。
* 評価というものはなべて相対的なものですから いいですよね?

放送初期の 家康/竹千代が今川義元側の三河武士団の棟梁だった頃(=すみません特に日本史の基礎知識に乏しくこの箇所含め怪しい記述に溢れるかもしれません)に 合戦での敵陣や馬を駆るシーンにCGが多用されている感じに 少し違和感がありました。
* CG/VFXだから限界はあるのは無理もないですけど。
なお これは新しいコスト削減などを狙った新しい試みだったと後で知りました。それは良いんですけど 敵陣/城のミニチュアがちょっとちゃちに映りました(でもお金かけるの嫌いなんですけどね。絵で良かったかも。)

そして
現代的言葉遣いが過ぎる点は 本作に限らず 昭和の大河ドラマのそれに比べ むべなるかな とは思えます。
しかしそれは相対的な違和感で 令和の我々に昭和大河の台詞で話されても理解されないでしょうから そういうものと受け止めざるをえないでしょう。
*逆に 昭和大河の言葉遣いは、明治人からすれば違和感ばかりでしょうし。その時代に応じた旬がある、ということですね。

それと
昭和大河に慣れている世代から批判されそうなのは 例の三谷脚本によくある コメディタッチな演出じゃないでしょうか。
でも それ 平成以降の大河では当たり前で 違和感を感じる人のほうが少数派なのかなと想像します。特に本作は 若い放送回で家康の弱さと若さを全面に出す脚色ですし 家康家臣団が宴席で海老おどり?を披露するコメディタッチはその狙いに良く馴染んでいたと思います。

さらにさらに
個人的に馴染まないのは(本作に限らず最近の大河ドラマでの)登場人物の華美過ぎるお召し物です。
絹織物であったとしても あんなに鮮やかな発色 -- というか発色の振れ幅 -- が可能だったのか? 当然 時代考証スタッフさん達が検証しているのでしょうけど 監督方針で敢えて鮮やかな着物を採用している作品も過去にあったと記憶しています。
事実はさておき 個人的には現実味が減り 興を削がれるんですよね。

あまり小言を並べるのは本意ではありませんけど
折角なのでついでに言えば
主従/上下関係の表現にはもう少し配慮して欲しいかな と感じました。

例えば太閤/主君の秀吉に 「猿!」 と直言したり
天下人の父の衿口を掴み「やめろ!」と嘆願したり。。。。

戦国の世に 言葉でも態度でも 主君(しかも天下人とそれに近い人達)をぞんざいに扱ったり 友達のような口を効くのは、、、、いや そういう時代だったのかな、、、自分が想像した世界が正しいと限りませんし。。。

胸倉掴んでます

ここから肯定的な感想に移行します。

暫くの空白期間を経て 再び画面の前に戻る事になったのは 確かネット記事で北川景子が二役でお市の方と淀君を演じると知ったからです。

信長の妹 お市の方

彼女が 毅然とした母の役から一点 蝶よ花よと育てられたのか奇矯そうな茶々を二役で演じる様子を 鉄砲を手にして猟奇的な表情のスチル写真で見て取り 非常に興味が湧きました。

娘の茶々(これはコワい)

TVの前に戻った時期は 秀吉ご乱心と朝鮮出兵の辺り、つまり終幕に向けたシリアスな展開が続く旬の頃でした。
結果として 「魚の頭と尻尾を喰う」ような 今で言う ”タイパ” の良い観かたになっていたのかなと思えます
(古い輩なんで タイパってのは嫌いですけどね。)


脚本について 現代的だなと感じた点は:
お市がかつて竹千代に好感を抱いていたこと(=何故そういう脚色にしたかを序盤で悟れませんでしたが)、
娘時代の茶々が母の思いを通じて家康を思慕していたこと、 
その見えない糸が 茶々が淀君に成長しても維持され潜在的に繋がっていた、という 仄かなラブロマンス仕立てです。
側室の数は権力に比例するでしょうから脇に置くとして
普通にモテまくる家康公は誰の想像をも越えて新鮮な演出だと感じます。


NHKが視聴率テコ入れのため計らったのかは不明ですが
本編の強い援護として NHKの番組 『歴史探偵』で 関ケ原や大坂の陣の解説をしていたことも 作品世界の背景に深みを与えてくれました。

例えば 真田丸の物理的な構造や 用いられた兵器の解説がそれで
先週本編放送回で登場した ”大筒”には 『歴史探偵』によれば 家康が三浦按針経由でオランダから買い付けたものが含まれ 実験でその威力を紹介したVTRを観たお陰で 本編での説得力がいや増しました。

外国製の大砲は射程6km以上だったそうです。
天守閣に直撃させたとは圧巻。。。

ここでちょっと横に逸れますが:
徳川軍が大筒で天守閣を狙うシーンの 家康が息子に戦の愚かさを説く場面に家康の落涙は不要ではないか と感じました。
孫娘を失うだろうリスクと隣り合わせの狂気の砲撃を執り行うしかないことに葛藤があった故かもしれませんが
戦しかない怪物を自分自身とまとめて次代のために葬り去りたい とする家康の 人としての善悪を通り越した 怒りに震える形相の方を見てみたかったと感じるからです。

ここは本作の大きなテーマに繋がっているかもしれず 最終回を観るまでは 送り手の意図をまだ完全には汲み取ってはいけないんでしょうけど。


完全に好みの話ですが 配役についていくつか書き留めます:

本多正信
シニカルな物言いの役回りが非常にいいです。曲者好きなんで。
松山ケンイチはこの役で大河に少しリベンジできたでしょう。

真田信繁(幸村)
この俳優さんの兜付けたスチル画像が非常に男前で
昭和の大スター夏八木勲や千葉真一といった面影を感じたのですが
なんと数年前の仮面ライダーの線が細く若いお兄ちゃんだったとは。。。
確かまだ20台前半だと想像しますが、いやー良く化けました。
これからの日本時代劇を支える力になって欲しいと嬉しく感じます。

井伊直政
中性的な彼は仮面ライダー作品に出演してましたね。
(申し訳ないですが 線が細すぎて私的にはちょっと本作にはミスキャストと感じましたけど。赤鬼ってイメージでもないですし。)

阿茶局
この女優さん 去年あたりから昼メロでブレイクしたそうですが 15年くらい前に仮面ライダー作品でお見かけしてました。
仮面ライダー出演者はなにかの理由でNHKに強いのかもしれません。
必ずしも美男美女でなくても、選考された時点で役者としてのポテンシャルがきっとあるんでしょう。

石田三成
朝鮮出兵のころ この人と関ケ原で対峙するのって迫力的にどうなのかな
と思ってましたが それはそれは気迫の演技でした。


ということでまとまりは一切ありませんけど
抑制の効いた展開の大河ドラマを観ていると
戦国の世でも どういう世界であっても 戦いに勝つための構成要素は
経済力、技術力の反映である兵器、海外を含めた仲間造り、交渉力、柔軟な思考法、そして、、、、のような 自己満足でしかない思いをあれこれ巡らすことができ 頭の気分転換になります。

そして 人間関係の問題に対する最適解がただの直線思考や二元論にはないことなど 権謀術数の中に多くの示唆があることに気付かさせられます。
本作で言えば 関ケ原から二度の大坂攻めの背景に浮かぶ人々の業も 感慨深いですね。
徳川軍が大坂の陣でも圧倒的優位でなかったことを知ったのも新鮮でした(=不勉強なだけ。)

PCも車もスマートフォンも そもそもガソリンも電力も無い 公私共に現代の自由度が削ぎ落とされた古い世界に夢想するのは 気分が落ち着きます。
こうして何か書き残したくなるのも きっとその効能の故なんでしょう。

横浜の總持寺さん

<おまけ>
北部九州出身者のくせに 恥ずかしながら 名護屋城 のことを知りませんでした。。。。

こんな感じだったそうで 

期間限定ではあるものの 戦国武将が一同に介し 巨大経済圏を形成したこの歴史的な場所ですが 現在は建造物の足場しか残っていないようです。
そかし歴史上の有名どころが揃って足を踏み固めた場所であることに相違はありません。
来年以降で 『唐津くんち』を観に行く際に 当時の 徒花のような特異点と言えるような城跡に立ち寄って見たいと感じます。


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