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詩人の墓にて (At A Poet's Grave, Francis Ledwidge)私訳


詩人の墓にて

友なるパイプを置き
愛する花を散らされひとり 眠るとき
わたしの心に兆したうたは
自然のなかにあらわれる

ここに心やさしき詩人が眠り
歌われなかったうたをわたしは聞く
吹く風に花々は揺れ
アリウムの花房が鳴る

原文(参照

When I leave down this pipe my friend
And sleep with flowers I loved, apart,
My songs shall rise in wilding things
Whose roots are in my heart.

And here where that sweet poet sleeps
I hear the songs he left unsung,
When winds are fluttering the flowers
And summer-bells are rung.

Anúna My songs shall rise

Anúnaの主催Michael McGlynnはこの詩にメロディーをつけたものを作曲、「My songs shall rise」と別のタイトルを付して発表しました。
アルバム「Songs of the Whispering Things」において、この曲のタイトル表記は「My songs shall rise(from "At a Poet's Grave")」となっています。

補足

Anúnaの曲のタイトルともなっている「My songs shall rise」は詩の第一パラグラフ3行目から引かれたものです。
動詞riseはのぼる、上昇するという意味ですが、神学用語では(キリストなど)死者が蘇るという意味合いがあり、ここではこちらのニュアンスを意識していると思われます。とはいえ「roots are in my heart」という表現から、上昇運動のイメージも皆無ではないでしょう。
(拙訳では「兆す」としていますが兆すは萌すとも書き、根を持つ植物が地上に芽生くという意味合いもあります)

亡くなったのは詩人、poetですが彼が遺したものも、作者自身が亡くなった時にあらわれるだろうものもいずれも歌われるもの、songsである……つまり、poetとsongとがこの詩の中ではほぼイコールの概念として書かれています。このあたり、詩の朗読や歌による物語りの文化があるアイルランドらしいなと思います。

なお冒頭一行目、When I leave down this pipe my friendの「pipe」は楽器でも煙草でもどちらでも解釈可能と思うため、そのまま「パイプ」としました。


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