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できたらいいな、だけじゃない

まずはじめに、この投稿は“映画ドラえもん「のび太と空の理想郷」”について書いています。ネタバレをたっぷり含んでおり、これから観る予定のあるかたは、読まれないことをお勧めします。


ドラえもんの映画というと、幼い頃に親に連れてきてもらった映画館の思い出や、地域の公民館的なところで行われた上映会で観たり、テレビでは夏休みや年末にあるスペシャル番組などで見たりしたことがある方も多いかと思います。

年代によって作品が異なることもあり、どの作品が印象的だったかは生まれた年によって違っていたりします。ちなみに、僕が6歳だった1988年は”パラレル西遊記”でした。

公式サイトを発見しましたが、2006年からのリストでした・・。


今作は、のび太がテストや苦手な運動がない「ユートピア」に行きたい・・と、いつものように現実からの逃避願望を語るところから始まります。

世界にある理想郷伝説の真実を確かめるため、ドラえもんを巧みに”たきつけ”て、道具を準備させるのは、のび太の賢いところかも知れません。

ドラえもんの道具によって、時空を超えた別世界へと旅立つ場面は、いつ観てもワクワクします。

そんな旅の中で、今回の舞台となる「空に浮かぶ三日月の国、パラダピア」の住人である、猫型ロボット「ソーニャ」と出逢い(攻撃され)、彼の住む国で過ごすことになるのでした。

パラダピアは、パラダイスとユートピアを掛け合わせた言葉・・その言葉の通り、誰もが理想的な暮らしを手に入れて、理想的パーフェクトな人物になっていくという、のび太が夢見た理想の国。

平和で、穏やか、友好的で、温かい・・そんな人たちに迎えられて、彼らも小学校に通いはじめました。

ただ、のび太が夢見た小学校とは違っていました。苦手な運動と、苦手な計算が一緒になった「算数体育」の授業では、のび太だけがなかなか前に進めません。

日を追うごとに、ほかのみんなは優しくなって励ましてくれます。のび太は、いつものように劣等感を感じつつも、何か”おかしい”と気がつくのです。

理想の国、平和な楽園、そんなふうに見えていた場所が、物語の後半で、実は大きな実験の場であったこと、一人の科学者による壮大な計画が進行中であったことが明らかになり、のび太の奮闘が始まります。


言葉を選ばずに言えば、物語の中盤あたりから、のび太以外の人たちは、何かを信仰しているような、何かに洗脳されているような雰囲気に見えてきました。

映画ではいい奴になると評判のジャイアンも、いい奴を通り越して怖ささえ感じる好青年ぶり。静香ちゃんのにっこり顔も、ゾッとしてしまうような場面でした。


映画の冒頭、ドラえもんの映画の影のレギュラーメンバー、タイムパトロールが登場します。その視線の先には、あの“パラダピア”。

後からその意味が分かるのですが、なかなか今までの映画ドラえもんにはなかった世界観のようにも感じられました。

理想の国を作るのは、人の心を操り、国民を言いなりにして、君主の思いのままに動かしていくようなものなのでしょうか。

かなり穿った視点とは思いつつも、ある種の宗教を思わせる世界観、そして戦争がない平和の意味(映画で描かれていることだけが帰結ではありませんが)を考えさせられる内容でした。


ただ、映画としてはいつものドラえもんらしい、時空を超えた仕掛けもあって、大人(特に僕)には、なかなか感動的で、気がついたら涙を流していました(笑)。

(後ろの席の人、笑うシーンじゃなかったのに笑ってたな。)


終盤、ソーニャが怒るシーンのセリフにハッとさせられました。

「・・やりたいことも、やりたくないことも、自分で決めないと・・」

やりたいことを決める、それは何度となく言われてきた「自分らしい生き方」の答えのようなものですが、そこに「やりたくないこと」も明示されるようになるとは。

確かに、やりたいことだけじゃなくて、やりたくないこともあるし、それを避けて好きなことをやるのはストレスが減ることも知っています。やりたくないことをはっきりと知ることで、パフォーマンスを上げるという発想は、今では当たり前かも知れません(実際には、うまく行かないものですが)。

幼い頃の僕がよく耳にしていたドラえもんの主題歌には、「こんなこといいな、できたらいいな」という歌詞があります。”できなかったらいいな”なんて、後ろ向きで否定的な言葉に感じてしまいますが、”やりたくない”という気持ちも大切だということを、改めて考えてしまいました。


これは全くの個人的な感想ですが、空に浮かぶ国とか、黒幕の科学者のキャラクターがどことなくジブリっぽくて、真新しい感じがしなかったのは、大人にとってむしろ嬉しい時間でした。

エンドロールでは、未来の世界で暮らすソーニャが描かれているのですが、ソーニャのそばに2人の子どもがいて、よく見ると、のび太と静香ちゃんにそっくりなのです。性別が反対になっていますが、これはひょっとして・・と思うと、また泣けてきました。


これだけネタバレをしているので、もはや映画を観ても感動しないかも知れませんが(笑)、ドラえもんの世界観に浸りたい方はぜひ。

長くなりました・・最後まで読んでいただきありがとうございました。


#映画 #ドラえもん #ネタバレ

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