かぐや姫の真相 【創作】
「みー、気がついちゃった!かぐや姫さんって、月に帰ったんじゃなくて、もしかして死んじゃったんじゃないの?!」
衝撃的な推理を披露したのは、小学校に入ったばかりの娘だ。このごろは涼しくなって、学童からのお迎えも楽になった。
娘は、”得意げ”を顔に描いたかのように、目が大きくなって、鼻の穴も広がっていた。超常現象を信じないとか、怖い話が嫌いとか、そういう類の発想ではなくて、何か真相を暴いてしまったかのような口ぶりだった。
「そんなことないと思うけどね・・・どうして、みーちゃんはそんなことを思ったの?」
「だってさぁ・・・、月に帰るって大変だよお。38まんキロもあるんだって!ずーっと歩いていくと、11年も歩き続けないと行けないんだってー。わたし、オトナになっちゃうー!」
地球と月の距離について、学校で先生が話してくれたのか。子どもは時間の流れが遅いからなぁ・・オトナになるにはちょっと早いけど。
「ははは、そりゃ大変だなぁ。みーちゃんかぐや姫が、オトナになっちゃうなら、本当のかぐや姫は、おばあちゃんだね。」
「ちがうんだって。かぐや姫さんは、ほんとうは病気でさぁ。それを誰にも言えなくてさぁ・・」
「へ?・・び、病気?そんなのお話に書いてなかったよね。」
「それはそうだよ。だって、悲しいじゃん。かぐや姫は、死んじゃいました・・って書いたら、誰も読んでくれなくなるでしょ。だから、おじいさんは嘘を吐いたんじゃないの?」
あれ?かぐや姫の作者って、おじいさんだったっけ。読んでくれなくなるって、誰目線なの。
「うーん、お話を書いたのはおじいさんじゃないと思うけど・・」
「月ってさぁ、着いてくるじゃん。自転車乗ってても、車に乗ってても、ずーっと追いかけてくるじゃん。それって、月がみーのこと好きってことでしょ。」
「そう・・だね。月って追いかけられる感じするよね。パパも子どもの時、それすっごい怖かったんだよ」
「えー!怖くないよ、だって、好きー!なんだもん。」
今夜は、お月見・・大きな大きな丸い月が空に浮かんでいた。
「みー、かぐや姫さんは死んじゃったんだけど、そうじゃなくて月に帰ったんだ・・って思ったら、なんだかすごく嬉しくなっちゃったの。」
「・・そうだね。そうだ、そうだ、月に帰ったんだよね。月から、見てくれてるんだ・・」
分かっていたはずだったけれど、堪えきれなくなった。
ほおに雫が伝う。
「きょうはママの誕生日だったんでしょ!だからお月様が、こんなに大きくて、近くに来てくれたんだと思うよ。みーちゃん、大好きーって!」
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