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お妃様のお気に入り #書もつ

今日は12月23日、数年前までは祝日でした。誕生日が祝日というのが、なんか羨ましいなぁと子供の頃は思っていました。

例えば王様の誕生日は祝日、というのは、制度が誰によって作られたか、それを如実に表している感じがします。いい悪いということではなくて、それが権力なのだと分かるというか。

さて、そんな誕生日を迎えた方の奥様が「愛読している」と数年前に公言して、一躍注目された作品を紹介します。

イギリスの作家の翻訳小説、と聞くととても高尚な感じがしますが、その実、読んでみると・・。

ジーブスの事件簿 才智縦横の巻
P・G・ウッドハウス

痛快という言葉の用例として、彼を推薦します。皮肉っぽいイギリスの雰囲気と、テンポ良く進む物語には、とても遠い世界だけれどもとにかく楽しい気分になりました。

周囲の人が変であればあるほど、彼の秀逸さに磨きがかかり、ついついこちらにも助けに来てくれないだろうかと勘違いしてしまうようでした。

事件簿と言うにはやや軽薄ですが、なるほどイギリスの文化的断片を感じる良作です。次巻も読みたいなぁ。

読書メーターの感想にも書いたように、なんといっても「痛快」のひとこと。独特な主人に使える、頭の良い執事という役柄が、劇を見ているように鮮やかに像を結びました。

それにしても、お金持ちの世間知らずぶりはどこの国でも同じだし、読み手はそういう人格を期待して読み始めています。

庶民の感覚とお金持ちを小馬鹿にしたような言動をする主人公に、知らず知らず自分を重ねて、一緒に小馬鹿にしているような感覚、意地悪なのか同情なのか。

物事の考え方、疑い方、批判的な考え方、そんな視点を彼から学び、他人の言動にも鋭くなれる読み終わりでした。さすが、あの方が読んでいるだけある、と同時に、あの方が読みながらニヤニヤ(言いかた笑。・・にこやかに)なさっているのを想像すると、楽しくなってしまいます。

この作家さんのほかのシリーズもまた、皮肉っぽくて、イギリスの文化がしっかりと描かれているのが印象的です。

イギリスって、こんな感じなのかなぁと、ちょっと不安になりつつ、あのバンクシーも生まれた彼の地が持つ、暗鬱な雰囲気を知る良い作品でした。

小馬鹿にしているようで、それは冷静な客観性。批判しているようで、それは正確な現状把握なのだと気がつきました。

頭がいい人は、誰にでも分かりやすく説明ができる、あるいは誰も分からないことを話す、のどちらかであると聞いたことがありますが、彼は前者であり、読み手も前者でありたいと思うのでした。


何が始まるのか・・舞台の緞帳のようでもあり、お金持ちのお屋敷のカーテンのようでもあり・・ほくそ笑む羊の執事が、いくばくかの不安を与えてくれます(笑)サムネイルの作成いつもありがとうございます・・。今回は、とてもタイトでした(書くのが遅い僕がよくないのですが・・・)infocusさんありがとうございます!


#推薦図書 #ジーヴス #イギリス #皮肉

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