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2度目のモラトリアムのこと

モラトリアムとは、なんとも柔らかそうで実体のない感じがします。初めて聞いた時、僕は、薄暗い室内の、モヤモヤとした気体が天井にある博物館のようなイメージを持ちました。

よく和訳されているのは「免除期間」。免除されるのは多くは労働でしょうか。就職までの間のことを指すことが多いので、大学四年生の時期を指すこともありそうです。(本来は、大学も就職もない期間のような気はしますが。)

僕は、そんなモラトリアム期間が2つあります。

ひとつ目は前述の通り。もうひとつは、会社員から公務員に転職した時、試験は一般職員と同じタイミングだったので、9月頃には終わってしまい、およそ半年ものモラトリアムが発生したわけです。

それまでの会社では、今ではブラックだと言われてしまうくらい働いていたこともあって、働くのは好きでした。だから、試験が終わって、バイト先を探しました。

あれこれと探しているうちに、ひとつだけやるのではなく、掛け持ちをしてみたらいろんな経験ができるよね、と考えて単発系のバイトをいくつかやってみました。

・イベント運営
・コンビニの早朝シフト
・通販のテレアポ

ほかにも、本屋とか無印とかやってみたいことはありました。しかし、期間は半年だと伝えると「それはちょっと」と言われてしまったのです。

イベントは、都内の各地で発表会や展示会、学会などで動線を案内したり、入り口の整理をしたりしました。会員制バーゲンなどの会場もあり、業務後に会場で買い物ができました。

人見知りと自覚していましたが、現場では逃げられないので、よく鍛えられました。理系の学会で、英語が飛び交う中で緊張しながらタイムキーパーした(チーンって鳴らすだけなのですが笑)のが印象に残っています。

コンビニは学生の頃にもやっていましたが、社会人になると明らかに早起きが得意になり、問題なく起きられました。早朝シフトは人気がなくて、オーナーが入ることが多いらしく、重宝されました。

決まったお客さんとの、定型的なやり取りが好きでした。学生の時と、社会人の時、どちらも“7”でお世話になりました。

通販のテレアポ、テレビやラジオの局の名前が入った通販でした。今でも放送されているのではないでしょうか。公務員になってから、一度油断して、電話でテレアポ時代の名乗りをしたことがあります。相手は驚いてたでしょうねぇ。

このテレアポがとても楽しくて、当初3日間の限定で採用されたはずが、営業成績が良かったらしく、“継続を打診されずに”継続されてました(笑)シフトにいつのまにか入っていたのです。

基本的に聞くことということは決まっていて、手元のパソコンにデータを入れ込んでいく作業を効率化しました。注文が落ち着いた時に、辞書機能に定型文をいくつも入れておきました。

じや:時間指定あり・夜間
たふ:宅配ボックス不可
ほげ:本人受け取り厳守

のような言葉を入れておいて、聞き取り中にシステムにすべて入れ込んでいきます。男性が通販の受付にいると、相手側がびっくりすることもありましたが、持ち前の穏やかさ(笑)を発揮して、トラブルになったことはありませんでした。

バイトを辞める直前に、来月から時給200円アップを打診されましたが、公務員になることになっていたのでお断りしました。あの評価は嬉しかったですね。

モラトリアムとは言いながらも、毎日ように働きつつ、旅行したりしていました。あの時の経験は、今でもありがたかったと思います。

通販のテレアポをしていたことを話すと、必ず聞かれるのは「限定数ってホント?」という質問。

僕がいた会社では、限定数は「本当」でした。テレビで言ってた数しか売れないことになっていました。

このご時世では、僕のお世話になった皆さんはとても大変な思いをされているかも知れません。イベントはないし、テレアポは密室だし。

働くことの視野を広げてくれた、2度目のモラトリアムでした。


#モラトリアム #アルバイトの思い出 #はたらく #接客

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