見出し画像

映画セッションと映画BLUE GIANT個人的比較

ジャズを扱った両作品を短期間で見る機会があったので、相違点と類似点を考えてみました


1.師の存在

セッションにあって、BLUE GIANTにはないもの
最も大きな違いはこの点かなと思います

セッションは、パワハラモラハラ暴言満載な今ではアウトすぎる指導者と、いまいち才能の芽が伸びないドラマー学生との衝突が主軸に描かれています

対して、BLUE GIANTの主人公大は半年間だけ地元の師に習ったものの、基本的には河原でひとりサックスを吹き続けるといるという練習スタイルを、地元で3年上京してからもずっと続けています

映画しか見ていない勢なので
大がジャズを始めたきっかけは?とか
なんでそんな特別上手いの?とか
疑問に思うことはいくつかあるのですが、映画で浴びる生音に、私のような初見の観客の疑問も封殺されてしまいました

俺と組むか俺の演奏を聞いて決めてくれと雪祈に告げ、はじめて大が観客ありきで演奏する場面

演奏後、雪祈が顔を背け、大が出て行った後肩を振るわせるシーンでは、雪祈の心情に察して余りあるものがありました

本物の実力を持った人物に打ちのめされたら、演奏への感動と自分と比較しての嫉妬がないまぜになって、心中荒れまくるだろうなぁ、と

話が逸れてしまいましたが、少なくとも映画の中で大が自分の実力のなさに打ちひしがれる場面は描かれていなかったように思います
自分の演奏を観客に聞いてもらって、世界一のサックス吹きになる、という夢は綺麗なまま汚れることを知りません

※繰り返しになりますが、あくまで映画内での話です

対して、セッションの主人公アンドリューは、最初から最後まで基本的には指揮者からのダメ出しのオンパレード

「俺は悔しい」と何度も叫ばされる場面もあります

アンドリューは、師への反発もエネルギーにして、ガールフレンドにも別れを告げ、ストイックにドラムへとのめり込んでいきます
中盤、バスに轢かれて血だらけでも演奏会に出ようとする彼のドラムへの情熱と執着は、鬼気迫るものがあります
アンドリューを徹頭徹尾貫く最大の原動力は、指導者への反骨精神なのではないかな、と感じます


2.仲間の存在

続いては逆に、セッションにはなくて、BLUE GIANTにはあるもの

サックスの大にとって、ピアノの雪祈とドラムの玉田という同年代の仲間が重要な役割を果たします

音楽に対する価値観や育った環境や音楽歴もバラバラな三人が、お互いのことを徐々に理解しながら、「ずっと組むものではない」と言われるジャズバンドにおいて、それぞれ成長を見せていく様は大きな見どころだと思います

一方、アンドリューは作中でも学校に友人はいないと明言しています
同年代の学友として描かれるのは、主奏者の席を取り合うライバルたち
元々主奏者だった者の楽譜を無くしたことで、たまたまアンドリューが主奏者に昇格したり
誰も早いリズムを正確に叩けず、出来るようになるまで順番にひたすら練習させられたり

あくまで強調されるのは、ライバルとしての学友であり、選ぶ指揮者と選ばれる学生という関係性の内においてです
プライベートな付き合いは描写されません

こうした点によって
アンドリューの孤独やそれゆえのストイックさが、より強調されます

はっきり言って、アンドリューと指揮者の関係は異常です

暴言を吐き合い、復讐し合い、それでいて最後には最高のセッションをする

文字通り言葉にはできかねるお互いへの複雑な思念と歪んだ関係性にぐへぇとなります(刺さる人にはめっちゃ刺さると思います)
私個人としては、刺さる以前にちょっと引いてしまう感情が前に来ましたね……笑

お互いへの妄執を募らせてやる演奏は、技量としては最高のものであっても、理由としては不適切というか

ただ、セッションのラストに対しては
ただの盛大なオナニーじゃん
と思っちゃいました

観客不在のセッション

ジャズは感情の音楽らしいので、それもありなのかもしれませんが……

セッションで描きたかったものは、BLUE GIANT然り青春熱血(?)モノにみられるような熱い友情ではないから、これで正解なのだとも思います

泥臭いところまで描かれてるのはら日本の作品だと
将棋の『3月のライオン』
演劇の『ダブル』
とかかなと思います
(寡聞の身でして、他にもあったら教えていただきたいです!)


3.類似点

両作品ともジャズの演奏&曲が素晴らしいです!
これだけは声を大にして言いたい
音響の良い映画館で観ると格別だろうなぁ、と

特に指が血だらけになるようなドラムの練習の大変さは、この二つを通じてはじめて知りました

また、どちらにも blue noteというワードが出てきていたのが個人的には胸熱でした
やはりジャズの世界を目指すならあそこなのか……と


4.さいごに

今回、普段触れないジャズという音楽の世界に対して、少しばかりですが見識を深めることができました♪

エンタメを通じて自分の世界が広がっていくのはやはり楽しいものだということを久々に実感できました😌

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?