見出し画像

【読感】あの十月十日はどんなだっけ

月に一度、近所の神社で朝市が開かれます。
農家さんの野菜やお母さん方の手芸の作品が並べられ、お買い物にもお散歩にも最適。
そこまで広くはない境内は毎度程よく盛況で、ご時世でしばらくお預けになっていた縁日の真似事(ヨーヨー釣りや駄菓子の販売)に子どもたちの目もキラキラ。
爽やかでとても素敵なイベントです。

その中でも私のお目当ては個人で古本を並べている方々。
半畳分のスペースでは持ち込む本の数も限られて自ずと品揃えが面白くなるし、思わぬ出会いがあるものです。



そういうふうにできている  さくら ももこ

私にとって初めての、まる子ちゃん以外のさくらももこ作品。
さくらももこさんご自身の妊娠・出産の記録エッセイです。
たった十月十日。されど十月十日。
望んでいたはずなのに『まさか私がお母さんに…』とどんどん不安定になっていく心と、元気だけど元気じゃない身体の変化が飾らない言葉で正直に綴られています。


私自身も出産の経験がありますが、妊婦の頃は毎日が『痛いつらいどうしよう最高ハッピーやばいしんどい嬉しい幸せダメだ最悪愛しいありがとう地獄』と感情もめちゃくちゃだったので、何かを残そうという余裕が全くありませんでした。
検診に行ったよーとか、お参りに行ったよーとか、胎動で寝られないよーとかをツイートするぐらい。
お腹の写真と共にしっかりブログを書くとか、マタニティフォトを撮るとか、そういうのやってる人めちゃくちゃすごいえらい。やっときゃよかった。
そんな幸せなだけじゃない日々をプロの文章で追体験できて、読み終わったあとはなんだかもう一人産んだような気持ちになりました。

そして巻末にはさくらももこ×ビートたけしの謎の対談も収録されています。

私がこの本を手にしたのは2020年のちょうど今頃の季節で、そのあと3ヶ月ぐらい寝かせて。
真夏の盛り、親しくしていた人が重い病を患っていると知り、信じられないと狼狽えて、何かしていないと落ち着かないとなった時に一気に読みました。
旦那や共通の友達と話しても治まらなかった胸のざわざわがすぅっと引いていくのを感じました。
人が生まれて生きていつか肉体から旅立つ時の話まで、なんてよく出来た本だろうと思ったのをよく覚えています。

きっともっとさくらももこギャグ満載抱腹絶倒エッセイ集もあると思うのですが、初めてのさくらももこ作品がこの本で良かったなと思っています。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こちらは猪狩はなさんの #はなまる読書会 という企画に参加させていただいております。

読者に寄り添った記事を書かれる方で、様々なジャンルの引き出しがあり、文章も面白くておすすめです。
素敵な企画をありがとうございます(*´▽`*)

#読書感想文  #本 #エッセイ #ママ読書 #はなまる読書会

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?