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構造設計のすすめ04 組織設計事務所における構造設計者 part3 入社試験の流れ

part1・part2にて、組織設計事務所における構造設計者について書きました。参考にどうぞ。

構造設計者を目指すにしても、職に就かないことには何も始まりません。最近はフリーランスという道もあるようですが、まだまだ十分な仕事量が得られないように感じます。

入社試験の話になりますが、対策は極めて重要です。

弊社に限った内容になってしまいますが、構造設計職の入社試験内容について解説します。

試験は、筆記試験と面接があります。
筆記試験は、構造力学、構造計画、構造用語解説と範囲は幅広く、毎年決まった内容は出題されません。そして決まった形式もありません。
以下の点に注意して対策を行うことをお勧めします。


■『直感力』を養う

筆記試験に出題される問題のうち、構造計画が大きな配点を占めています。

構造計画は、構造の最適な解、妥当な解を直感的にひらめく力が必要です。
つまり常日頃から、構造体がどのような力の流れによって成立しているのかを把握しておく必要があります。

設問としては具体的な建物をあげて『なぜこの建物は成り立っているのか。』を問うものや、『どこに部材を加えれば不安定構造ではなくなるか。』などといった構造的なセンスを問うものがあります。

キンベル美術館(レンゾ・ピアノ、Wikipediaより)
どういう構造形式、どうった応力状態だから成立している?

クイズのようでおもしろいのですが、ひらめきが必要なので対策を図りづらいところでもあります。

日ごろからいろんな建物を見て、その構造体に流れる力をイメージするクセをつけましょう。

また以下のような本を読んでみるのも一策です。これらの本は構造設計者が何を考えて仕事に臨むべきかについても書いているので、社会人になった後も非常に参考になります。

構造力学の問題も出ます。

とにかくいろんな力学的手法を知って、建築構造に慣れるしかないと思います。アイデアの引き出しは、多いほど良く、信頼される構造設計者になるには必要不可欠なものなのです。

構造力学の問題は、一級建築士に出題される程度の難易度なので、建築士試験対策だと思ってあらかじめ勉強しておきましょう。
例えば、以下のような出題があげられます。

筋交いにA×σが初期張力として導入されているときの当該架構の荷重-変形関係を示せ。
A:ブレース断面積、σ:応力度

こちらの対策は、一級建築士資格試験の過去問を解いて対策しましょう。

他には用語解説なんかも

用語解説は、『液状化現象』や『保有水平耐力』といった構造用語を解説するものです。こちらも一級建築士対策テキストなどを参考に勉強していくといいと思います。

これらは、知っているか知らないかで差が付きます。
他者を引き離すならここで点を稼ぐことになるでしょう。

またほかにも、『構造計算書偽造問題』や『過去の大震災被害状況』についてあなたの考えを述べる出題があります。
これは、建築設計界隈で過去に話題となったことや世間の情報にアンテナを張っていないと答えられないので、建築に関するニュースは詳しくチェックするようにしましょう。


■『言いわけ力』を養う

一方の面接は、どう受け答えするかが全てです。
その受け答えの中で、積極性・協調性・責任感・メンタルをチェックされます。

表現力もそのうちの一つです。
プレゼン内容をわかり易く簡潔に話す力。
そして質問に的確に答え、話すことに統一性があることが大切です。

要は『自分をよく知っており、自分を持っていること』が求められるのかなと思います。

実際、設計事務所に所属してもすべての人間が使い物になるとは限りません。高等学校でも入学した時はみな同等の偏差値であったとしても、3年間を通してみると賢い人間ばかりではなかったと記憶しています。

その中でも自分の考えを持っており、それを表に出すコミュニケーションが取れる人間はやはり重宝されます。

まぁ正直これは私の苦手な分野でもあるので、『慣れる・鍛える』しかないのかなと感じています。

受け答えが上手いということは、言いわけができることなんだと思っています。
大概、上司の指摘は理不尽な内容を含みます。それをうまく料理して返答できるかです。

■『脱力』を養う

緊張感を持つことは大切ですが、緊張しすぎると力を存分に発揮できません。

面接官も緊張をほぐそうと必死ですが、こちらからとんでもないこと言い出さない限りは

私は入社試験の際、遅刻をしました。
それでも入社できています。
それくらい緩い設計事務所であることは置いておいて…肩の力を抜いて臨みましょう。

構造設計は、計画や計算も楽しいですが、本来は良い建物を隅々まで丹念に造形することが興味の湧くところです。そのため、部材の決め方から、細部の納まりまで自分の気力の尽きる限りまで眼を鋭くとがらせましょう。

社会人になっても同じで、日々勉強し知識を蓄えることを怠れば、構造設計力は磨かれず評価されることもなくなるでしょう。

■本当に組織設計事務所で働きたいのか

組織設計事務所は比較的大きな設計事務所で、所属する人間の絶対数が大きいです。そのため在籍するすべての構造設計者が意識を高く持ち、最新の情報を取り入れ、最新の技術を駆使して設計をおこなっているとは言えません。

むしろこの世には、向上意識の低い構造設計者によってつくられた建物の方が多く存在しているでしょう。この事実は、構造設計界隈が社会的に評価され、全体としてレベルアップするためには、見過ごして通れない状況です。

あなたが、構造設計に関して意識と知識の向上をより図りたいのならば、TwitterをはじめとするSNSも有益です。Twitterには非常に有益な構造エンジニアがたくさんいて、彼らのつぶやきを読むだけでもモチベーションは上がるでしょう。

組織において上司がすべて正しいわけではありません。図面チェック時の指摘も自分が正しいと思うのなら、その正当性を示す説得力があればよいのです。またうっかりミスを指摘されたときにも、上手くごまかすことができるようになれば良いのです。

 その解決の第一歩となるものが「瞬発力」と「言いわけ力」を身に着けることだと思っています。つまり瞬時に理屈がこねられる人間は得をします。

 一般論になってしまいますが、できる人間は、上司や部下ごとにアドバイスの仕方を変えます。ほめ方も注意の仕方も変えます。その見極めがうまく、ちょっとした言い方ひとつで部下のやる気に火をつけます。部下は知らず知らずのうちに上司に導かれ、ぐんぐんと成長していきます。そして上司を尊敬し、チームとしてのパフォーマンスも向上するのではないでしょうか。それが組織力の向上にもつながり、意識の高い構造設計者が育っていくのです。

就活は学部・大学院での集大成だと思っています。そこで構築した人間関係や得た知識が就職先を左右させます。いかに大学時代に動いていたか。…も影響することでしょう。

以上です。


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