見出し画像

【地震前兆百科】陸上の動物:ネコ

■はじめに

先に公開した『イヌ』の記事では、自宅でイヌを飼っている家は羨ましいと思うと書いた。
イヌたちは、大地震が起きる前に、危険が迫っていることを「知らせてくれる」からだ。

その意味では、ネコを飼っている家も羨ましい。
イヌと違う形で、大地震が迫っていることを知ることができるからだ。
ただし、犬と違って、飼い主に積極的に知らせてくれることは少ないようだが。

ネコ(猫)は、狭義には食肉目ネコ科ネコ属に分類されるリビアヤマネコ(ヨーロッパヤマネコ)が家畜化された、イエネコ(家猫)の呼び名だ。
約9,500年前から、人間によって飼われるようになったという。

古代エジプトでは、ネコは埋葬された。
なぜならば、ネコは「神」だったからだ。
古代エジプトでは、人間と猫を一緒に埋葬することも行われ、ネコの墓には供物が入れられた。

画像5

紀元前2000年前頃になると、猫を崇拝し、信仰の対象になって行った。
古代エジプト人にとって、ネコは自然界に宿る神々が具象化したもの、神々との介添え役をする存在になったのだ。

日本では960万頭のネコが飼われている。
これは、890万頭のイヌよりも多い。
意外に思われるかもしれないが、ペットフードの事業者を中心とした85社で組織する一般社団法人ペットフード協会が2018年に実施した調査によるものだ。

イヌは、私たちががごく身近に見ることができ、地震の前にさまざまな異常行動を見せる。
そのため、やはりイヌが見せる異常行動などの前兆現象は、全体の中でも非常に多い。

すべての飼い猫ではないとしても、科学的研究によって、人間たちよりも早く地震前兆を捉えるネコたちが多いことがわかってきた。
ただし、前述のように、イヌのように危険が迫っていることをを飼い主に知らせてくれるネコは少ない。
それでも、この記事を読んで、ネコが大地震の前にどのような行動を取るかの知識を得れば、大地震が起きても飼い猫に命を助けられることがあるかもしれない。

■ネコの前兆の特徴

ネコ(猫)は、狭義では食肉目ネコ科ネコ属に分類される哺乳類だ。
先祖はヨーロッパヤマネコで、それが家畜化されたものがイエネコとなった。
世界中で多く買われているペットだけあって、イヌと同様に前兆報告は多い。

麻布大学獣医学部の太田光明教授によると、イヌは飼い主に従順で、地震の前兆を感じたら、飼い主や仲間に異変を知らせようとする。
だが、ネコの場合はイヌほど忠誠心がなく、自由きままでクールなところがあるという。

飼い主を助けたり危険を警告したりと、情深い(?)ように思われるイヌと違って、ネコは個人主義的(個猫主義的?)というか、地震の前に自分だけ逃げてしまうというケースが多く見られる。
あるいは、子供を連れて逃げる例もある。
イヌの例ほど多くの報告がないのは、いなくなるから異常行動があっても人が目にする機会がないということもあるのだろう。

■濃尾地震(1891)

1891年10月28日6時38分に発生した濃尾地震(M8.0、最大震度7相当)は、日本の内陸部が震源となった地震では最大の巨大地震だった。

東京大学・東京工業大学名誉教授の地球物理学者・力武常次氏(1921-2004)は、宏観異常現象の研究における日本の先駆者的存在だった。

画像13

力武常次氏(1921-2004)

力武氏の著書『地震前兆現象』(東京大学出版会)と『予知と前兆』(近未来社)は、地震の前兆現象を地震毎に収集した大著だが、さすがに動物前兆現象研究の先駆者による本格的な研究書だけあって、詳細な事例集となっている。
動物の異常行動については、その現象が見られた地点から震央までの距離と地震までの先行時間を記し、非常に貴重な研究データとなっている。
この地震の前兆現象のうち、「哺乳類・鳥類」に分類されたものだけでも60件以上ある。

濃尾地震の113日前に、京都府竹野郡下宇川村字中原(現・京丹後市丹後町)のある人が飼っていたネコが、前日から平素と異なり何となく騒々しい挙動だったという。

地震の数日前に、震源から87km離れた岐阜県土岐郡鶏里村柳野区(現・土岐市)で、ネコが家からどこかへ出て行ったという。

■関東大震災(1923)

====無料購読エリアここまで====

ここから先は

12,957字 / 7画像
この記事のみ ¥ 450
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

よろしければサポートをお願いします。家族を養う職業ライター・ブロガー・研究者なので、助かります。