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激しい討論&抗議デモ

前回の記事↓でPedro Sánchezの首相続投が決定した話をしましたが、今回はそこに至るまでの話。

そもそもの始まりは今年7月に行われた総選挙で左派右派両陣営ともに過半数が取れなかったことにあります(詳しくはこちらの記事を参照↓)。

実は、当初首相候補として上がっていたのはPedro Sánchezではなく、総選挙で最大得票数を獲得した右派PP(国民党)の党首Alberto Núñez Feijóoだったのですが首相任命決議で過半数を取ることができず、今回第2党である中道左派PSOEの党首Pedro Sánchezが首相候補として上がったというわけです。

今回の首相任命決議における最大の争点は、PSOEの取りまとめで提出されたCarles Puigdemontをはじめとするカタルーニャ独立運動の主導者たちに対する恩赦法案で、右派陣営はこれに真っ向反対の姿勢という構図(こちらの流れに関しても上記↑の記事を参照)。

11月15日に始まった首相任命決議に関する議会討論は、Pedro Sánchezによる1時間45分に及ぶノンストップの演説でスタート。始めにパレスティナやウクライナの情勢についての話があり、パレスティナに関しては「イスラエルに対しガザ地区での即時停戦を要求する」「新政府はヨーロッパとスペインでパレスティナ国家の承認に取り組む」と述べていました(スペインは国連の停戦決議案で日本が棄権した案の方にも賛成票を投じており、ヨーロッパ内でも独自の姿勢を示している)。

その後、新政府における政策についての言及(来年6月まで食料品のIVA(付加価値税)軽減を続行、若年層における交通費無料、低価格賃料の公的住居の拡充、同一賃金で週37.5時間に短縮、女性格差の是正、その他気候変動対策等々)や民主主義に関する言及がされ、「民主主義は憲法の中にのみ存在する」「民主主義が安全を提供する、もしくは不安定が民主主義を終わらせる」「私が首相である限り、国家総力で民主主義の遵守に捧げられるだろう」と力強く語り、また、カタルーニャに対しては「対話・寛容・許し」をキーワードに、政治的対立の解決を訴え、「恩赦は合法で憲法に合致している」と強調していました。

ただ、先日の大規模デモをはじめ、「独裁者」「裏切り者」「民主主義の崩壊」「政治の腐敗」など、右派からはさんざんの言われようだったので、当然右派に対する反論も展開されました。「PPとVOX(極右)の問題は恩赦ではなく、選挙結果を受け入れられないこと」「PPは極右に門戸を開いてしまった」等々、厳しく批判。これには右派サイドから激しいブーイング、さらに批判が続けば、またもやブーイングの繰り返しで、その度に議長による静止が入る次第。また、「我々もあなた方と同じスペイン人だ」「(スペイン)国旗はみんなのものだ」とPedro Sánchezは強調していました(ただ、この発言に関しては後の答弁で独立派に対する配慮がないのでは?と右派PPからのつっこみもありましたが)。

続いて、各党の党首・代表者のスピーチとそれに対するPedro Sánchezの答弁が行われました。トップバッターは右派PP党首のAlberto Núñez Feijóo。とにかく批判の嵐で、「恩赦は違憲」「民主主義の崩壊」「政治の腐敗」といったパワーワードを中心に、「個人的利益のために票を売ることは受け入れられない」「スペイン人はカタルーニャの独立派に謝る必要はない」「半数以上(?)のスペイン国民の意見を聞いていない」といった発言が。また、相変わらずバスク独立派のEH Bilduに対してはテロリスト扱いで、徹底的に独立派には「No」の姿勢。とにかくお怒りモード炸裂の演説で終始批判が展開され、持ち時間を過ぎてもまだまだ話し続ける次第。自身のスピーチでは右派側の野次にも負けず冷静に話していたPedro Sánchezも、さすがにこちらの答弁ではヒートアップしていました。

続いて、極右VOXの党首Santiago Abascalのスピーチ。こちらに関しては、批判というよりも暴言に近いものがあり、恩赦に関しては「違憲」であり「司法への攻撃」とした上で、Pedro Sánchezをヒトラーになぞらえてみたり、「クーデターの始まりだ」「憲法と国を破壊する」などなど、発言(暴言?)は止まらない。この「クーデター」というパワーワードに対しては、議長により発言の撤回を求められたものの、撤回するどころか「言論の自由だ」とそのままスピーチは続き、結果、スピーチを終えると、AbascalをはじめVOX議員全員が議会を退場するという顛末。

次に登壇したのは強硬左派Sumar党首のYolanda Díaz。PSOEとともに連立を担ってきたこともあり、当然首相任命には賛成を表明。主に政策に対する問題提起に終始し、全体的には応援演説という感じのスピーチとなっていました。

その後カタルーニャ独立派2党のスピーチが行われ、初日のセッションは終了。残りの少数政党のスピーチと答弁は翌日16日に行われましたが、カタルーニャの政党を含む少数政党のスピーチに関しては長くなってしまうので、続きは次回の記事に。

ちなみに、大規模デモとは別にマドリードのPSOE本部前で過激な抗議活動が連日行われていたのですが(16日間連続で!)、こちらは極右VOXの主導で行われていたもの。その様子がこちら↓

連日2,000〜4,000人がつめかけたといい、暴れるは、火を放つは、カタルーニャ国旗を燃やすはで、抗議活動というよりはもはや暴動ともいえる様相で、ただただ恐怖。。。ちなみに7人逮捕者が出ました。


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