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読書日記:変身 主軸が家族のグレゴール・ザムザ

 フランツ・カフカの「変身」について私の友人はこう言っていました。
「主人公が朝起きたら巨大な毛虫になり、そのせいで家族に疎まれる。何の救いもなくそのまま死んでしまう、どうしようもない話」

 職場の同僚は言いました。
「主人公が虫になって何が伝えたいのかわからなかった」
「ずっと部屋に引きこもって家族を苦しめる、ニートか!?と思った」
「この話は気持ち悪くて嫌い」

 私の「変身」に対する期待値はおのずと低くなります。
 そんな時、立ち寄った古本屋で解説も収録されている「変身」の文庫が目に入り、これなら不可解なこの話を理解できるかもと思い購入してみることにしました。

 結論から言うと解説を読まなくても楽しめました!

 ここからは読書記録です。
 グレゴール・ザムザは自分が化け物じみた図体の虫けらに変身したのに悲観的ではありませんでした。
彼は家族を支える大黒柱で、虫けらに変身を遂げても仕事のことを考えます。

 そんなグレゴールの虫けら姿での生活が始まります。
 父親は抑圧的なところがあり、母親は虫けらになったグレゴールを見ると気絶してしまうほどか弱い人でした。
 この両親はともかく、妹のグレーテとグレゴールは仲が良く、虫けらになった後の世話はグレーテが一手に引き受けます。
もちろんグレーテも虫けらの姿を恐れていますが、世話をするのです。
 世話をするグレーテとグレゴールのお互い気遣いあっていることがわかる描写が出てきます。
そこも見どころの1つだと思いました。

 この物語の佳境にはグレーテとグレゴールが同じ結論に辿り着きます。
 それが悲しくも、一筋の希望のように思えました。

 私は、手塚治虫の「ザムザ復活」という短編を先に読んでいたため、虫けらがとてもイメージしやすかった。もちろんまったく違う話です。
 どちらも楽しいのでおすすめします。

変身とザムザ復活



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