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保育業界への就職活動

保育科学生の就職活動はかなり独特である。

今はどのような仕組みになっているかわからないが、私が学生だった当時は、①学校にくる求人票を見て自分で応募 ②市に幼稚園協会や保育協会というものがありそこを通して就職活動 ③実習先で素晴らしい成績を残し、好印象を与え、「あなた、うちの園にこない?」とスカウトされるというパターンがあった。2年生の夏休みに行われる実習先で就職先を決めてくる友達も多かった。②は協会に履歴書を送付→新しく採用を考えている園の園長がの履歴書を見に行く→幼稚園から学生に電話がきて面接というものが主流だった。(自治体によって違うと思う)

当時の川崎市の保育園は公立保育園と私立保育園で、子どもたちや保護者のサポートの差が出ないようにと民営化が進んでいた。私立保育園は給食の献立を公立保育園に合わせたり、職員の待遇は公立園に合わせ、どの園でも同じ待遇・同じ給料と定められていた。園によって高い・低いはなく、1年目は16万円だった。私立保育園が公立に吸い寄せられるのと同じくして、公立保育園はどんどん私立保育園へと変わっていた。

私は川崎市幼稚園協会・横浜市幼稚園協会・川崎市保育協会に履歴書を送っていた。夏休み中にある幼稚園から電話がきて、面接・ピアノテスト・紙芝居の読み聞かせ(大人相手)を行い、その日のうちに合格が出た。別にどの園でもいいやと思っていたし、家からも近いし、就職活動も面倒くさかったのでその園に決めた。保育園は夏休みがないが、幼稚園は夏休みがある、しかもこの園は休み中の日直がない!というのも決め手だった。

夏休み明けに久しぶりに友達にあって、「就職決まった―」とお気楽に報告したそしたら「え!?モモタウちゃん、保育には就職しないって言ってたじゃん!」と集中砲火をくらい、「一番やる気のなかったあいつが真っ先に決めてくるなんて!!」と裏切り者扱いをされた(笑)。確かに何度か実習を経て、「保育は無理だ、丸の内にいるようなキレイなOLさんになりたい」と時折漏らしていた。仲良しグループ内では私の他に、実習先で就職を決めてきた子が一人いた。それからはなんとなくこの子と過ごすことが多くなり、学校をサボってディズ二ーへ行ったりしていた。

就職が決まったことを学生課に報告に行った。担当職員には「あなた実習先で働くって報告受けてますけど!?」と言われた。そういえば、夏休み中にいった保育園で「よかったらうちに来てほしいわ~」と軽く言われて、「うれしいです~」という会話があった。私はお世辞での会話か思っていた。そんな曖昧な会話が学校に伝わり、「私はあの園で働きます」といういことになっていた。

当時の保育業界はかなり変わっていて、複数の園を同時にエントリーできなかった。1つ受けてダメなら次の園へ、というシステム。学生からしたらかなり非効率で、時間がかかるシステムだった。「1つの園で採用できる人数=辞める職員の数」なので、「受かりました!けどやっぱ他の園に行きます!」となると、園側が職員を確保できないという背景があるらしい。しかも、協会を通して電話してくる園は、給料や福利厚生などの条件を提示しないことが多い。最後の最後、「あなた合格です。」となった後にYESかNOを答え、「YES」となったら「そしたらこれがうちの給料です」と知らされる。「YES」と言ってしまった手前、給料が低くてもいまさら「NO」とは言えない。買い手市場万歳なのである。働く側の権利は全く無視である。勿論その場で回答しなくてもよいが、複数園から内定を得て、比較検討をして…ということはできない。常に一期一会。学校でも「面接で給料を聞くなんて園に失礼なのよ」と教えられていた。じゃあいつ聞けばいいんだ。こんなんだから世の中の保育士不足は解消しない。今ではこのやりがい搾取システムが変わっていることを願う。

ということで、私は実習先の保育園へ辞退のお電話をすることに。学生課の先生に「なんといったらよいでしょう…」と相談したら、「あなた、嘘も方便よ。地元に帰るとおっしゃい。」と強かなアドバイスを受けて無事に、何事もなくことは済んだ。

私は早々に就職が決まりのほほんと過ごしていたが、友達の中には2月下旬まで決まらない子もいた。求人票を見て応募する場合にはすべての連絡を学校を通さなければならず、学生課の連絡もれで、「今日!この後すぐに行ってください!」なんてこともあり、スーツではなく着の身着のまま私服で面接で行かされたりしていた。(無事に受かっていた!)

2年生の春休み中に、就職した園へ研修にいった。同期は同じ短大だった子だったので心強かった。園長から「研修中は少ないけど給料も出しますから」と言われ、「研修が終わったら飲みに行こう!」なんて盛り上がっていた。 今までの実習先とは違い先生たち、みんなやさしかった。主任を始め9人体制。働くのが楽しみになった。子どもたちもみんな素直でいい子だった。

10日間ほどの研修を終え、「低くても時給1000円として、いくらかな~♪」とウキウキしていたが、給料はなんと5,000だった。ここでも「は?」と思うのだった。

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