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モーニング

カランカラン。。



扉から薄汚れたコンバースが見えた。


あ、来たな。カノジョ…レンさん。



「おはよう」

レンさんが声をかけた。



「おはようございます。」

レンさんの足元は完全にふらついている。

こっちに向かい、私の目の前のカウンターに座る。



「ふううう。。」

来た早々、ため息を着いたかと思えば
カウンターに両手を重ねて置き、その上に額をつけた。



ああ。。。
またか。。



「昨日も遅かったんですか?」

一応聞いてみた。



『ヴーーん』

うっつぷしながら声を出す。

どんな答え方なんだ…



「今日は何にします?」



『い〜づ〜も〜のぉ』

どんな答え方なんだ……この二日酔い野郎。



「モーニング?」



『あぁ?』

レンさんが突然顔を上げた。

私は反射的に右肩がぴくっと上がる。



フン!

鼻息一つのレンさん。



「モ、モーニングでいいですよね?」



「シャケ定食」


被せるようにレンさんが答える。



ふうう……
ため息が漏れる……

「レンさん、シャケは。確かにまあ、ありますけど…
うちはカフェなんだから、せめてトーストにしてくださいよ。」


起き上がったレンさんの眼光が私の目を刺した。



へへっ…

私は思わず笑った。



「だって、、ここ最近、付き合いで飲んでばっかりよ。和食求めるのは当たり前」

レンさんが宣う…


知るか。

私の本音。言えたらどれだけスッキリするか。

言ったらどれくらい後悔するか。



「トーストなんてそんなおしゃれなもの食べられないわ。」


トーストっておしゃれか?



「この国に生まれたからには、朝はコメなのよ!
そもそも我我は農耕民族なのよ。米を食す文化があるの。
でね、それを継承することが我々に課された…」


「わかりました…。シャケ定食。はい。作ります。」

シャケって言っている時点であんたは絶対、狩猟民族だと思う。

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