川勝知事の不適切発言問題から「言葉に対する感度」について考えた。
この3日ほど、静岡県知事・川勝平太さんの「不適切発言」が話題になっています。
私は、川勝さんの経歴や実績について詳しいわけではありません。ここ数年、メディアで「リニア反対」と騒いでいる姿を見たくらい…。
ですので、「政治家」としての川勝さんの思想や価値観について深く語るつもりはないのですが、ニュースを追う中で「言葉に対する感度」について思うことがあったので、まとめてみます。
今回の川勝さんの不適切発言から辞意表明までの主な経緯は、以下のとおり。
4月1日、静岡県庁入庁式における新入職員への訓示で「不適切と思われる発言」あり
その発言が拡散され、県への批判や苦情が殺到(2日午後5時までに電話やメールなどで430件)
4月2日夜の取材で、突如「6月議会をもって職を辞すこと」を表明
訓示での不適切発言とは、主に「農業(野菜の販売)・畜産などの職に就く人を差別した」というもの。
川勝さんは、辞意を表明する直前、「(自分が言いたかったのは)いろいろな職種があるということであり、差別的な意図や意識はない」としつつ、「(発言が不適切と捉えられているのは)メディアの切り取り報道のせい」とも口にしていました。
たしかに、日頃からメディアによる切り取りや印象操作が多いことは私も感じています。そのため、オンラインで公開されている「訓示全文」を読んでみました。
(さまざまなメディアが公開していますが、ここでは「朝日新聞デジタル」のリンクを張ります)
この全文を読み、一番の問題になっているであろう以下の部分は、「川勝さんの本心がよく表れた言葉」なのだろうなと、私は感じとりました。
ただ県庁職員試験に合格した職員を褒め称えたいのであれば、わざわざ「野菜を売ったり、牛の世話をしたり…と違って」を出す必要はないでしょう。
もしくは、たとえば「農業や酪農の従事者も、ものづくりに携わる人も、県庁職員も、皆それぞれに異なる役割・職務がある」のようにニュートラルに伝えた上で、新入職員を鼓舞する表現を選べばよかったはず。
ですが、今回の川勝さんは、あえて「第一次産業・第二次産業を引き合いに出し、県庁職員を、より高度に見せるような表現」を選んでいます。
「普段からこういう考えを持っている人なのだろう…」と、私は思いました。
もし本人がおっしゃるように「職業の違いを伝えるため」だけに、あの表現を「悪気なく、無意識に」選んだのであれば、言葉に対する感度があまりに低いように感じます。
川勝さんは、これまでにもジェンダー差別発言などを繰り返して騒ぎになっていたそうですね…。
パフォーマンスでやっているのかどうかはわかりませんが、「この言葉を使ったら、相手がどう感じるか」を深く想像できないのなら、それは重大な問題ではないかと思います。
影響力がある人ほど。
*
現代では、ネット上での誹謗中傷や過激発言による炎上など、いろいろな言葉の問題が取り上げられますよね。
キツい言葉、尖った言葉を発する人は、なんらかの悪意や意図があり、「わざと」やっているケースもあるのでしょう。
その一方で、私は「そういう言葉を発する人自身」の言葉に対する感度が、あまり高くないケースもあるのではないかと感じています。
本人は、「自分が気にならないから、相手も気にならないはず」と思い込んでいる(というか、深く考えていない)。
でも、実際には、発した言葉でいろいろな人たちを傷つけている…。
こういう人は、「悪意を持って言葉を発する人」より、もっと対処しづらいものかもしれません。
一人ひとりの「言葉に対する感度」がちょっとずつでも高まれば、もう少し居心地のよい世の中になるのではないかなと、たまに思います。
* * *
ちなみに、川勝さんは、同じ訓示の中でこうも言っていました。
今となっては、失笑を買う文章かもしれませんね…。
そして、私としては、以下のフレーズが最も印象に残りました。
感性って何なのかな…。
「誰がその言葉を発するのかによって、言葉の力は変わる」
そんなことを、また深く考えるきっかけになりました。
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