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受験終了。無料塾生徒の進路について思うこと。

今年も都立高校入試、合格発表が終わりました。生徒全員の進路が決定しました。
今年度の受験生は本当にいろいろな子がいて、「受験会場に行けるのか」「志望校が決まるのか」という心配がずっと尽きず、例年になく綱渡り状態でひやひやでした。が、フタを開けてみればみんなスッキリと受験を終えられました。本人たちが最終的に腹をくくって底力を出してくれたのと、ボランティアで参加してくれている仲間たちのおかげで……。

さて、最近は無料塾も増えてきていますが、多くの無料塾は生徒の進路を「公立高校合格」としています。ですが、東京都では昨年度から私立高校の授業料実質無料化(所得制限があります)が始まっており、所得が十分にないご家庭でも、選択肢は都立高校に限らなくなってきています。
とはいえ、授業料以外の設備費とか修学旅行費とか諸々ではお金がかかり、私立のほうが公立よりもやはり高くつくというのはあるのですが。それでも以前よりは選択がしやすい状況になりました。
ただ、私の運営する無料塾では、この無償化がなくても私立高校を第一志望にする生徒もいます。
今年で言えば、スポーツ推薦で、特待生待遇がとれた子。これによって授業料が免除となります。このために本人、大会などで必死に頑張って成績を残してきました。
過去で言えば、自分がどうしても気に入って通いたい学校があり、そのためにお母さんも前々から仕事を増やして学費を貯金してくれたケースや、親戚の家に引き取られている子が、離れて暮らす親から学費だけは支援してもらい、親戚の家を出て寮暮らしができたケースも。

ときどき、無料塾に通っている子が私立に行くというと、「私立に行けるんだったら経済的に余裕があるんじゃないの?」と言われることもあるのですが、今の支援金制度や、個々の事情がわかれば、必ずしも公立一択ではないということがわかるかと思います。これを言い訳のように言わなきゃいけないのが、ちょっとつらいなと感じます(汗)。でも実は、無料塾の子でも選択肢はさまざまなんですよね。
もちろん、公立一択ですという子が多いのは多いですが。

東京都の場合は都立高校は1校のみの受験となり、「何が何でも都立」という子は、そのためにちょっと自分の成績より合格基準点の高い、でも頑張れば手の届きそうな高校を選択するよりも、確実に受かるところを志望することになる子も多いです。ギリギリになって、少し合格基準点が下の高校に志望校を変更する子もいます。
そういう子の多くは、滑り止めで私立を受けてもそこには行けないので、私立を受けずに受験は1校のみとなっています。
でも、そういう安パイを選ぶ受験よりも、少しでも高い目標を目指してもらい、しっかりサポートして学力を伸ばし、受験前には合格基準点をクリアしているようにしたい、というのが多くの無料塾の目標となっています。うちもそこは同じです。

でもそれ以前に……。
受験に合格させるということだけを意識した無料塾運営にはしたくないなというのが私の考えです。
合格したとしても、その高校が本当にその子にとって合っているかどうか。
都立が不合格で私立に行く子もいますが、結果的にそうなって良かったのではないかという子もいます。本人は一度の不合格を失敗ととらえて一時は落ち込んでしまうかもしれませんが、そういう経験があってこそ何か心の持ち方が変わって奮起し、成長する子もいます。
親や先生に言われた高校には行けなくても、自分で選んだ高校に行くことができて伸び伸びと学校生活を送れる子も。
受験に合格させることというよりも、その子がいかに成長するかや、いかにその子らしく生きられるかということに目を向ければ、サポートのしかたは本当に多岐にわたってきます。
特にこれからの時代は、偏差値という数値だけで測れる能力だけでは生きてはいけなくなっていきます。「人としての考え」が問われていく時代です。ですがそういう考える力や、それを発信する力よりも、覚える力(数学や国語でも〝解法のパターンを覚える〟ことが受験のテクニックとなっています)が問われてしまうのが受験であり、学校でもそれに対応した教育がなされているのが日本です。
家庭にお金がなくても生き抜ける学力を身につける、というのが無料塾の役割ですが、偏差値を上げることがすなわち生き抜けることにつながるのかというと、もはやそうではないような気がしています。

だから、受験を通して学んでほしいことは、単に問題の解き方を覚えて5教科ないしは3教科の偏差値を上げるということではなく、どのように選択肢に向き合うか、その受験を自分の人生の中でどう位置づけるかということだったり、つらい局面を仲間とともにどう乗り越えるかということだったり、結果をどう受け止めるかということです。
単に「偏差値上がってよかったね」「合格できてよかったね」ではなく、さまざまなことを考え抜いて行動した結果そこに行き着いた、という過程を大切にしたいなと思います。
経験からいかに多くのことを学ぶかが人の成長につながるわけで、偏差値が上がったことそのものが成長だとは、私は思いません。

私は就職氷河期に大学を卒業しましたが、そこそこ名前の知れた大学でも就職には結構苦労をしました。周りももちろんみんな苦労していました。
そんなときに強かったのは、なんとなく大学まで来てしまって就職も何となくここがいいなと思っていた人よりも、しっかり目的意識を持っていて、自分の意見をはっきりと主張できる人だったと思います。
そうでない人は、次々に沈没していきました。単に「有名企業に行きたい」「ここまで来たんだから行けるだろう」くらいに考えていて、受験のように小手先で就職活動を乗り切ろうとした人は、早稲田でも慶應でもうまくいっていませんでした。(まあ私もその小手先軍団のひとりだったと思います)

世の中が数年先にどんな状況になっているか読めない中で、しっかり生きていくためには何が必要か。そういうことを考えながら、受験以外の面でも子どもたちが持っている能力を磨いていきたい、それが私の塾の方針です。
そのためにいろいろな工夫をしてきていますが、今年の卒業生たちにはいつもよりも少し、それが伝わっているんじゃないかと思っています。
……伝わっていると、いいな。。。

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